2023年、世界経済ではどのような動きが考えられ、また、そこから導き出される資産運用の最適解とは何か。
三井住友DSアセットマネジメントはこのほど、「私たちが考える 2023年金融市場の『世界観』と資産運用」と題したマーケットレポートを公開した。
2023年の投資環境…世界経済~減速するが名目成長率は底堅い
2023年は米国の実質GDP成長率が0.8%と予想されるなど、世界経済は低成長となる見通し。年前半は、物価高と金融引き締めの影響により米経済が減速し、欧州は年を通して景気が悪化すると予想されるためだ。加えて、中国経済は不動産問題とゼロコロナ政策の影響が残るとみている。
日本は成長率こそ鈍化するものの、景気後退局面入りは回避できると考えている。新型コロナ感染の波は繰り返されるものの、ウィズコロナの生活様式が広がり、景気への悪影響は限定的とみている。政府は景気配慮型の第2次補正予算を決定した。国・地方の歳出ベースで37.6兆円となり、大規模な対策となった。
物価は次第に低下する見通しだが、年を通せば、総じて高いインフレとなる見込みだ。その結果、各国・地域の名目GDP成長率は比較的高い水準で推移すると予想される。中でも日本は、コアCPIが1%~2%台で推移すると予想されるため、名目GDPは過去最高を更新する見通しだ。
金融政策は大きな転換点を迎えることとなる。弊社は米連邦準備制度理事会(FRB)が2023年3月にフェデラルファンド(FF)レートを4.75-5.00%とした段階で利上げは終了するとみている。
欧州中央銀行(ECB)は5月に利上げを終了するとみており、これで世界的な利上げ局面は終息する見通しだ。23年中は金融政策の変更はないとみているが、市場では景気回復を支援するためにFRBが金融緩和に動き出すのではとの期待が強まることも考えられる。
注目したい「潮流」
2020年代に入り、変化の途上にあった世界経済はそれまでの枠組みを大きく変えることとなった。2020年1月から感染が広がった新型コロナウイルスや2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻によって、世界的な経済のつながりが分断され、低インフレ環境のもと、米国長期金利の低下継続といった経済・金融環境は、急速かつ大きな変化を余儀なくされた。2023年もまだ変化の途上となるだろう。激変する環境の中、2023年に注目したい「潮流」を整理した。
(1)インフレ時代の到来
変化の1つがインフレ時代の到来だ。ウクライナ情勢の深刻化と原材料の上昇を背景とした物価上昇に端を発し、世界で歴史的な物価上昇となった。日本でもコアCPIが3%を超え、2023年も2%台の上昇が続く見通しだ。
また、環境対策を重視することで、例えば、エネルギー価格が高止まりする可能性もある。エネルギー価格の高止まりは輸入品価格の上昇となり、企業の生産コストや一般家庭の消費活動に影響を与えると思われる。
日本の場合、物価の上昇は今まであまり経験のないことだが、景気の熱を高める面もあり、必ずしも悪い話ではないと思われる。足元の物価上昇が2023年の労使交渉にも強い影響を与え、賃上げと物価上昇の好循環が始動する可能性がある。
(2)デジタル革新
デジタルインフラ(基盤)は私たちの生活に欠かすことができない。コロナ禍でスマートデバイスの需要が急増したが、利用範囲の拡大が新たな需要を生み、半導体市場の拡大が期待されている。
これは、インドや中国といったアジア太平洋地域の半導体の大口消費者であるエンドユーザーの存在が大きいと思われる。特に人工知能(AI)をクラウドで提供するサービスや製品は増加しており、社会を支える仕組みとしてグローバルに活用されている。今後も先進国での最先端技術の競争に加え、新興国ではデジタルインフラの構築やAIの活用が成長の要(かなめ)となるだろう。
(3)脱炭素化・SDGs
日常の生活の中で持続可能な開発目標(SDGs)、脱炭素、再生可能エネルギーといったキーワードを目にする機会も多くなった。SDGsを実現するために脱炭素社会を目指すことが重要だ。ウクライナ情勢によって、天然ガスから石炭への移行が見られるが、これは一時的だと思われる。今後は、一層再生可能エネルギーの普及が進むと思われる。
(4)米中対立(米中を軸とする体制間競争)
米中対立は貿易のブロック化(貿易制限、立地の制約、効率低下・インフレ傾向)や金融のブロック化(市場アクセスの制限に伴う対応、デジタル通貨を梃子とした通貨システムの多極化=ドルの地位低下)を促進し、後々の経済・金融環境に大きな変化をもたらすことになる可能性がある。
(5)成長の原点としての国の成長力(新興国経済)
経済成長は、人口の増加+生産性の向上+成長志向の政策+適切な財政運営、の組み合わせが重要になる。こうした点に注目すれば、例えば、モディ首相が率いるインドなどはその筆頭と言えるのではないだろうか。
(6)日本の資産所得倍増政策
少額投資非課税制度(NISA)の恒久化は多くの人の関心を集めている。合わせて、運用啓蒙の積極化、アドバイザーの拡充も、日本の貯蓄から資産運用への流れを強めると期待されている。
2023年の金融市場の見通し
今後、米国の雇用が鈍化し始めると、金融市場の注目点は景気・企業業績に軸足が移っていくと思われる。米景気は後退局面とはなるもののマイナス成長には至らず、インフレはピークアウトするもののしばらく高止まる、と予想している。また、日本経済は名目ベースで過去に比べて高めの成長が期待できる。
株式などのリスク資産にとって年前半は価格変動の大きな局面となるものの、年後半には、金融緩和期待や景気・業績の回復に対する期待などから明るさが増している可能性がある。
一方、債券市場は、中心となる米国債券は利上げペースの鈍化・終了を経たのち、再び金融緩和期待へと結びつきやすい局面が想定できそうだ。
ポートフォリオ戦略~長期分散投資のすすめ
<戦略① ポートフォリオのリスク度を高める(リスク許容度の高い方)>
株式、債券等、幅広い金融資産への投資からプラスのリターンが期待できそうだ。ポートフォリオのリスク度を高める機会と考えられる。
<戦略② 安定的な運用(リスク許容度が低い方)>
インフレは下がるといっても比較的高めの水準に落ち着く見通しなので、現預金では実質的に資産が目減りしてしまう。2023年は、保有する資産のほとんどが現預金という人にとっては、リスクを抑えた運用開始を検討する機会の年となるかもしれない。
<戦略③ 長期の成長ドライバーを資産形成に活かす>
世界の「潮流」が変化する中、2023年は新たな成長機会が生まれやすい環境になると考えられる。ポートフォリオのリスク度を高める場合にも、新しい成長の礎を生む可能性のある「潮流」に注目するのも一法だと思われる。
まとめ
2023年は投資環境の分岐点となり、投資を考える機会となりそうだ。1年程度の短期では変動性が高い相場が続く見込みだ。そのため、様々な資産に分散することに加え、投資するタイミングの分散も有効な手法だ。投資の時間軸を長く持ち、長期で分散投資をすることで相場の下落で慌てて売却することがないように留意することが重要だ。
出典元:三井住友DSアセットマネジメント
構成/こじへい
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