2022年9月に発売されたホンダのバイク『ダックス125』。ダックスフンドをモデルにしているという胴長で愛嬌のある唯一無二のルックスで人気を集めています。
本記事では【カブガールが行く】の1年の終わりを締めくくる1台として、ダックス125に試乗したレポートをお届けします!
レトロで可愛いお出かけバイク
ダックス125は、2003年に生産終了したダックス(50cc)のリバイバル車両。およそ20年ぶりの復活でした。
カラー展開はパールネビュラレッドとパールカデットグレーの2色。モンキー125やスーパーカブC125でも採用されたカラーで、ホンダ小型二輪としてのシリーズ感を感じさせてくれます。
今回お借りした車両はパールネビュラレッド。
エンジンはスーパーカブC125やハンターカブと同系統。自動遠心クラッチの4速トランスミッションが採用され、クラッチ操作が不要になったというのだから驚きです!
ダックスの一番の特徴といえば、先代から受け継いだT字のバックボーンフレーム3ピースの鋼板を溶接して作られていて、接合部を細かく見ても丁寧な仕事が光っています。
スリムな外観ではありますが、シート幅が広いため足つきは意外と悪め。身長156㎝の筆者では両足がつま先立ちでした。
しかし運転中や取り回しでの苦労がまったくないのは、107㎏という車体重量の軽さから。お尻をズラして片足をベッタリつければ、またがったままでも楽々バックができるほどでした。
自動遠心クラッチのおかげでエンストの心配がないため、細い小道での走行や、Uターンも簡単です。低身長の方やバイクの取り扱いに自信がないビギナーの方であっても、難なく乗りこなせると思います。
二人でタンデムして出かけたくなる!
他の小型バイクにおいては、タンデムの機能は「できなくもない」という程度にとどまっていました。しかしダックスではタンデム前提での設計が随所に感じられます。
目立っているのはフラットなロングシート。指で押してもほとんどへこまないほどに固めで、1人でも2人でも安定した座り心地を提供してくれます。
実際にタンデムのポジションに座ってみると、設計者の意図は明らか。独立ステーで設置されたタンデムステップや、ちょうどよい場所にあるタンデムバーを使えば安心感は抜群です!
さすがに大人が乗ると狭くはなりますが、友達やパートナー、子供を後ろに乗せてどこまでも走りたくなるような快適さがありました。
ただし、給油のたびにシートをガバッと大胆に開ける必要がある点は、不便に感じるライダーも多いかもしれません。
つまり、積載性能はほとんどナシ。ロングツーリングというよりも近場へお出かけのためのバイクであるように感じられました。
現代的な機能もたくさん
現代的な機能も多く採用されています。大きな速度表示がわかりやすいメーターはデジタル仕様。走行距離や2個のトリップメーター、時計などを表示させることができます。
ポジションインジケーターがないのは残念ですが、運転するうちに感覚でわかるようになるため、個人的には問題ないと感じています。
ヘッドライト・テールライト・ウインカーなどの灯火類はすべてLEDです。
メーターと灯火類は、モンキー125との共通部品。明るく視認性が高く、デザインだけでなく安全面においても信頼できます。
タイヤは12インチ。ブレーキは前後ともにディスクブレーキが採用され、フロントのみにABSがついています。
シフトペダルはシーソー式です。ここ最近のホンダ車では、GB350をはじめカブシリーズ以外でも採用されています。
念のためにご説明しておくと、つま先で踏むとシフトアップ、かかとで踏むとシフトダウン。シフトパターンはN→1→2→3→4→Nというロータリー式です。走行中に4速からNへ入ることはありませんよ!
走りはじめの時は、カブ以外でこの操作をするのはなんだか気持ち悪いような感覚がありました。しかし5分もすればすぐに慣れ、メリットが見えてきます。細かいクラッチ操作抜きにクイックにシフトチェンジができ、ディスクブレーキの効果とあわさることで、外見のかわいらしさに似合わないアクティブな走りができるように感じました。
なめらかな走り心地
今回試走したのは、県道での峠越えと集落内の小道、そしてバイク屋さんの周辺の住宅街です。
まず驚いたのが、意外にもスムーズな加速です。エンジンやマフラー音の静かさからトコトコ系の走りを見せてくれるのかと思ったところ、しっかりと高回転までスムーズに回って加速をしてくれました。ただしカブと共通のエンジンということもあり、あくまでマイルドな乗り味からは外れません。
考えてみれば、ダックスフンドの祖先は猟犬であったはず。可愛い姿とは裏腹に意外と速かったよなぁ…と、ワンちゃんが走っている姿を思い出しました。
登り坂では3速へのシフトダウンの必要を感じましたが、125ccのバイクとしては十分です。スポーツライドで考えると物足りなく感じるかもしれませんが、レジャーとして軽く出かけるにはちょうどいい手軽さとパワー感といえるでしょう。
全体的に、ちょうどハンターカブとモンキー125の真ん中ぐらいの位置づけなのかな、という印象です。ニーグリップができないということもあって、足で踏ん張って身体を支える姿勢はちょっと独特な乗り味を生んでいました。
ちなみにいつもなら「このバイクでオフロードに入ってみたらどうなるんだろう?」と気になる筆者ですが、ダックスに関してはオンロード一択。乗り味はもちろんなのですが、一番の理由はタンクの修理という現実的な問題です。
フレームと燃料タンク兼ねたT字バックボーンフレームは、一度ヘコませてしまうと修理が困難。たとえレンタル車両ではなく自分の持ち物であっても、悪路を走る度胸はありませんでした…。
帰り道に信号を待ちながら手元を見ると、近代的なメーターの下にスッとまとまった独特なフォルムのタンクが目に入り、思わず笑みがこぼれてしまいました。
走って楽しい&タンデムして快適なのは大前提として、やはりダックスの一番の魅力はデザイン。自宅の車庫でこのレトロでキュートな相棒が待ってくれているとしたら…。仕事も家事もモーレツにがんばれちゃうってもんじゃないでしょうか。
取材協力:ナナカンパニー
文/高木はるか
アウトドア系ライター。つよく、しぶとく、たくましくをモットーにバイクとキャンプしてます。 愛車はversys650、クロスカブ110、スーパーカブ90。
高木はるかの記事は下記のサイトから
https://riding-camping-haruka.com
編集/inox.