ご近所付き合いを円滑に進めるには、最初、つまり引っ越し時の挨拶が大切です。そつのない引っ越しの挨拶ができれば、隣人との人間関係がスムーズになり、地域社会に溶け込みやすくなるでしょう。引っ越しの挨拶にまつわるマナーを紹介します。
そもそも引っ越しの挨拶は必要?
引っ越しの挨拶が必要かどうかは、家族の有無や引っ越してきた地域の状況によって異なるので、臨機応変な対応が必要です。引っ越しの挨拶の必要性について解説します。
単身世帯は必要でないケースもある
単身世帯の引っ越しでも、できることなら挨拶はした方がよいでしょう。集合住宅に住む場合は隣人との距離が近いので、お互いの人物像をある程度把握しておいた方が安心して生活できます。
ただし、単身世帯でも、ある条件に合致する人は挨拶を控えた方が無難です。その最たる例が女性の一人暮らしです。女性が単身で挨拶に行くと、女性の一人暮らしであることが相手に知られてしまうため、防犯上の不安要素が増してしまいます。
また単身者ばかりのマンションやアパートに引っ越した人も、挨拶は不要かもしれません。単身者の多い住宅は、ご近所付き合いに積極的ではない人が多いため、挨拶に行くと面倒がられてしまう可能性があります。
2人以上の世帯はしっかり挨拶すべき
家族と住むなど2人以上の世帯の場合は、積極的に引っ越しの挨拶に行きましょう。2人以上の世帯は、地域に根を下ろして生活を構築していくケースが多いため、地域住民とのコミュニケーションが自然と発生します。引っ越し時にしっかり挨拶を済ませておけば、ご近所付き合いをスムーズにスタートできるでしょう。
また家族がいる世帯は、その地域で長く生活してきた住民が多い地域に居を構えるケースが多々あります。このような地域に暮らす人は、周辺住民との交流を重要視することが多いため、引っ越しの挨拶を怠ると白い目で見られてしまう恐れがあります。
引っ越しの挨拶を行うべき範囲とは
引っ越しの挨拶をするとき迷うのが、どの家まで挨拶に行くべきかです。挨拶に行くべき範囲は、集合住宅に住んでいるか一戸建てに住んでいるかで異なります。
マンションやアパートの場合
集合住宅で挨拶をすべき範囲は、お隣に当たる左右両隣の2軒と自宅の真上・真下に位置する2軒です。マンションやアパートで生活をしていて、頻繁に顔を合わせるのが両隣に住む人です。挨拶をして顔見知りになっておくと、安心して生活できるようになります。
集合住宅の場合、自宅の真上と真下に住む人への挨拶も忘れないようにしましょう。真上と真下の住人には、生活音で迷惑をかけてしまう可能性が高いからです。特に子どもがいる場合は、どんなに注意しても、子どもの走る音や笑い声などが発生してしまうでしょう。しっかり挨拶をしておけば、騒音がトラブル化するのを防げます。
一戸建ての場合
一戸建てに引っ越したときの挨拶の範囲は、接地する道路の形によって変わります。
自宅が1本の道路に面している場合、挨拶すべきなのは両隣とお向かいの3軒、そして真後ろに位置する家1軒の計6軒です。これらの住宅に住む人とは何かと顔を合わせる機会が多いため、十分に挨拶を済ませ、ご近所付き合いを円滑にスタートさせましょう。
2本の道路に面している角地の場合は、それぞれの道路を挟んだお向かいに当たる家と隣家に挨拶するのが基本です。挨拶に行くべき範囲が増えますが、ぬけもれなく挨拶をしておくと、良好なご近所付き合いが築けます。
そのほかに挨拶しておくのがおすすめな人
引っ越し先の隣家やお向かい以外にも、引っ越しの挨拶をしておくのが望ましい人がいます。もれなく挨拶を済ませておけば、地域に溶け込みながら平穏な日常生活が送れることでしょう。
物件の管理をしている大家
挨拶を行っておくとよい相手の代表例が大家です。ただ大家への挨拶が必要かどうかは、その大家がどれくらい物件の管理に携わっているかで変わります。
大家が物件の運用や管理を担っている場合は、住宅に関する困りごとが発生したときにお世話になる可能性が濃厚なため、挨拶をしておくのがおすすめです。引っ越しのタイミングで挨拶を済ませておけば、気軽に声をかけやすい関係性が築けます。
大家が物件の運用や管理に携わっていない場合は、引っ越し時の挨拶は必ずしも必要ではありません。運用や管理が管理会社に任せられている場合、大家と直接やりとりをする機会はめったにないからです。
地域をまとめる自治会長や町内会長
自治会長や町内会長も引っ越し時に挨拶をしておくとよい人物です。ただ自治会長や町内会長へ挨拶をすべきかどうかは、地域の状況によって異なります。
自治体や町内会への加入が当たり前とされている地域に引っ越してきた場合、会長にも挨拶をしておいた方が無難といえるでしょう。地域住民との円滑な関係を築く礎になります。
会長が誰でどこに住んでいるのか分からないときは、不動産会社や行政機関に問い合わせたり、ご近所への挨拶回りをしたときに近隣住民に聞いたりして情報を収集するとよいでしょう。
旧居での挨拶も忘れずに
意外と忘れがちなのが、今まで住んでいた住居の周辺に住む人への挨拶です。
引っ越しは近所に少なからず迷惑をかけてしまう行為です。引っ越しのトラックが出入りすることで騒音が発生したり、トラックが路上駐車することで道を狭めてしまったりします。事前の挨拶もなしにこのような事態が起きれば、不快感を覚える人もいるでしょう。
引っ越しに伴う騒音や路上駐車でのトラブルを招かないためには、事前の挨拶が必須です。引っ越しの前に一言断っておくと、理解を得やすくなるでしょう。旧居の隣人たちへの挨拶は、引っ越し当日の1週間前を目安に行うのが一般的です。
そつのない挨拶のために気を付けたいマナー
引っ越しの挨拶は、マナーを守って行うのが重要です。マナー違反を犯せば、ご近所付き合いを円滑にするための挨拶のはずが、かえって関係性を悪くしてしまいかねません。
引っ越しの数日前から前日に挨拶に行こう
引っ越しの挨拶を行うタイミングは、引っ越しの数日前から前日が望ましいとされています。引っ越し当日は大きなトラックが道路に入ったり、引っ越しスタッフが自宅周辺を行き来したりと、何かと騒がしくなりがちです。
事前に引っ越しが行われる事実を知らせておかないと、隣人たちを困惑させてしまうばかりか、場合によってはトラブルに発展する可能性さえあります。引っ越しが行われる当日までに挨拶を済ませて、迷惑をかける旨を伝えておくようにしましょう。
遠方からの引っ越しにより、前日までに挨拶を行うことが難しい場合は、引っ越しの当日か翌日には挨拶に行くようにします。引っ越し作業がスタートする直前に声をかけ、後日改めて挨拶に出向くとスマートです。
挨拶は家族みんなで行うのが基本
引っ越しの挨拶は、できる限り家族総出で行うようにします。地域で生活する人全員が顔見知りになっていた方が、ご近所付き合いが円滑になります。
ただ、大家族や複数世帯で暮らしている一家の場合、代表者2~3人で挨拶に行くのがベターです。あまりに大勢で挨拶に行くと、相手を困惑させてしまいます。
家庭によっては、なかなか家族の予定が合わないケースもあるでしょう。だからといって『家族全員で挨拶に行く』という原則を守ろうとするあまり、挨拶のタイミングを逃してしまうのもよくありません。どうしても家族がそろわない場合には、代表者を決めて挨拶に行ってもらうようにしましょう。
家主が不在のときはどうする?
相手が不在で挨拶ができなかったときは、日を改めてもう一度挨拶に行くのが基本です。別の日に挨拶に伺う際は、前回と違うタイミングで挨拶に行くとよいでしょう。訪問する曜日や時間を変えると、住民に会える可能性が高まります。
何度か訪問したにも関わらず、不在が続いて会えなかった場合には、無理に会おうとせずに手紙を使って間接的に挨拶を済ませましょう。
後日、タイミングが合って対面できたときに「引っ越しの際はお手紙でのご挨拶となり申し訳ありませんでした。これからよろしくお願いいたします」と一声かければ、その後のコミュニケーションがぐっと楽になります。