お店を経営している方だけでなく、一般的に耳にするようになった「居抜き」という言葉。テナント契約時に初期費用を抑えられるメリットのある物件を指すが、どのような特徴があるのか知らない方も多いはず。
そこで本記事では、居抜きの物件について、メリットやデメリットをはじめ契約時の注意事項も紹介する。開店・開業を目指している方はぜひこの機会に理解を深めてほしい。
そもそも居抜き物件とは?
飲食店などを開業する時に契約するテナントには、「居抜き」「スケルトン」「半スケルトン」の3種類がある。それぞれについて詳しく解説していこう。
物件には「居抜き」「スケルトン」「半スケルトン」の3種類がある
居抜き物件は、以前の契約者もしくは物件のオーナーが用意した設備がそのまま残っているテナントのこと。家具や棚や冷蔵庫なども備わっているため、店舗オープン時に新規設備の購入が不要となる。初期費用を抑えたい方におすすめだ。
次に、スケルトンの物件。スケルトンの語源は英語の”skelton”で、人間や動物の骨格を表す言葉だ。テナントにおけるスケルトンも、建物の骨格、つまりは柱以外に何も残っていない状態を指す。設備はもちろん、間仕切りの壁なども存在しないため設備や内装の工事が必要になる物件だ。店舗を自由にデザインしたい方に人気がある。
最後に、半スケルトンの物件。半スケルトンとは、コンクリート打ちっぱなしのテナントではあるものの、配管や電気配線、エアコンやトイレなどの設備の一部が残っている物件を指す。「一部居抜き」と表記されることもあり、ビルのテナント募集で多く見られる。
居抜き物件のメリットとデメリット
居抜き物件にはメリットだけでなくデメリットも存在する。その両方を理解した上で、最適な物件を探してほしい。
居抜き物件のメリット
居抜き物件の主なメリットは、大きく2つある。まず、先述したとおり、トイレやバーカウンターといった造作、冷蔵庫などの機械などが残っている点だ。設備をそのまま引き継げるため、大規模な設備投資が不要になる。
次に、店舗オープンまでの期間を短縮できることだ。店舗のオープンには、機械の据付はもちろん、内装工事や電気工事、配管工事も必要。このような大規模な設備工事は、業者の選定から発注、着工、引き渡しまでに時間が掛かる。居抜き物件では、すでに機械や設備が揃っているため、大規模な設備工事が必要ない。スケルトン物件よりも短期間で店舗に入居できる。
居抜き物件のデメリット
居抜き物件のデメリットは、主に2つ。まず、店舗設計の自由度が低くなることだ。居抜き物件では、内装や設備を前オーナーから引き継ぐ。レイアウトの変更が難しいため、オープンする店舗の形態によってはオペレーションに不便が生じる。
2つ目に、設備面での問題が発生するケースが挙げられる。居抜き物件では、機器を前オーナーから引き継ぐ。設備を使用しない場合、店舗のスペースが圧迫され、店舗に必要な機器や内装設備を導入できなくなる。さらに、機械が故障していて稼働しなければ、修理や廃棄、買い替えの費用が発生する。
居抜き物件の注意点
機器を前オーナーから引き継ぐ居抜き物件では、スケルトン物件とは異なり、想定しないトラブルが起こり得る。事前に、よくあるトラブルの種類や注意点を把握しておこう。
よくあるトラブル
居抜き物件のトラブルとして、まず原状回復の義務が発生することが挙げられる。原状回復の義務とは、退去時にスケルトンに戻すことだ。居抜き物件では、契約内容にもよるが、退去時にスケルトン物件へ戻す必要のある物件が多い。内装や設備を撤去するには、費用が必要となる。想定外の出費を防ぐためにも、テナント契約前に金額のシミュレーションをしておきたい
次に、譲渡物にトラブルがあった際の責任について。居抜き物件では、引き継いだ機器や内装などが故障で動かない時、修理や買い替え、廃棄を行わなければならない。この場合の対応についてはテナントのオーナー側で行うケースと、店舗の契約者で行うケースの2通りがある。費用負担の割合によりトラブルに繋がることもあるため注意が必要だ。
事前に確認しておきたいこと
居抜き物件を契約する際に、事前に確認しておきたいこととしては、以下の項目が挙げられる。
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退去時の原状回復の義務
退去時のテナントの状態によって費用は大きく変わる。どのような状態にすればいいのか、その範囲を確認しておきたい。
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前オーナーのリース契約の確認
前の契約者が設備のリース契約をしていた場合、設備の所有権はリース会社にある。手続きが煩雑になるケースもあるので、事前に契約内容を精査しておこう。
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造作譲渡料
前の契約者が残した機器や内装について、譲渡料が発生する。譲渡料は契約時期と譲渡対象となる機器によって大きく変わるため、譲渡対象となるリストと価格を事前に確認し、余分な費用の発生を防ぎたい。
上記の項目では、契約内容によって、発生する費用が変わってくる。商談先がテナントの貸主である場合や前の契約者である場合もあるため、事前に契約内容と商談内容を確認しておくのがおすすめ。特に、リース契約や造作譲渡料に関しては、想定外の費用が発生するケースもあるため注意しよう。
※データは2022年12月下旬時点のもの。
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文/編集部