「ゲーム理論」という言葉を耳にしたことがある方も多いだろう。ゲーム理論は、もともと経済学や社会学の分野で用いられる理論だったが、最近では、ビジネスシーンに応用される機会も増えてきた。しかし、詳しい理論の内容までは知らないという方も少なくないはず。
そこで本記事では、ゲーム理論についてわかりやすく解説する。囚人のジレンマなど代表的なゲーム理論も取り上げるので、ぜひ理解を深めてほしい。
そもそもゲーム理論とは?
そもそもゲーム理論とはどのような理論なのだろうか。はじめに、その概要と種類について簡単に見ていこう。
人間の行動を数学的モデルによって明らかにする理論
ゲーム理論は、経済学や社会学など多くの分野で使用されている数学理論。経済や社会に参加する人物をプレイヤーとみなし、場面ごとにどのような行動を取るのかを数理的に分析する。
社会や経済には、複数のプレイヤーが存在し、互いに影響を与え合う。例えば、店頭での商品の販売。店に来た客は商品を安く買おうとし、店の人は高く売ろうとする。この時、客と店は、お互いの関係性を基準に「どの価格で買うか?」「どの価格で売るか?」を決めていく。この意思決定を理論的に説明するのがゲーム理論だ。
ビジネスシーンでは、利益を最大化するために、ゲーム理論に基づいた戦略が立てられることも多い。
協力ゲームと非協力ゲーム
ゲーム理論には「協力ゲーム理論」と「非協力ゲーム理論」の2種類がある。
協力ゲームは、プレイヤー同士が協力した方が利益が多くなるゲームを指す。この協力ゲームには、協力しないという行動は存在しない。例えば、共同での商売において、一人で商売をすると1日1万円の売上だが、2人で商売をすると3万円の売上になるケース。この時、提携することで利益の増加が約束されていることから、個人の利益を追求するよりも他者と協力する方がより良い結果を生み出すことになる。
次に、非協力ゲーム。協力するか協力しないかの決断が各プレイヤーに委ねられ、協力の有無によって得られる利益が大きく変わるゲームのことだ。
例えば、自身を含む2人のプレイヤーが商売を行う時、自分が協力せず相手が協力すれば4万円、自分も相手も協力すれば3万円、自分も相手も協力しないと0円、自分だけが協力すると-1万円という前提条件があるとする。このような場合、常に周りのプレイヤーがどのような行動を取るのかを予測・分析しながら自身の利益が最大化される行動を選択していく必要がある。
囚人のジレンマとは?
「囚人のジレンマ」は、ゲーム理論の中でも有名なゲームの一つ。お互いに協力した方が利益が大きくなることがわかっているにもかかわらず、個人の利益を追求する選択をしてしまい、結果的に全体にとっての最適解に繋がらないジレンマを表す。具体的な内容を見ていこう。
「囚人のジレンマ」の具体例
「囚人のジレンマ」を説明する際に用いられるのが、2人の容疑者を題材にした例だ。
共同で犯罪を行った疑いで逮捕された2人の容疑者が、別々の部屋で尋問を受けるとする。お互いが自白と黙秘のどちらを選択するのかを知ることはできない状況において、2人の量刑は以下のように決定される。
- 1人が自白し、もう1人が自白しない場合、自白した方は無罪、自白しない方は懲役10年
2. 2人とも自白した場合は懲役3年
3. 2人とも自白しない場合は懲役1年
容疑者が2人とも黙秘すれば懲役は短くなるため、全体の利益を考えると③が最適解となるはずだ。しかし、個人の利益を追求する場合、自分だけが自白をすれば刑を免れることができる上に、もう1人の容疑者も同じく自白を選択したとしても、懲役は10年よりも短い3年で済むことになる。このような考え方から、容疑者はそれぞれ自白を選択し、結果的に2人とも懲役3年となってしまうジレンマが生じる。
パレート最適とナッシュ均衡
囚人のジレンマでは、全体と個人の利益のどちらを取るのか、判断を求められる。この時、全体の利益を優先させることを「パレート最適」と言う。先ほど紹介したゲームの中では、③2人とも自白しないケースだ。
一方で、個人の利益を優先しようとするケースのうち、互いに最適な選択をして、戦略を変更しなくてもいい安定した状態のことを「ナッシュ均衡」と言う。ゲームの中では、②2人とも自白したケースに当たる。
その他のゲーム理論
「囚人のジレンマ」以外にも、よく取り上げられる代表的なゲーム理論として「チキンゲーム」と呼ばれる理論もある。こちらも詳しい内容を見ていこう。
チキンゲームとは?
チキンゲームとは、ギリギリの状態をどこまで我慢できるか競い合うゲームのことだ。2人のプレイヤーが強行姿勢か妥協のどちらかを選び、勝負をしていく。おもに交渉の場面で使用されることの多いゲームだ。
チキンゲームの特徴
チキンゲームでは、車に乗った2人のプレイヤーが壁に向かって走行し、先にハンドルを切った方が負けになる。強行姿勢を貫いて直進すると勝つ可能性がある代わりに命を落とすリスクがあり、一方で、妥協の姿勢を示してハンドルを切ると命は助かるが負けとなる。強行姿勢を貫きつつも最悪の結果に陥らないように、相手の妥協を引き出さなければいけないのがチキンゲームの特徴だ。
文/編集部