もしも、配偶者に万が一が起きたとき公的年金から何か受給できるのかは、加入している年金によって異なり、性別によっても異なる。
国民年金と厚生年金
公的年金制度には、全員加入の国民年金と国民年金に上乗せする厚生年金がある。
国民年金は、誰でも国民年金保険料は同じで令和4年度の保険料は16,590である。受給額は支払った月数により決まり、保険料を全期間支払ったときの令和4年度の受給額は年額777,792円(月額64,816円)だ。
国民年金のみの受給となるのは、自営業者や配偶者に扶養されていた主婦(夫)である。
一方、厚生年金は会社員と公務員が加入する年金で、年金保険料は会社毎給与に応じで変わり月額1.6~12万円となっている。保険料は会社と折半になるため実際に支払う保険料は半額の0.8~6万円だ。厚生年金は国民年金に上乗せして年金を受け取れるため、国民年金のみより受給額は大きく、給与が高いつまり保険料が高いほどその分将来受け取れる受給額も大きくなる。
遺族年金
遺族年金とは、配偶者が亡くなった時に、その配偶者の年金から遺族に年金が支払われる制度である。遺族年金の制度は国民年金と厚生年金で異なる。簡単にいえば、国民年金は子どもがいれば受給でき、厚生年金は子どもに関係なくて受給できるが男女で差がある。
■国民年金の遺族年金『遺族基礎年金』
死亡した者が、保険料納付が加入期間の2/3以上(免除期間含む)ある(65歳以上は納付機関が25年以上)など保険料をきちんと支払っている(免除を受けている)場合に、その者に生計を維持されていた子をもつ配偶者または子は、遺族基礎年金を受け取れることができる。
逆に子がいないと受給できない。
例えば、国民年金に加入している人が死亡し、その者に生計を維持されていた配偶者に16歳、14歳の子がいる場合には、年額1,225,400円(月額102,116円)受給できる。配偶者に19歳の子がいる場合や子がいない場合には遺族基礎年金は受給できない。
■厚生年金の遺族年金『遺族厚生年金』
遺族厚生年金は遺族基礎年金と異なり、子がいなくても配偶者は年金を受給できる。また、遺族基礎年金の要件も満たしていれば合わせて受給できる。
ただし、遺族厚生年金は性別で受給要件や受給金額が大きく異なる。
会社員の妻が亡くなった夫では、55歳以上でないと受給できず、受給できるのは60歳以上からとなるが、逆に会社員の夫を亡くした妻にはそのような年齢の制約はない(ただし、子のない30歳未満の妻は5年間しか受給できない)。
さらに、子がいない場合遺族基礎年金を受給できないが、その遺族基礎年金を受給できない分妻なら中高齢寡婦加算がある。会社員の夫を亡くした妻で40~65歳で遺族基礎年金を受給できない場合には、年額583,400円加算される。
この加算は夫にはない。
自分自身が65歳以上で年金受給中である場合には、配偶者の遺族基礎年金と自分自身の年金の差額分だけ遺族基礎年金を受給できる。自分自身の厚生年金が遺族基礎年金を超えるときは遺族年金を受給できないことになる。
遺族基礎年金と遺族厚生年金の違い
遺族基礎年金は男女で差はないが、遺族厚生年金は受け取るのが妻か夫かで大きく変わる。
妻が亡くなって遺族年金を受給する夫の場合は、基本的に夫の年齢が55歳以上でないと遺族厚生年金が受給できず、子がいたとしても55歳以上じゃないと遺族基礎年金のみしか受給できない。
一方、夫が亡くなって妻が受給する場合は、子がいれば何歳でも遺族基礎年金、遺族厚生年金ともに受給できるが、子がいなくても30歳未満なら5年間受給でき、30歳以上なら子がいなくても受給でき、さらに40~65歳未満なら遺族基礎年金が受給できない分をさらに加算して受給できる。
夫が会社員、妻は専業主婦またはパート収入のみのような場合は、上記の制度でよいのかもしれない。
しかし、最近では妻が夫と収入が同じぐらいで共働きでやっと生計を立てているとか、または妻の収入が高いような場合には上記制度では男性は不公平感を感じるだろう。
ただ、現状夫の受給を増やすのは少子高齢化による年金制度の維持の難しさから厳しい。また、共働きが増えていたとしても夫が会社員で妻はパートまたは夫より収入が低いことという家庭もあることから、妻の部分を改悪してしまうようと母子家庭を困窮させる結果としてしまうため、変更は難しいかもしれない。
文/大堀貴子