2013年、カリフォルニア州でアメリカではじめて、トランスジェンダーの生徒が学校のトイレやロッカーを本人が望むジェンダーのモノを選べる州法が決定。
その3年後の2016年には、1人用のパブリックトイレをすべての人が利用できる「ジェンダー・ニュートラル」のトイレにする法案に知事が署名。アメリカでもジェンダーレス化を積極的に取り入れるカルフォルニア州ロサンゼルスより、現在のアメリカトイレ事情をレポートする。
アメリカでは真逆な意見が火花を散らす
この「ジェンダー・ニュートラル」のトイレについては、アメリカ国内では大きく2つの意見に分かれている。
移民も多く、リベラル派が多いカルフォルニア州やニューヨーク州は「ジェンダーニュートラル」には寛容だが、保守派が多い州では「ジェンダーフリー」に対して厳しい意見を述べる人が多い。
現にノースカロライナ州では「出生証明に記載された性別に合わせたトイレの使用を義務付ける」という、「オールジェンダートイレ」とは真逆の州法が可決された。(この法案はLGBTに差別的だと各界で批判を受け、連邦政府と訴訟合戦に発展した)
実際暮らしの中で感じるオールジェンダートイレの是非
アメリカではショッピングモールやガソリンスタンには1人用の個室トイレがあり、それは昔から男性・女性関係なく使用する場所が多く、よって、標識が「ジェンダーニュートラル」になっても、使用する人には何ら変更がなく、「あっ、標識が変わったな~」という感覚であった。
しかし、COVID19が落ち着き始めた2021年ほどから、1人用の個室トイレ以外のトイレにも変化がでてきた。
いわゆる、入り口は1つで、中に個室がいくつもある通常のトイレにも「ジェンダーレス」が増えてきたのである。このトイレの場合、それぞれ用を足す場所は個室になっているが、手洗い場所は同じ。混雑しているときは、性別関係なく一緒に並ぶようになる。
このスタイルのトイレに初めて遭遇したときは、正直少し戸惑いを感じた。家のトイレはジェンダーレスなわけだし、LGBTに偏見はないのだが、今までパブリックトイレは男性用、女性用と分かれていることが当たり前と思っていたため、その日常が変化することに驚き「とうとうここまで進んだか」と感じだ。
しかし、数を重ねれるごとに、段々この状況に慣れてきた。何より、今まで女性用トイレは列が長くなることが多かったが、これによりその不便さを解消できるのではないのかと思った。
このトイレ様式はまだ、一部の施設やレストランのみ。新しくできた施設にこのオールジェンダートイレを採用している場所が増えてきている。
しかし、トイレに入ったときに女性の私は男性が手洗い場所にいたらちょっと驚くし、逆も然り。この様式に慣れるまでは、もう少し時間が必要なように思える。
ただし、学校ではオールジェンダートイレをいち早く取り入れていたため、私たちよりも若者のほうがオールジェンダートイレに寛容のようだ。
「オールジェンダートレイ」後進国の日本は今度どうなるのか?
「オールジェンダートイレ」はアメリカだけでなく、ヨーロッパでも広がりをみせつつある。日本でも空港や一部の大学などでトイレ標識を「オールジェンダー」にしている1人用個室トイレは増えつつある。しかし、デパートや駅のトイレが男性・女性がひとつになるような未来はまだ描けていないだろう。
「オールジェンダートイレ」は犯罪が増える恐れがあるのではないか、手洗い場所で化粧直しがしにくくなるのではないかなどの意見もあり、まだまだ課題はある。しかし、今後海外旅行を計画している人は「オールジェンダートイレ」が世界ではニューノーマルになりつつあることを頭に入れて旅行してほしい。
文/舟津カナ
編集/inox.