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減塩食が〝電気の力〟で美味しくなる!?キリンの食器型デバイス「エレキソルト」を試してみた

2022.12.26

健康志向の高まりから、減塩や無塩食品市場は拡大しているが、減塩食は、味に満足ができず続けられないという課題もある。そんな課題を電気の力で解消するお椀とスプーン「エレキソルト」が、2023年末の発売を目指して開発されている。そんな夢のようなデバイスを体験してきた。

塩分の摂り過ぎという社会課題解決を目指した「エレキソルト」とは


エレキソルトについて説明するキリンホールディングス株式会社ヘルスサイエンス事業部 新規事業グループ 佐藤愛さん。

キリンと明治大学の宮下芳明研究室との共同研究で、減塩食品の塩味を約1.5倍に増強させる独自の電流波形を開発し、この技術を搭載したスプーンとお椀型のデバイスが「エレキソルト」だ。

実は、日本人の1日当たりの食塩摂取量は、厚生労働省の調査によると20歳以上の男性で10.9g、女性で9.3gと、WHO(世界保健機関)が掲げる食品摂取目標量(5.0g未満/日)と比較して非常に多いことが知られている。

キリンが首都圏在住者を対象としたアンケートでは、塩分を控えた食事を行っている、または行う意思があると答えた人のうち、約63%が減塩食に課題を感じているという結果に。そのうちの約80%は、味に対する不満を抱えていることがわかった。

「入院していても隠れて通常食を食べてしまうなどもあり、家庭でも減塩食といった食事療法を続けるのはむずかしいことがわかっています。」と、キリン開発者の佐藤愛さん。

減塩ができて、おいしさや食事の楽しさを損なわないものはないかと考えた結果、「電気味覚」の研究に着目し、2019年から宮下研究室とともに開発を始めたという。

微弱な電流を用いて、疑似的に食品の味の感じ方を変化させる「電気味覚」自体は、200年以上前からある技術で、味覚障害が疑われる人の味覚チェックなどに使われている技術だ。

人体に影響しないごく微量な電流を用いて、疑似的に食品の味の感じ方を変化させるという電気味覚の技術を活用し、減塩食の味わいを増強させる独自の電流波形を開発した。

その電流波形を用いたスプーンとお椀型のデバイスが、「エレキソルト」というわけだ。臨床結果では、減塩食を食べたときに感じる塩味が、1.5倍程度増強されることを、世界で初めて確認している。

消費者のニーズを見据え、日常使いしやすいデバイス

エレキソルト スプーン 椀

減塩食に取り組んでいるときに、薄味でなく濃い味で食べたいものを聞いたところ、1位が、断トツでラーメン、2位が味噌汁という結果に。

「固形のメニューの場合、周囲に調味料がつくようにするなど、味を濃く感じやすい調理方法もできますが、汁物は塩分が分散してしまいます。そこで、舌の味を感じる部分に塩味だけでなく、旨味や酸味も複合的に増強して感じる電流波形を開発しました。」(佐藤さん)

塩味を一度、舌から引き離して、まとめて舌に感じられるようにする仕組み。

汁物を食べたとき、塩味の素となるナトリウムイオンが分散して、口の中で広がるが、このナトリウムイオンの動きを微弱の電流でコントロールすることができる。

電流を流すと、食品に含まれるナトリウムイオンが、一度舌から離れてデバイスに引き寄せられ、その後、電流が切り替わることで舌の味細胞にナトリウムイオンがまとまって届くため、しっかり味が感じられるという仕組みだ。

微弱電流を流すため、お椀の中と底の部分に電極があり、手で持つ際にお椀の底の電極部分に触れながら食べているときに、味が増強される。スプーンも同様だ。それぞれ好みの強度(4段階)の設定が可能で、揚げもの以上の水分量があれば、効果を発揮するという。

減塩の味噌汁で「エレキソルト」を体験

減塩の味噌汁で、レベルをセットして体験。

電流の回路がつながっている間、効果が持続する。今回、市販されている減味の味噌汁で体験してみた。通常のお椀と同じく味噌汁を入れる。レベル2くらいがおすすめとのことで、それに従いお椀の側面のスイッチを入れセット。

そのままの味で試食。

まずは、そのまま味見をしてみた。通常の塩分控えめの味噌汁だ。

お椀の底に手を当てることで、微弱電流が流れる。

今度は、お椀の底部を手で持って、微弱電流を流して試食。なんということだろう。魔法のように塩味を感じる。しかも、塩味だけでなく、味全体が濃くなったようだ。念のため、再度、底部から指を離してみると、また薄味に。

スプーンも同様に4段階で味が変化する。

お椀だから、全体的に味が変わるのかと思いそうだが、スプーンでも同じことが体験できた。4段階で、好みを設定できるのも興味深い。

「電気と聞くと、不安になる人もいらっしゃるかもしれませんが、すでに、私たちの生活の中にたくさん入り込んでいます。例えば、美顔器のEMSや体重計で筋肉量や内臓脂肪などがわかる体組成計などと同じです。

ただ、EMSなどもそうですが、電気の感じ方は人それぞれなので、まったく感じない人もいれば、レベルによって電流を感じるという人もいらっしゃいます。」(佐藤さん)

お椀で、レベルを変えながら味を試してみたが、筆者は、レベル4でピリッとした感じがした。今回の減塩味噌汁は、レベル2で食べるのが好みだったが、疲れていると濃い味が食べたくなることもあるため、レベルを変えるだけで、その日の気分にあった味に変化できるのは魅力的だ。しかも、減塩のままでだ。

より食卓に馴染むデザインを考案中

お椀の底のコンピューター部分を取り外せば、洗浄可能。

エレキソルトは、現在60名で実証実験を行っている。今後、デイリーに使いやすいようデザインが変わる可能性もあるそうだ。

「使い方はシンプルにしたいですね。また、コンピューター部分は取り外しできて、食洗器でも洗うことができるものにしたいです。より食卓に馴染むデザインにできればと考えています。」(佐藤さん)

スプーンもコンピューター部分を外し食洗器対応。

毎日の食事なので、食洗器を使うことができるのは、使用するハードルが下がるうれしいポイントだ。

「健康を意識しながら、食事のおいしさと楽しさを忘れないように、そのサポートツールになればいいなと考えています。おいしくて、結果、健康になればいいですね。これから減塩食をスタートする人や未病の方に役立ててもらいたいです。」(佐藤さん)

2023年末の発売を目指し、研究が続けられているエレキソルト。家族の中で、減塩メニューの人がいると、別々に調理しなければいけなかったが、エレキソルトがあれば、減塩で調理し、家族それぞれが4段階のレベルから好きな味を選び、食べることができるようになる。家族の料理を担当するものとして、これはかなりうれしい。

まだ価格は未定だが、調味料のランニングコストが減り、塩分控えめでもおいしく食べることができ、さらに別々に料理する手間が省けるとなると、多少高額でも購入したくなる人は多いのではないだろうか。とはいえ、手が届く価格帯で発売してくれることを願うばかりだ。

・キリン https://www.kirin.co.jp/

取材・文/林ゆり
撮影/藤岡雅樹

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