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「羅生門」の再公開、IMAXで「七人の侍」、英国映画協会が新年から黒澤明特集を組む理由

2022.12.19

■連載/Londonトレンド通信

イギリスでは11月からオリヴァー・ハーマナス監督『Living』が劇場公開されている。黒澤明(1910-1998)監督『生きる』(1952)のイギリス版リメイクで、日本では『生きる LIVING』として来春公開予定だ。

舞台を1952年のロンドンに移し、ノーベル文学賞受賞作家であるカズオ・イシグロが脚本を手掛けた。主演ビル・ナイのジェントルマンぶりも手伝い、英国情緒たっぷりだ。

だが、イシグロ脚本は、黒澤監督が橋本忍、小国英雄と共同で脚本も書いたオリジナルを、大筋では忠実になぞり、オリジナルの魅力を再認識させるものでもある。

イギリス最大スクリーン(20×26m)のBFI IMAXで『七人の侍』を上映

ベテランのナイがついに主演男優賞となるか、映画賞レースでも注目の1本だ。その賞レースと時期を重ねるように、イギリスでは新年1月から2月まで黒澤明特集が開催される。

英国映画協会(BFI)によるこの特集では、英各地での『羅生門』(1950)再上映、イギリス最大スクリーン(20m×26m)のBFI IMAXでの『七人の侍』(1954)上映、BFIサウスバンクでの30作品上映、BFIプレイヤーでの15作品配信、映画研究者らによるトークが、2カ月に渡って続く。

『羅生門』は、金獅子賞(ベネチア国際映画祭最高賞)を受賞した作品だ。日本映画としては初の国際的に大きな賞の獲得だった。小津安二郎、溝口健二、成瀬巳喜男等々、次々に世界で認められていく日本映画の第一歩となった。

光の使い方、1つのシーンを複数のカメラで撮り角度を変え見せていく手法、たくさんのショットを繋げた編集など、後の映画に大きな影響を与えた。

人間の弱さ、醜さを描いた芥川龍之介による2つの短編小説『藪の中』と『羅生門』を組み合わせた物語の面白さ、演じる三船敏郎の豪快さ、京マチ子の妖しい美しさは、今も色あせない。

またも三船を主演にすえた『七人の侍』は、馬で切り込んでくるのを地上で迎え撃つ場面など、IMAXで観たら、さぞ迫力だろうと思わせる作品だ。CGなどない時代だから、実際の動きをカメラで絶妙にとらえてこその迫力とも言える。

農民が頼りにする7人の侍それぞれのキャラクターを際立たせながら、最後には侍の儚さ、農民のしぶとさを印象付ける展開に深みがある。

ジョン・スタージェスやジョージ・ルーカスにも影響を与えた作品

様々な映画監督が手本とし、また、好きな1本、観るべき1本として名前をあげる映画でもある。

この映画を基に、ジョン・スタージェス監督が『荒野の七人』(1960)を制作したのは、あまりにも有名な話だ。こちらも続編が作られる人気西部劇になった。

基になったと言えば、ジョージ・ルーカス監督による『スター・ウォーズ』シリーズの人気コンビC-3POとR2-D2の基になった、ひょろりとした又七(藤原釜足)と丸っこい太平(千秋実)コンビが登場する『隠し砦の三悪人』(1958)も、今回の特集にある、ルーカス監督も黒澤監督に多大な影響を受けた1人だ。

ちなみに写真の奥に小さく見えているのは、三船だ。こちらでも主演で、三船は16本の黒澤作品に出演し、黒澤監督が世界のクロサワになっていくのと同時に、世界的スターになっていった。

初監督作『姿三四郎』(1943)から遺作『まあだだよ』(1993)まで上映

今回の特集は、上にあげたような時代劇だけでなく、冒頭の『生きる』などの現代劇を含め、初監督作『姿三四郎』(1943)から遺作『まあだだよ』(1993)まで上映される大規模なものだ。

BFIが黒澤作品に注目するのは、これが初めてではない。BFIが開催するロンドン映画祭の、初回である1957年の開幕映画が黒澤監督『蜘蛛巣城』だった。複数回開催されてきた日本映画特集でも、黒澤作品はメインだ。

映画、テレビの振興を目的として活動するBFIは世界最大の映像アーカイブを誇り、発売するDVD/ブルーレイにも文字通り古今東西の作品が並ぶ。その中で、売り上げトップに居続けているのも黒澤作品だ。

実際、黒澤映画は、いつ観ても古くならない。それどころか、時を経るほどに、かえって新鮮にさえ感じる。

まだ観たことがない人、特集によって新たに観る人がいる限り、何度特集を組んでも組み足りないくらいだ。そこで観た人の中から、次のルーカスが育つかもしれない。

文/山口ゆかり

ロンドン在住フリーランスライター。日本語が読める英在住者のための映画情報サイトを運営。http://eigauk.com

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