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準備は早めに!相続を放棄すべき遺産と手続きの方法

2023.01.05

両親や配偶者が亡くなった場合、遺産を相続するかどうかは自分で選ぶことができます。遺産を相続しないことに決めた場合は、「相続放棄」の手続きを行いましょう。

今回は、相続放棄を選択すべき場合のパターンや、相続放棄の手続き・注意点などをまとめました。

1. 相続放棄とは

相続放棄とは、遺産を一切相続しない旨の意思表示です。

亡くなった家族の相続権を持つ方は、相続について以下のいずれかの意思表示を行います(特に意思表示をしなかった場合は、単純承認したものとみなされます)。

(1)単純承認
→資産・債務を含めてすべての遺産を相続する

(2)限定承認
→資産はすべて相続するが、債務は資産額を上限として相続する

(3)相続放棄
→遺産を一切相続しない

相続放棄をした場合、当初から相続人にならなかったものとみなされ、資産・債務を含めたすべての遺産を相続できなくなります(民法939条)。

2. 相続放棄を選択すべき場合の例

以下のいずれかに該当する場合には、相続放棄を検討すべきでしょう。

2-1. 相続財産の価値がマイナスの場合

相続の対象となるのは、被相続人が死亡時に有した一切の権利義務です(民法896条)。資産だけでなく債務(借金など)も相続の対象となります。

もし遺産に含まれる債務額が資産額を上回っている場合、遺産全体の価値はマイナスです。この場合、遺産を相続すると経済的に損をしてしまうので、相続放棄をする方が合理的と考えられます。

2-2. 相続財産の管理が困難な場合

山林や農地、遠方の土地などが遺産に含まれている場合、相続人が管理を続けることが難しいケースもあるでしょう。売却できればよいですが、管理が難しい土地などは買い手が付かないケースも多いです。

このような場合には相続放棄をすれば、他の相続人や相続財産管理人に管理を引き継ぐことができます。

ただし、2023年4月27日に施行される「相続土地国庫帰属法」により、一定の負担金を納付することを条件として、相続・遺贈により取得した土地を国に引き取ってもらう制度が新設される予定です。

相続土地国庫帰属制度を利用すれば、他の遺産は相続しつつ、管理の難しい相続土地だけをスムーズに手放すことができるようになります。

参考:相続土地国庫帰属制度について|法務省

2-3. 遺産分割に関わりたくない場合

他の相続人との関係性が悪い、遺産に関心がないなどの理由から、遺産分割に一切関わりたくないという方もいらっしゃいます。

相続人である限りは、遺産分割に参加しなければなりません。もし遺産分割に関わりたくないと考えている場合には、相続放棄をご検討ください。

3. 相続放棄の手続き|家庭裁判所に申述を行う

相続放棄は、家庭裁判所に申述書や戸籍謄本などを提出して行います。具体的な必要書類については、裁判所ウェブサイトをご確認ください。

参考:相続の放棄の申述|裁判所

申述書を提出してしばらくすると、家庭裁判所から照会書が送られてきます。照会の目的は、相続放棄の期間が経過していないか、また法定単純承認(後述)が成立していないかなどを確認することです。

後述する相続放棄の注意点を踏まえた上で、適切な内容の回答を記載して返送しましょう。

相続放棄が受理されると、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が届きます。これ以降、申述者は家庭裁判所に対して、相続放棄の証明書の発行を申請できるようになります。

4. 相続放棄に関する注意点

相続放棄を行うに当たっては、「期間」と「法定単純承認」に十分ご注意ください。

4-1. 期間は原則3か月以内|ただし期限が過ぎても認められる場合あり

相続放棄の期間は原則として、自己のために相続が開始したことを知った時から3か月以内です(民法915条1項)。

基本的には被相続人の死亡を知った時が起算点となりますが、他の相続人が相続放棄をしたことによって相続権が回ってきた場合には、相続放棄を知った時が起算点となります。

3か月の期間を経過すると、原則として相続放棄が認められなくなってしまうので、早めに検討・手続きを行ってください。

ただし実務上は、3か月の期間が経過していても、手続きが遅れた事情によっては相続放棄が認められるケースもあります。たとえば、被相続人の死後に時間が経ってから相続債務が判明した場合は、相続放棄が認められる可能性が高いです。

3か月の期間が経過している場合、家庭裁判所への合理的な理由説明が必要となりますので、弁護士へのご相談をお勧めいたします。

4-2. 法定単純承認に要注意

以下の場合には「法定単純承認」が成立し、相続放棄が認められなくなってしまいます(民法921条)。

・相続財産を処分した場合(保存行為・短期賃貸借を除く)
・相続財産を隠匿し、私的に消費し、または悪意で相続財産目録に記載しなかった場合(後順位相続人がすでに相続の承認をした場合を除く)

相続放棄の可能性がある場合には、これらの行為をしないように努めることが重要です。葬儀費用を相続財産から支出することなども、(厳密にはケースバイケースですが)避けた方が無難でしょう。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
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