年の瀬になると見聞きする機会が増える「松の内」という言葉。この時期には、「年賀状は松の内まで」、「初詣は松の内が明ける前には行こう」という会話が交わされることも多くなる。しかし、松の内がそもそもどの期間を指すのか、実はよく知らないという方も多いのではないだろうか。
そこで本記事では、「松の内」の意味や由来、マナーについて解説する。ぜひこの機会に理解を深めて、有意義な「松の内」を過ごそう。
松の内の意味や由来
「松の内」がお正月に関係する言葉であることは理解していても、詳しい意味を聞かれると説明できないという方も少なくないはず。まずは、松の内が何を指す言葉なのかを詳しく見ていこう。
松の内は正月の松飾りを置く期間
「松の内」は、正月の松飾りを置く期間のことを指す。松飾りとは、玄関先に置く門松や、松の枝で作られた正月飾りのこと。冬でも枯れることなく緑の葉を付ける松は、生命力の象徴だ。さらに、「祀(まつ)る」という言葉と同じ音であることから、古くより神様が宿る縁起の良い植物だと考えられてきた。
そもそもなぜ正月に松飾りを飾るのか
正月は歳神様を家に迎え入れて、その年の家族の幸福や健康を祈る行事。松飾りは、歳神様が家に訪れる際の目印、そして家に滞在している間の拠所(よりどころ)として飾られてきた。正月行事が終わり、歳神様が天に帰る頃になると、松飾りはその年の役割を終えて片付けられる。
松の内の期間には地域差がある
松の内は、歳様が滞在している正月の初めから終わりまでの期間で、一般的には1月7日までを指す。しかし、松の内の期間は地域によっても差があり、北日本・東日本では1月7日まで、西日本では1月15日までとされていることが多いため、自身が住んでいる地域の慣習を確認するようにしよう。
松の内の過ごし方とは
次に、松の内の過ごし方を紹介する。この期間に行っておきたいことをチェックして、ぜひ充実した松の内を過ごしてほしい。
歳神様をもてなし、無病息災を祈る
松の内は、歳神様を迎えるために家の中を飾り、無病息災や五穀豊穣を祈願する期間。歳神様をもてなすための飾り物には主に以下の3種類がある。
1.しめ飾り
邪気や災いが入ってこないよう、家の中を清めるために飾るもの。飾る場所は玄関や門などの出入口がおすすめだ。
2.鏡餅
鏡餅は歳神様が家に滞在している間の居場所。鏡に神様が依りつくという考えから、餅を鏡に見立て飾る風習が生まれたという。飾る鏡餅の数や置き場所には特に決まりがないため、神様に来てほしい場所に飾ろう。
3.門松
歳神様を迎え入れる準備が完了した合図である門松。門や玄関の脇など、目に入りやすい場所を選んで飾るのが一般的だ。
これらの正月飾りは松の内が明けてから片付けるようにしよう。
新年の挨拶を済ませる
松の内は、身近な人や旧年中にお世話になった人に対し、感謝の気持ちや今年の抱負を伝える絶好の機会。直接会うのが難しい人に対しては、松の内の間に年賀状やメールなどを使って挨拶をするようにしよう。
鏡開きは松の内が明けてから
鏡開きとは、正月が終わった1月11日に無病息災を願って鏡餅を食べる儀式のこと。「歳神様の依り代であった鏡餅を開いて食べれば、歳神様からの恵みや力を授かることができる」という考えから行われるようになった。また、鏡餅を開く(割る)ことで歳神様を見送るという意味合いもある。
松の内に関するマナー
最後に、松の内に関するマナーを紹介する。新年早々、身内や取引先に対して失礼のないようにぜひ注意しよう。
新年の挨拶は松の内が明ける前に
先ほども紹介したように、新年の挨拶は、基本的に松の内が明ける前に行うものとされている。しかし、仕事始めが松の内が明けた後である場合、この期間に仕事の関係者へ挨拶をするのは難しいだろう。その場合は、メールで挨拶をしたり、「小正月」の1月15日頃までを目処に、早めに挨拶をしたりするようにしたい。また、松の内の間に年賀状を届けられなかった相手に対しては、寒中見舞いを送るようにしよう。
松の内期間中の結婚式や法事はなるべく避ける
松の内の期間中に結婚式や法事を行えば、家を留守にすることになる。これでは、せっかく家を訪れた歳神様を迎え入れることができなくなってしまう。
また、小正月は女正月とも言われ、1年中家庭のために働く主婦が家事から解放される唯一の日という意味合いがある。そのため、この時期の行事開催はなるべく避けるのが無難だろう。
文/編集部