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「2000年問題」という言葉に聞き覚えがある方も多いのではないだろうか。
これは、2000年1月1日にコンピュータの動作に異常が生じ、さまざまな問題が引き起こされる可能性があると、当時の世間で騒がれた問題のことだ。
「〇〇年問題」は「2000年問題」に限ったことではなく、さまざまな業界において「2023年問題」が話題となった。そこで本記事では、法改正や社会情勢の変化に伴い懸念視されている2023年問題とは何かを詳しく解説していく。
また、併せて紹介する「2024年問題」「2025年問題」についても理解を深め、解決策や対処法を考えていこう。
2023年問題とは
2023年問題とは、働き方改革関連法の施行や社会情勢の影響で起こり得る諸問題のことを指す。業界ごとに問題視されている内容は異なるが、ここでは主に問題視されていた3つの問題を紹介する。
中小企業における時間外労働(残業)の割増賃金の引き上げ
2023年4月1日から、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率がすべての企業を対象に50%となった。すでに大企業は1か月の時間外労働に対する割増賃金を50%に定められているが、中小企業については従来の割増賃金率が25%であったため大幅な変更となった。
このことから、月60時間を超える時間外労働が発生している中小企業では、人件費の上昇を食い止めるために業務の効率化が求められている。
オフィスビルの増加に対するオフィスの空室率上昇
オフィスや不動産の空室率の上昇は、不動産業界における懸念事項の一つ。新型コロナウイルス感染症拡大により、リモートワークが急速に普及した。
その結果、オフィスを手放す企業やオフィス面積を縮小する企業が増加している。一方、都内では2023年に完成したオフィスビルも少なくなく、テナントが供給過多になりつつあるようだ。これにより、オフィスの空室率が上昇すると予想されていた。
しかし、オフィス賃貸仲介の三鬼商事は、2024年4月11日に3月の都心5区(千代田、港、新宿、中央、渋谷区)の空室率は前月比0.39ポイント低い5.47%と、2021年3月以降で最も低い水準だったと発表した。2023年はほぼ継続的に下落していた既存ビルの平均賃料も昨年12月からは上昇に転じている。
コロナ渦を経て、リモートワークを廃止する企業などが増えた可能性も考えられる。この事実から、予想されていた問題は必ず起こるわけではないとも言えるだろう。
世界基準の医学へ
2023年問題は医学の分野にも存在していた。これまで日本国内で医学部を卒業した人に対しては、無条件でアメリカの医師国家試験の受験資格が与えられていた。しかし2023年以降は、アメリカ国外の医学部卒業生の場合、世界医学教育連盟が認定した医学部の卒業生にのみ米国医師資格試験の受験資格が与えられるようになる。これを受けて、日本の医学部は、世界基準のカリキュラム改編を求められている。
2024年問題とは
2024年問題とは、2024年4月1日から適用された働き方改革関連法によって予想される諸問題のこと。特に運送・物流業界と医療業界で危惧されている内容をチェックしていこう。
労働時間の上限規制
働き方改革の一環として、2024年4月1日から労働時間の上限規制が適用された。それに伴い、運送・物流業界と医療業界では以下のような問題について懸念する声も多い。
1.運送業・物流業界
ドライバーやバス運転手の時間外労働の上限が規制される。これにより、年間の上限以上労働していたドライバーやバス運転手の収入が今までよりも下がることが予想されるほか、ドライバー不足も深刻だ。
2.医療業界
これまで過重労働が問題視されていた医師や看護師についても、時間外労働の上限規制が適用となった。日本の医療サービスは、医師の時間外労働の上限規制がない状態で運営維持されていたため、医師などの人材不足が課題となっている。
2025年問題とは
「2025年問題」とは、日本の超・高齢化社会がさまざまな分野に与える影響を指す。「超・超高齢社会」とは、労働人口が減少する一方で、4~5人に1人が75歳以上の後期高齢者である状態だ。
この人口構成の変化により2025年に直面し得る問題として、主に以下の4点が懸念視されている。
事業継承者の減少
2025年に70歳を迎える中小企業・小規模事業者の経営者約245万人のうち、約127万人は後継者が未決定だと言われている。後継者が未決定のままの場合、企業が黒字廃業になる恐れがあり、雇用の喪失やGDPの低下を引き起こすリスクがある。これを防ぐためには、後継者育成や第三者承継の検討が必要だ。
労働力不足の深刻化
労働人口の減少による人材不足も課題の一つ。特に、サービス、医療・福祉の分野では労働力不足が深刻となる見込みだ。また、労働人口の低下とともに、介護や看護の必要に迫られた離職者も増加すると見られる。介護・育児との両立や副業・時短勤務が可能など、柔軟な働き方ができる労働環境の整備を急ぐ必要があるだろう。
医療費の上昇
超・超高齢社会では、医療費の増加も予想される。70歳以上の高齢者が医療機関で受診した場合、医療費の負担は1〜2割の負担。この世代が増えると、国が負担する医療費が上昇するため、予算確保がより困難になることが懸念される。
不動産価格や地価の下落
2025年には、1947~49年生まれの約806万人が75歳以上の後期高齢者となる。少子高齢化が加速することで、相続件数が増え、空き家率も上昇すると予測されている。国土交通省の調査によると、空き家の取得方法では相続が最も多く、2021年の空き家率13.6%が2033年には30%に達する見込みだ。特に人口減少が著しい地方では不動産価格や地価の下落が進行すると考えられ、対策が必要となる。
※データは2024年6月上旬時点のもの。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部