大阪を中心とする関西地方では、モータープールの看板を見かけることがあります。一瞬見ただけでは、何の施設か分からない人も多いでしょう。関西の言葉でモータープールとは何を意味するのか、概要や由来などについて解説します。
関西弁で「モータープール」の意味は?
主に関西で見かける言葉に、『モータープール』というものがあります。プールという単語から、水泳場をイメージする人もいるでしょう。まずは、モータープールが何を意味するのかを解説します。
関西弁では駐車場を指す
関西で『モータープール』は、駐車場を指します。主に大阪を中心とする近畿エリアで使われる言葉です。関西、主に大阪以外ではあまり耳馴染みのない言葉ではありますが、とはいえ数は少ないもののモータープールは全国エリアに存在し、関西だけで独自に発展した関西弁とはややニュアンスが異なります。
関西でも、すべての駐車場を指してモータープールと呼ぶわけではありません。 関西での『モータープール』という言葉は、大抵は会話では使われず、看板に『モータープール』の文字があるのを見かける場合がほとんどでしょう。
モータープールという名称は全国的に減少しており、数が多い大阪でも今では主流とまではいえないでしょう。若い世代では特に、パーキングや駐車場が一般的な言葉となりつつあります。
「モータープール」の由来って?
モータープールは、戦後の日本に米軍(進駐軍)が駐留していたときに使われていた言葉です。米軍関係者が軍関連の車両施設や待機所をモータープールと呼んでいたことから、車を停める場所をモータープールと呼ぶようになったといわれています。
戦後数年経ったころの小説にモータープールという言葉が使われており、当時は一般的な言葉だったようです。大阪の梅田には、1953年ごろにモータープールという名称の駐車場が作られています。
モーターは車、プールは水が溜まっている様子や場所を指します。アメリカでは駐車場のことをparking lotと呼び、イギリスではcar parkが一般的な呼称です。少なくともこの二つの国において、モータープールは駐車場を指す用語ではありません。
近年では、日本でも駐車場にパーキングやパークという言葉を使うことが増えており、正しい英語に置き換わってきていると考えられるでしょう。
昔は東京でも使われていた
現在、モータープールが多く残っているのは大阪です。しかし、元々は大阪で生まれた言葉ではなく、進駐軍が駐車場所として使用していた広場を『モータープール』と呼んでいたとする説があります。
戦後、GHQが本部を置いていたのは東京の日比谷です。当時、周辺には米軍関係者が利用するための駐車場が設けられており、関係者にモータープールと呼ばれていたといわれます。
米軍関係者が優先的に使用する一等地エリアにモータープールがあったこと、都市開発を急速に進める必要があったことなどから、東京のモータープールは比較的早く廃れていったと考えられるでしょう。
「モータープール」を言い換えると
モータープールをほかの言葉に言い換えることは可能なのでしょうか?駐車場用語としての主な意味と、英語の『motor pool』について解説します。
コインパーキングは同義語ではない
駐車場用語としてのモータープールは、曖昧な言葉です。明確にコインパーキングや月極(つきぎめ)駐車場を指す言葉ではなく、大規模駐車場をすべてモータープールと呼ぶわけでもありません。
一般的に、モータープールと呼ばれる施設は有料の月極駐車場が多いといわれます。月極駐車場は、1カ月単位で契約して料金を支払うタイプの駐車場です。
モータープールに月極駐車場が多い主な要因は、モータープールという名称が流行した時期が戦後の1950年代~1960年代ごろに限られるためでしょう。当時は自家用車の普及率が低く、時間単位での駐車管理も難しかったため、月極駐車場が主流でした。
1960年ごろからはパーキングメーターが普及し始め、1990年代に入るとコインパーキングが増えていきます。 モータープールの持つ広い駐車場のイメージも相まって、小規模な時間貸し駐車場には名称が広まらず、次第にコインパーキングが主流になっていったものと考えられるでしょう。
英語で「motor pool」は別の意味
英語の『motor pool』には、複数の意味があります。日本の駐車場用語とは意味が異なり、駐車場という意味では通じないため注意しましょう。
日本で米軍関係者が使っていたとされる『motor pool』の意味は、米軍施設内の車両設備などを指します。政府や役所などの組織が管轄する、公用車の待機所という意味でも使われる言葉です。
motor poolの類語にはcar poolがあり、似たような意味を持つことから、主に通勤時などに複数人で車に乗って交互に運転するような意味で使っていると思われます。
すぐに意味が通じない?独特の関西弁
モータープール以外にも、関西には独特の言葉があります。ほかの地域では伝わりにくい、独自の言葉の意味や使い方を見ていきましょう。
「テレコ」
関西でテレコというと、互い違いになってしまっていることを意味します。例えば、Aという顧客宛の手紙がBのもとに届き、B宛の手紙がAに届いてしまうことがテレコです。
【例文】
-
この数字、A列とB列がテレコになってるから気をつけてね。
- Bさんの荷物がほかの人の分とテレコになってて、クレームが発生したらしいよ。
テレコは、歌舞伎用語としても知られます。一つの物語を演じる際、2種類のストーリーを組み合わせて交互に話を進めたことから、互い違いという意味が生まれたようです。 そのほか、ファッション業界では、表面が凸凹したリブ編みの生地の一種のことをテレコ生地と呼ぶこともあります。
「いっちょかみ」
いっちょかみは、大阪や和歌山で使われている方言です。漢字では一丁噛みと書き、何にでも一枚噛む人を指します。
話をしているとすぐに割り込んでくる人・おせっかいを焼く人という意味が近いようです。新しいことに少しずつ首を突っ込んで、すぐに興味の対象が変わる人を表すこともあります。
【例文】
- あの子はいっちょかみばっかりしてて、あんまり好きじゃない。
- あいつはいっちょかみで、面倒な話によく巻き込まれてる。
いっちょかみは、よい意味でも悪い意味でも使われます。一部地域で使われる言葉で、関西全域で使われているわけではないようです。
「それ、なおしといて」
なおすには、元に戻すという意味があります。全国区では、なおすと聞くと修理をイメージする人が多いようです。
関西や九州のなおすには、修理だけでなく元々あった場所に戻す・片付けるという意味もあり、状況によって意味が変わります。
【例文】
- その荷物、置いとくと邪魔やからちゃんとなおしといて。
- 悪いけど、後でこれ、棚になおしといて。
前後の会話や、内容が分かっていれば勘違いすることは少ないでしょう。本当に修理を依頼しているケースもあるため、きちんと話を聞いておくのが大切です。
構成/編集部