DIME MAGAZINE
このケースは補償される？ 火災保険の保険会社に聞いてみた
ところで、火災保険は大規模な自然災害ばかりが補償対象ではない。「このケースは補償されるのか？」と素朴な疑問を感じたケースについて、補償されるかどうか調べてみた。ソニー損保の担当者へのインタビューのほか、東京海上日動と楽天損保でも火災保険を取り扱っているため、電話でオペレーターに問い合わせた結果を見ていこう。
●充電中のヒゲ剃りがショートした
「火災保険の補償対象外です。ご契約時に『破損・汚損損害等補償特約（※1）』を付帯いただいた場合でも、不測かつ突発的な外来の事故に直接起因しない保険の対象の電気的事故によって生じた損害は、火災保険で補償することができません」（ソニー損保担当者）
※1 破損・汚損損害等補償特約
基本補償で補償する事故以外で保険の対象となる建物、家財のそれぞれに発生する不測かつ突発的な事故によって発生した損害に対して保険金をお支払いします。(*1)
なお、お支払いする保険金は保険金額を限度に損害額から免責金額（自己負担額）(*2)を差し引いた額となります。(*3)
（*1）家財の補償は、基本補償に家財が含まれている場合のみ付帯されます。
（*2）基本補償で設定した免責金額と同額。なお、基本補償の免責金額が0円の場合は3万円となります
（*3）建物については、損害額が再調達価額（修理したり、再取得するために必要な額）の80％以上の場合、免責金額は差し引かれません。
東京海上日動と楽天損保に問い合わせたところ、両社の火災保険において、ヒゲ剃りは補償タイプのうち「破損・汚損等リスク」対象内の電化製品とのこと。不測かつ突発的と判断されたときなどに該当する場合があるそうだ。
●ノートパソコンを誤って落としてしまい、液晶が割れた
「ご契約時に『破損・汚損損害等補償特約』を付帯いただいている場合、ノート型パソコンやタブレット端末等の携帯式電子事務機器は火災保険の補償対象外ですが、デスクトップの場合は補償対象となります」（ソニー損保担当者）
東京海上日動と楽天損保でも同様に、ノートパソコンなどのモバイル機器については破損・汚損等の補償の対象外。デスクトップパソコンなら対象内とのこと。
●近所の子どもにおもちゃのラジコンで窓ガラスを壊された
「ご契約時に基本補償として『水濡れ、外部からの物体の衝突など』を付帯いただいている場合、建物の外側からラジコンが飛んできて窓ガラスが割れた際の損害は、火災保険の補償対象となります」（ソニー損保担当者）
東京海上日動についても、同様に対象内。「盗難・水濡れ等リスク」の補償ケースとして「建物の外部からの物体の衝突」がある。
●アイロン掛けをしていたところ、ワイシャツが焦げた
「ご契約時に『破損・汚損損害等補償特約』を付帯いただいた場合、火災保険の補償対象となりますが、『破損・汚損損害等補償特約』の最低免責金額が3万円であるため、免責金額（※2）以下の損害の場合は補償を受けることができません。免責金額とは事故や災害などで損害が発生し、保険金を受取る際に契約者が自己負担する金額のことをいいます。」（ソニー損保担当者）
（※2）免責金額
東京海上日動は、ワイシャツなどの洋服は破損・汚損等の補償の対象となるため補償される可能性はあるという。楽天損保は対象外だそうだ。
●近所で空き巣被害が相次ぎ、危ないと感じて鍵をセキュリティの高いものに交換した
「火災保険の補償対象外です。ご契約時に基本補償として『盗難』を付帯いただいた場合でも、ご提示いただいた例示のケースは補償対象外です。なお、強盗や窃盗（これらの未遂も含まれます）により損害を受けた場合は保険金をお支払いします」（ソニー損保担当者）
東京海上日動と楽天損保も同様に、補償の対象外。東京海上日動盗難被害が合って保険が支払われた後に、再発防止のためにカギやフィルム設置、破壊検知器の購入など20万円を限度にカタログから選べる特約がある。
●自宅の火事が隣の家に燃え広がったお詫びのお見舞金
「ご契約時に『類焼損害・失火見舞費用補償特約（※3）』を付帯いただいている場合、火災保険の補償対象です。類焼損害・失火見舞費用補償特約の失火見舞費用の補償は、保険の対象から発生した火災、破裂または爆発により、第三者の所有物が滅失、損傷または汚損した場合に保険金をお支払いします（*1）。お支払いする保険金は、被災世帯数(損害が生じた世帯または法人の数)あたり20万円です（*2）」（ソニー損保担当者）
（※3）類焼損害・失火見舞費用補償特約
（*1）煙損害または臭気付着の損害を除く。
（*2）敷地内に所在する保険の対象の保険金額の20％に相当する額が限度。
東京海上日動では、火災保険に「失火見舞費用保険金」として自動付帯されているという。保険の対象から発生した火災、破裂・爆発の事故によって、近隣等第三者の所有物に損害が生じたときの第三者への見舞費用が補償される。1事故1被災世帯あたり50万円。ただし、支払限度額（保険金額）の20％が限度。
●外国からのミサイル発射による家屋等損傷
「火災保険には、『戦争、外国の武力行使、革命、政権奪取、内乱、武装反乱その他これらに類似の事変または暴動によって生じた損害については、保険金を支払わない』との規定が設けられています。そのため、外国から発射されたミサイルが落下し、住居が損壊した場合は『戦争や外国の武力行使』と判断されるため、火災保険の補償の対象外となります。しかし、飛行機などの貨物や部品の落下によって、建物や家財に損害が生じた場合は火災保険の対象となり保険金が支払われるケースがあります。ただし損害の発生状況によって補償の対象となるかは、個別判断されることがあるため、一例としてご理解ください」（ソニー損保担当者）
＜建物外部からの物体の衝突による補償事例＞
・他人が運転する自動車が敷地内に突っ込み、壁を壊されてしまった
・他人が操縦するドローンが落下してきて屋根が壊れた
東京海上日動と楽天損保についても、戦争、内乱、暴動などの異常な事態によって生じた損害については補償の対象外。
●ドローン落下による家屋等損傷
「ドローン落下による建物自体の補償としては、ご契約時に基本補償として『水濡れ、外部からの物体の衝突など』を付帯いただいている場合、火災保険の補償対象となります。
なお、ドローン落下によるドローン自体の補償については、当社の火災保険における家財では建物内に収容する家財を保険の対象としており、建物外にあるドローンが落下した場合は火災保険の補償対象外となります。
また、企業所有のドローン自体については、火災保険の家財としての補償対象になりません。ご参考ですが、弊社では取扱いがありませんが、損害保険会社によっては火災保険とは別の保険商品として、ドローン業者の保険や企業向けにドローンの保険などを取扱っている場合があります」（ソニー損保担当者）
東京海上日動と楽天損保については、戦争とは無関係にラジコンなどと同じ感覚で操縦したものが落下した場合、補償の対象内。
●海外火山の噴火による家屋被害
「海外のある地点を震源とする地震や火山噴火が発生し、それによる津波が日本に襲来し、浸水被害など住宅に損害が生じた場合は、地震保険の補償対象となります。ただし、地震保険は単体で契約することはできないため、火災保険に加えて地震保険に加入する必要があります。
火山の噴火によって住居や家財に被害が生じた場合は、火災保険では補償を受けることができません。しかし、火災保険に付帯することができる地震保険では、火山の噴火によって発生した津波や火災、損壊、埋没または流失による建物や家財の損害は補償の対象となります。以下のような被害も地震保険の対象となりえます」（ソニー損保担当者）
＜噴火で想定される被害一例＞
・噴火を原因とする火災が発生し、建物が燃えてしまった
・噴火による噴石・溶岩流・火山灰などにより建物や家財が損壊してしまった
楽天損保では、持ち家で建物の補償をかけていた場合、建物の外部からの飛来に該当すれば補償される。もしくは地震保険での対応となる。
●豪雪で屋根の軒樋（のきとい）が壊れた
「ご契約時に基本補償として『風災、雹（ひょう）災、雪災』を付帯いただいている場合、『豪雪で屋根の軒樋が壊れた』『豪雪でカーポートの屋根が壊れた』などの損害は、火災保険の補償対象です」（ソニー損保担当者）
東京海上日動と楽天損保も同様に対象内。
今回紹介した火災保険の補償については、一般的な内容であるため、実際の事故では事故内容や当時の状況によって補償の有無などが異なる場合もある。あくまで参考程度にしたい。また保険会社によって補償を自由にカスタマイズできる場合もあれば、パッケージとして販売されている場合もある。補償を受けるに契約時の補償選択や特約付帯が条件となる場合もあるので注意したい。
【監修】
浜田政子氏
ファイナンシャルプランナー
合同会社Run Smile 代表社員／笑顔相続サロン（R）愛媛代表／愛媛相続診断士協会会長
長年保険業に携わっている経験を生かし、生命保険、相続、終活また夫婦問題診断士としてコンサル及びライフプラン作成を通じお客様へ常に寄り添い、悩みや相談、希望をお聞きし士業とともに解決へ導く道先案内人として愛媛より全国へ笑顔をお届けする活動しております。近年は相続に関わるコラムや執筆、監修もしており、全国版ラジオのパーソナリティーでは笑顔相続の伝道師として活動もしています。
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取材・文／石原亜香利
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