働いている業界によっては『初荷(はつに)』という言葉を聞く機会があるでしょう。新年になると、企業やお店で初荷式が行われているのを目にすることもあるかもしれません。初荷の意味や時期などの概要について紹介します。
初荷とは?
荷物を届ける車を扱う業界や商品を販売する場所で、『初荷』という言葉を耳にしたことがある人もいるでしょう。初荷とは、何を意味する言葉なのでしょうか。基本的な意味合いや、行事について解説します。
その年に初めて送る荷物のこと
初荷の意味は漢字の通り、初めて送る荷物のことです。新年になって最初の出荷を行うときに使われます。古くは馬の背に旗をつけ、車が流通してからはトラックにのぼりや幕を取り付けて、新年最初の荷物を届けることを知らせていたようです。
商品を出荷する商店や工場で使われることが多い用語のため、一般的に聞く機会は少ないかもしれません。
初荷は、江戸時代の頃には始まっていた風習です。1月2日には商売人のもとに最初の荷物が届き、初売りが行われていたといわれています。
昭和初期には、松下電気器具製作所(現パナソニック ホールディングス株式会社)が全社的に初荷を行い、恒例行事として注目されていました。初荷を行う企業は多く、現代でも風習は残っています。
現在は1月4日から
初荷は、企業や工場の営業日に合わせて行われます。昔は元旦のみを休みとする企業が多く、1月2日に初荷が行われるのが一般的でした。
現在では三が日を休みとする企業が増え、1月4日の出荷を初荷とすることが多いようです。
新年の営業開始日に合わせて行われるため、1月5日・1月6日に初荷を行うケースもあります。正式に日程が統一されているわけではなく、それぞれの企業や工場の営業日によって行う日が異なるものだと覚えておくとよいでしょう。
「初荷式」という儀式も
企業によっては、初荷式を行っているところもあります。初荷式は、荷物を届ける車の交通安全と自社の商売繁盛を祈願する式典です。1年間無事に荷物を届け、商売もうまくいくようにという願いが込められています。
初荷式で行われるのは、今年最初の荷物を積んだトラックに『初荷』の幕を取り付け、安全を願ってお清めの酒をまくなどの儀式です。初荷のトラックを待つ販売店では、トラックを出迎えるために準備することもあります。
初荷式のやり方は、企業によってさまざまです。簡単に儀式を行うだけでなく、大々的な催しとしてお祭りのように開催されるケースもあります。
「初売り」との違い
初荷と似た言葉に『初売り』があります。買い物に出かける一般の人にとっては、初売りの方が馴染みがあるかもしれません。初荷と初売りの主な違いを解説します。
商売の相手が異なる
初荷と初売りの違いは商品を届ける相手です。 初荷は、取引先や販売店に今年初めての商品を納めることを指します。初荷という言葉は、基本的に商売を営む者同士で使用することが多い言葉です。
初売りは、初荷を受け取った商店や販売店が一般の顧客に対して商品を売ることを指します。デパートやスーパーなどで、初売りセールを見かけることも多いでしょう。 荷物を出荷または受け取る業界で働いていない人は、初荷よりも初売りを聞く機会の方が多いはずです。
年始の「初」はほかに何がある?
初荷や初売り以外にも、年始には『初』となるイベントや儀式があります。新年を祝う目的や、気持ちを一新して取り組む儀式もあるでしょう。年始に行われる主なイベントと、よく使われる言葉をいくつか紹介します。
初日の出
『初日の出』は、元旦の朝日のことです。早朝に日が昇ってくる様子を見て、今年1年を平和に過ごせるよう祈願します。
江戸時代にはすでに、初日の出を拝む風習が始まっていたようです。 明治時代を過ぎると政府による国家神道政策が行われ、その影響もあって大正時代頃までこの風習は盛んであったといわれています。
太陽神である天照大御神を祀る伊勢神宮が本宗(総本家)になったことから、初日の出を拝む慣習が民衆に広まっていったと考えられています。
現代でも、山に登り初日の出を拝むイベントは人気です。山頂で見る日の出は御来光とも呼ばれ、元旦のとき以外にも使われる言葉です。
書初め
『書初め』は、新年の抱負や目標を紙に書く正月行事です。日本では古くから筆を使い文字を書いていたことから、現代でも書初めは筆と半紙を使って行われます。
平安時代の宮中行事である『吉書の奏(きっしょのそう)』が、書初めの起源といわれている説が有力です。吉書の奏は吉日に天皇に書を捧げる儀式で、現代の書初めとは異なります。
書初めが行われるのは、一般的に1月2日です。古来から、1月2日に習い事を始めると上達するという言い伝えがあります。 習字の上達を願う意味でも、1月2日に書初めを行うことが多いようです。
正月に書いた書初めは、ほかの正月用品と一緒にどんど焼きで燃やす風習があります。どんど焼きで燃やした書初めが炎によって高く舞うと、習字が上達するという口伝もあるようです。
仕事始め
『仕事始め』は、新年最初に仕事をする日のことです。『仕事を開始する』という意味で、漢字は『初め』ではなく『始め』を使います。
年末の営業終了日を仕事納め・新年の営業開始日を仕事始めと呼び、企業によって日にちが変わるのが特徴です。
一般的には官公庁に合わせて、12月28日を仕事納め・1月4日を仕事始めとすることが多いでしょう。官公庁では同じ意味合いで、『御用納め』『御用始め』という言葉も使われます。
構成/編集部