南部鉄器は鉄分摂取に最適なスグレモノ!?
2022年12月、日本中を熱狂させたサッカーW杯。我がニッポンは優勝経験のあるドイツやスペインに勝利し、かつてない衝撃を与えてくれた。
だが、もう一つ日本中に衝撃を与えたことがある。それは、スペイン戦で「三笘の1ミリ」を見事ゴールに押し込み勝利に導いた田中碧選手…が使っていることで話題になった『南部鉄器』だ。
南部鉄器とは岩手県を代表する伝統工芸品。田中選手はそれを海外にまで持って行くほど愛用しているそうで、鉄分摂取のために使い始めたところ「数値が改善された」というエピソードもメディアで報じられた。
これはキニナル。南部鉄器というワードは耳にしたことあったが正直どんなものなのかよく分かっていない。なんとなく“重そう”というイメージしかなかった。
だから調べてみた。
質実剛健!南部鉄器は本当にすごかった
南部鉄器の産地は岩手県奥州市と盛岡市。
奥州の鉄器は平安時代末期に藤原清衡が近江国から鉄器職人を招いて武具などを作らせたのが始まりと言われている。
一方、盛岡の鉄器は17世紀初めに京都から釜師を招いて茶の湯釜を作らせたのが始まりだとか。どちらも古から愛されてきた逸品であることは間違いない。
岩手県庁HPを見るとその魅力についてこう書いてある。
「魅力は質実剛健。そして素朴で深みのある味わいにある。仕上げに漆を塗ることで錆止めにもなり、鉄の素材を柔らかに活かす独特のデザインは南部鉄器ならではの表情を創り出す」
なるほど。歴史は分かった。でも、一番気になるのは南部鉄器から鉄分を摂取できるのか?という点だ。田中碧選手の肉体を支えたあのエピソード。その先を知りたい。
そこで今回、岩手県の水沢鋳物工業協同組合・菅原さんに話を聞いた。
ーー南部鉄器で沸かしたお湯は普通のやかんで沸かしたお湯と違うんでしょうか?
「鉄瓶でお湯を沸かすと水道水の中に入っている塩素と鉄瓶から溶け出した鉄分(イオンの鉄)が反応し分解するため、カルキ臭さがなくなりおいしいお湯になります。同時に鉄分も摂取できます」
ーーそれってホントですか?鉄分を摂取できるって…
「2003年、岩手大学教育学部食物研究室 及川桂子氏の研究(※)にその根拠があります。日本調理科学会誌に掲載された研究なんですが、南部鉄器の鉄鍋や鉄瓶から溶出した鉄分の78〜98%が人体に吸収されやすい2価鉄であることがわかっています」
※参考:『調理中に鉄鍋から溶出する鉄量の変化』今野暁子 及川桂子 日本調理科学会誌
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience1995/36/1/36_39/_pdf/-char/ja
さらに、鉄の溶出量は料理の際に使用する添加調味料によっても大きな影響があり、食酢、トマトケチャップ、食塩の順に多く、加熱時間が長いほど鉄溶出量が増加したという結果に。
ただ「鉄の溶出量は油の使用により減少する傾向がみられた」とのこと。つまり、油を使わずそのままお湯を沸かすか、お酢を使った調理法の方がいいかもしれない。