毎年、年末調整や確定申告が近づくと耳にする機会が多くなる「扶養控除」という言葉。これは扶養親族がいる場合、税額控除が受けられる制度だ。しかし、扶養控除を受けられる扶養親族にはいくつかの条件がある。
そこで本記事では、扶養控除の対象となる扶養親族についてわかりやすく解説する。具体的な控除額についてもぜひ参考にしてほしい。
扶養控除の対象となる「扶養親族」とは
扶養控除とはどのような制度で、その対象になる扶養親族とは誰を指すのだろうか。まずは、扶養控除の制度詳細と対象者について見ていこう。
そもそも扶養控除とは?
扶養控除とは、夫や妻以外の扶養親族がいる場合に所得税の控除を受けられる税務制度。年末調整や確定申告で扶養控除申告書を提出すれば、所得税から一定金額が差し引かれる。扶養控除の対象となるのは、以下の条件を満たす親族だ。
1.16歳以上であること
2.配偶者以外の親族(6親等内の血族・3親等内の姻族)または県知事から養育を委託された児童や市町村長から養護を委託された老人
3.納税者と生計が同じである
4.1年間の合計所得金額が48万円以下(給与所得が103万円以下)であること
5.青色専業従事者として給与を受け取っていないこと、もしくは白色専業従事者でないこと
これらの条件から外れると控除を受けられなくなるか、控除額が少なくなる点を覚えておこう。
控除対象扶養親族に該当するのはどんな人?
扶養控除の対象となる扶養親族は「控除対象扶養親族」と呼ばれる。その対象区分は、年齢によって分かれており控除額も異なる。わかりやすくまとめると、以下の通りだ。
区分 |
年齢 |
控除額 |
|
一般の控除対象扶養親族 |
16歳以上 |
38万円 |
|
特定扶養親族 |
19歳〜23歳 |
63万円 |
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老人扶養親族 |
同居している場合 |
70歳〜 |
48万円 |
同居していない場合 |
58万円 |
控除の対象が16歳以上に限定されている背景には、2012年に実施された年少扶養控除制度の廃止がある。代わりに児童手当の制度が導入され、現在は「子ども手当」の名称で制度が継続している。
扶養控除と混同しやすい「配偶者控除」と「配偶者特別控除」
扶養控除には、配偶者である夫や妻は含まれない。その代わりに「配偶者控除」や「配偶者特別控除」の制度を利用することで税額控除が受けられる。この2つの制度の具体的な内容を見ていこう。
配偶者控除とは
配偶者控除とは、生計が同じである配偶者の年間合計所得が48万円以下(給与収入が103万円以下)の場合に受けられる控除制度。配偶者が青色専業従事者や白色専業従事者ではない場合に利用可能だ。また、控除額は納税者の年間所得額によって決まる。控除額は以下の通り。
所得額 |
控除額 |
900万円以下 |
38万円 |
900万超〜950万以下 |
26万円 |
950万超〜1,000万以下 |
13万円 |
1,000万超 |
なし |
納税者の所得額が1,000万円を超えると、配偶者控除は受けられなくなる。所得が1,000万円を超えると、家計へのダメージにもつながりかねない。
配偶者特別控除とは
配偶者特別控除とは、配偶者の所得額が48万円を超えた場合に受けられる控除のこと。納税者の所得額と配偶者の所得額によって、控除額が段階的に分けられている。控除額は、1万円〜38万円。納税者の所得上限が1,000万円、配偶者の所得額上限は133万円(給与所得の場合、201万5999円)だ。
扶養控除に関する疑問
最後に、扶養控除に関する疑問に答えたい。子供が扶養控除の対象になるのかどうかは、以下を参考にしてほしい。
子供がアルバイトをしている場合はどうなる?
子供がアルバイトをしている場合でも扶養控除は受けられる。ただし、扶養控除を受けるには以下の2つの条件を満たすことが必要だ。
1.所得額が48万円以下(給与収入で103万円以下)であること
- 青色専業従事者として給与を受け取っていないこと、もしくは白色専業従事者でないこと
扶養の範囲を超えていた場合、控除額を返還しなければならないため、子供のアルバイトの所得額を把握しておくことも大切だ。
別居している子供も扶養控除の対象になる?
例えば、高校生や大学生が上京してひとり暮らしている場合など、別居している子供がいる世帯でも扶養控除を受けることは可能。ただし、別居の場合は「親が子供に対して仕送りなどの金銭的な援助を行っている」「定期的な帰省がある」など、生計が同じであることが条件となる。親元を離れ、独立して自ら生計を立てている子供は、扶養控除の対象外となるため注意しよう。
※データは2022年12月中旬時点のもの。
文/編集部