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「偽装結婚」で成立する犯罪と被害にあった時の対処法

2023.01.02

婚姻生活を送る意思がないにもかかわらず、役所に婚姻届を提出する「偽装結婚」は、故意に行った場合は犯罪に該当します。

今回は、偽装結婚について成立する犯罪や、騙されて偽装結婚してしまった場合の解消手続などをまとめました。

1. 偽装結婚とは

「偽装結婚」とは、婚姻生活を送る意思がないにもかかわらず、役所に婚姻届を提出することを意味します。一時的な単身赴任などではなく、将来にわたって一切同居や生活費の分担などをするつもりがないのに婚姻届を提出するのが、偽装結婚の特徴です。

法律上の「婚姻」は、戸籍法の定めに基づき、市区町村役場に婚姻届を提出することで成立するのが原則です(民法739条1項)。

ただし、当事者に婚姻をする意思がない場合、婚姻は無効となります(民法742条1号)。「婚姻をする意思」とは、最高裁の判例によって「真に社会観念上夫婦であると認められる関係の設定を欲する効果意思」と定義されています(最高裁昭和44年10月31日判決)。

偽装結婚は、当事者に婚姻生活を送る意思がなく、真に社会観念上夫婦であると認められる関係の設定を欲しているとは言えないため、法律上無効となります。

2. なぜ偽装結婚は行われるのか?

偽装結婚が行われる目的は個々に異なりますが、一例としては結婚詐欺目的のケースが挙げられます。

すなわち、婚姻届の提出によって相手を信用させて、財産をだまし取った後に逃亡するようなケースです。この場合、だます側には婚姻生活を送る意思がないので、偽装結婚に当たります。

また、外国人が配偶者ビザや永住ビザを取得し、日本で自由に活動することを目的に、日本人の相手と通謀して偽装結婚をするケースもあります。

3. 偽装結婚は犯罪行為|成立する犯罪と法定刑は?

故意に偽装結婚をする行為は犯罪に該当し、逮捕・起訴を経て刑事罰を課される可能性があります。そのため、偽装結婚に手を染めては絶対にいけません。

3-1. 公正証書原本不実記載等罪

故意による偽装結婚は、「公正証書原本不実記載等罪」に該当します(刑法157条1項)。

公正証書原本不実記載等罪は、公務員に対して虚偽の申立てをして、登記簿・戸籍簿その他の権利義務に関する公正証書の原本に不実の記載・記録をさせる行為につき成立します。偽装結婚は、虚偽の婚姻の届出(申立て)をする行為であるため、同罪による処罰の対象です。

公正証書原本不実記載等罪の法定刑は「5年以下の懲役または50万円以下の罰金」とされており、未遂であっても処罰の対象になります(同条3項)。

3-2. 出入国管理法違反

出入国管理及び難民認定法に基づく退去強制の対象となる外国人を蔵匿・隠避する目的で偽装結婚した場合には、同法違反の罪に問われる可能性があります。

退去強制の対象となる外国人を蔵匿・隠避する罪の法定刑は「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」です(同法74条の8第1項)。

4. だまされて偽装結婚してしまった場合の解消手続き

結婚詐欺などにより、だまされて偽装結婚をしてしまった場合には、速やかに解消の手続きをとりましょう。

4-1. 離婚届を提出してはならない

偽装結婚を解消するための手続きは、離婚届の提出ではありません。離婚届の提出は、あくまでも有効に成立した婚姻を解消するための手続きだからです。

偽装結婚を解消するために離婚届を提出すると、場合によっては公正証書原本不実記載等罪に問われる可能性があるので注意が必要です。

4-2. 戸籍訂正許可の申立て

無効な偽装婚姻を解消するためには、偽装夫婦の戸籍が作られた自治体を管轄する家庭裁判所に対して、戸籍訂正の許可を申し立てます。

家庭裁判所に対して、婚姻意思がなかったことを資料等に基づいて説明し、認められれば戸籍上の婚姻の記録が訂正されます。

参考:戸籍訂正許可|裁判所

4-3. 婚姻無効確認調停・訴訟

戸籍訂正が許可されなかった場合には、婚姻無効確認調停や訴訟によって婚姻の無効を求めることができます。

婚姻無効確認調停では、調停委員による仲介の下で偽装夫婦が話し合い、偽装結婚が無効であったことについて確認する旨の合意形成を図ります。

合意が成立し、その合意を家庭裁判所が正当と認めた場合は、合意に相当する審判によって偽装結婚が無効となります(家事事件手続法277条1項)。

調停における合意が不成立となった場合は、公開法廷で行われる訴訟を提起することが最後の手段です。偽装結婚が無効であったことを証拠に基づいて立証し、裁判所に認められれば、判決によって偽装結婚を無効化することができます。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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