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楽天モバイルにプラチナバンドは必要なのか?他人事ではなくなりつつある3キャリアへの影響

2022.12.16

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は、楽天モバイルへのプラチナバンド割当てについて話し合っていきます。

プラチナバンドを求める楽天に有利な報告書案

房野氏:主に楽天モバイルに対するプラチナバンド割当てを検討してきた「携帯電話用周波数の再割当てに係る円滑な移行に関するタスクフォース」が、2022年11月10日に報告書(案)を出しました。同年12月9日までパブリックコメントを募集しました。

房野氏

石川氏:報告書案では、楽天モバイルにプラチナバンドを割り当てることがほぼ決まったみたいな感じ。当初の予定通り、移行期間10年というのは5年に短縮しそうだし、もっと短縮することも仕組み上はできるけど、楽天モバイルは移行にかかるお金は払う必要がないと言っている。楽天モバイルが、「プラチナバンドを使いたい、我々の方が電波を有効活用できる」といって「競願」を申し出ると、既存の3社と比較して、プラチナバンドを渡せるような仕組みにしましょうという案になっています。

石川氏

房野氏:報告書の案、ですよね?

石野氏:案とはいえ、ほぼ決まりですよ。でも、この後の流れとしては、楽天が競願申請をしても、「いや、15MHz幅は多すぎるんじゃないの?」と有識者たちに言われる可能性もゼロではない。

石野氏

石川氏:あくまで「再割当てできる仕組みにしましょう」っていうことで、パブリックコメントが募集されている。

法林氏:再割当ての仕組みを作ったという話でしかないんですよ。楽天モバイルにプラチナバンドを割り当てると決まったわけではない。ちゃぶ台をひっくり返されるかもしれない。

法林氏

石川氏:パブリックコメントが年内くらいにまとまって、正式な報告書が出て、来年から具体的に動き出してくるんだろうなと思います。楽天モバイルは競願を出せば絶対勝てると見込んでいるようで、2024年3月からプラチナバンドを使い始める計画で動いています。

石野氏:既存3社が「我々も基地局を増やします」って言っても勝てるんですかね?

石川氏:うーん……既存3社が「1.7GHz帯が欲しいんですけど」って言ったら、楽天はどうするんだろう。

法林氏:「ウチ(既存3社)の方が効率良く運用できる」とかね。

石野氏:そうなりかねない。5年後、10年後に「そのプラチナバンド、返してください」みたいな感じになったら、また移行しなきゃいけなくなるのか、という話もあったりして。

房野氏:再割当てというのは、どのくらいのサイクルで行われるんでしょうか。

石川氏:既存3社は移行に10年くらいかかると言っています。お金も時間もかかるので、それくらいかかると言っていたんですけど、報告書案では5年が妥当だとなっているので、これから5年かけて移行されていく。仕組み上は、例えば既存3社が移行費用を負担して5年なんですけど、楽天がお金を出して「終了促進措置」という仕組みを使うと、その5年を早めることも可能になっています。だけど楽天モバイルは、終了促進措置は一切利用しないと言っています。お金は一銭も出さないと。

石野氏:一応、5年かけて完全に移行するということなので、楽天モバイルは早ければ再来年、2024年3月から最初の1局目でプラチナバンドの電波を吹き始めると言っています。

法林氏:あくまで周波数をもらえれば、ね。

石野氏:もらえる前提で話が進められている感じ。

周波数割当ての仕組みを整えたにすぎない

房野氏:そもそも再割当てというのは、どういうことなんでしょうか。

石野氏:元々、周波数は利用の有効期限があるんです。周波数をキャリアにあげているわけではない。

法林氏:車の免許と同じ。普通免許しか持っていない人が更新しても大型免許はもらえない。

房野氏:その期限が5年間ということですね。それは各周波数帯で決まっていると。

法林氏:そうですね。一応、理屈上は複数割り当てるケースもありえるけど、現実的にはバンド毎に免許を取る。例えば3Gが始まる時に2.1GHz帯を4社に割り当てたけど、3社しか使わなかった。

石野氏:これまでは漫然と、当たり前のように再更新が繰り返されてきた。

法林氏:今回の再割当てについては、考え方ややろうとしている内容は悪くないと思う。でも「それを今の時代にするの?」という疑問はある。総務省が「免許には期間があって、例えば5年とか10年という期間にしますよ」ということを決めて、期間が終わった時には「使用期限が来たからきれいに更地にして新しい免許人に渡してください」という考え方。きれいにするのに時間がかかるという話をしていて、お金を出したら一部地域だけ早めに渡しますとかが、できなくはない。今回のタスクフォースは、単にそういうルールを作ったという話です。次にまた割り当てる時には、周波数を希望する事業者がみんな手を上げる。もちろん、元々使っている人も手を上げていい。ただ、功罪もあって、例えば、使っていた周波数の利用期限が来たので手放した。でも、次に割り当てられた事業者がダメで、全然有効活用できない。5年経ってまた割り当てになった時に、仮に再び元の事業者が割り当ててもらったとなると、その事業者は再投資しないといけない。お金がすごく無駄になるという考え方もある。

石野氏:700MHz帯みたいに、キャリアによっては割り当ててもらったのに、5Gまで全然使っていなかった周波数もある。そういうことをなくすための措置でもある。「有効活用されていない場合は返却してもらいますよ」と。それとは別に、競争促進の観点も加えられて、プラチナバンドも例外にすべきではない、みたいなことが書かれていて、そこにピンと来た楽天が、「よし、プラチナバンドを取りに行くぞ!」という感じで意気込んでいる。そして自信満々にプレゼンして、いつの間にかプラチナバンドをもらいそうな情勢になってきている。

石川氏:有効活用されていない周波数帯があると言われているけれど、それって国際的に広く使われている周波数からは外れているものが多い。メーカーがわざわざ日本のために対応しなきゃいけないバンドだったりする。だったら最初からグローバルで使われている周波数帯を割当ててよ、という話になる。

法林氏:ドコモに割り当てられているn79とかね。

石川氏:あと、携帯電話用じゃなくて、放送用、地デジ用の周波数を整理すると、結構空くらしいんです。n71(600MHz帯)、アメリカのT-Mobileが使っているような周波数帯があるんですよ。T-Mobileはn71を使って5Gのエリア展開をしているし、そういったこともできなくはないのかなと。楽天に周波数を割り当てることは重要なんですけど、一方で既存3社は移行に関わる対応で1000億円ものお金がかかるわけですよ。ようやく料金値下げの影響から脱し始めて収益が回復している中で、また5年で1000億円かどうかわからないけど、そういう負担をしなくてはいけない。結構な重荷だし、何のメリットも生まない1000億なわけですよ。

法林氏:3社のユーザーもたまったものではない。

石川氏:そう、3社のユーザーに影響が出る。

周波数移行の費用、何でそんなにかかる?

房野氏:各社1000億円くらいかかるんですか?

石川氏:そういう試算を出している。たぶん、多めに言っていて「こんなに費用がかかるから止めた方が良いんじゃないの?」っていう意図があると思うけど。

房野氏:話半分でも500億円くらいかかると。

石川氏:だから、本当に今回のやり方が正しいのか、ちゃんと検証が必要なんじゃないかなと感じます。

石野氏:既存3社の試算を見ると、エリアの再設計、基地局を増設したりとかするのに一番お金がかかっている感じではある。

石川氏:いずれにしても、そうした工事に人とお金と時間がかかる。そんなことをするんだったら、5Gの基地局を増やした方がいい、移行の対応でまた日本の5G展開が遅れるっていう見方もできる。

房野氏:プラチナバンドの基地局は、比較的各社、古い時期に作っていますよね?

法林氏:今度召し上げるのは3Gの基地局。

房野氏:ということは、建ててから15年とか20年とか経っていますよね。

法林氏:それくらい。ただ、携帯電話の基地局って機材なので減価償却しなきゃいけないし、それを廃棄する時に損金扱いになる。2Gの時もやっていることだけど、それもあるので、「終わりました、はい、どうぞ」って戻せるという話ではない。ソフトバンクの宮川さんが言っていたけれど、2.1GHz帯で12万局建てて、その後にプラチナバンドをもらった。でも、今、トラフィック量が増えたことを考えると、無理してでも12万局を建てたのが、結果的に良かったと。そういうこともあるので、プラチナバンドをもらったから、はい、OK! ではない。楽天は、もらったプラチナバンドでルーラルエリアをカバーしようと考えているようだけど、後でしんどくなるかもしれないとも言われている。

ソフトバンク株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川 潤一氏

房野氏:以前、楽天が基地局を建てる時に、アンテナを付ける場所があまりないと聞いた覚えがあって、3Gは一等地にアンテナを建てているのかなと思ったんです。

石川氏:いや、アンテナの位置は別に関係ないですよ。ただ飛ぶ電波の幅が狭くなるだけ。

法林氏:既存キャリアのアンテナの位置は変わらない。

石野氏:吹いている幅を減らすだけ。

法林氏:周波数の幅を狭くして、各社の5MHz幅ずつを楽天が使う。だから、楽天がプラチナバンドを使って電波を吹くんだったら、そのために当然、基地局、アンテナを建てていく。アンテナは既存の場所に追加で建てるのか、どこか新規で建てるのか……。

房野氏:各社、500億から1000億円かかるというのは、何にかかるのでしょうか。

石野氏:まず1つは、電波を中継するためのレピーターです。古いレピーターはソフトウェアで更新できないので、15MHz幅だったらそれ用の設定になっていて、減らされた状態に対応できない。そのままだと楽天の電波を間違って中継してしまう可能性もあるので、新しいものに置き換えないといけない。それがレピーターの交換です。次に、楽天が各社から5MHz幅ずつもらうことになると、周波数をつぎはぎで使うことになる。楽天が急に割り込んでくる形になって、そうすると干渉が起きやすくなるので、物理的に干渉を抑えるフィルターを入れましょうと。これにもお金がかかる。3つ目に、既存3社は15MHz幅が10MHz幅と3分の2に減るけれど、ユーザー数がそれに合わせて3分の2に減るわけではないので、残りの3分の1のユーザーが使う電波をどうしましょうかとなると、結局は基地局を増設しなくてはいけない。この3つでお金がかかる。一番かかるのは基地局増設なんですけど、レピーター交換やフィルターの挿入は、たくさんある基地局に1つ1つやっていかないといけないので時間がかかる。

石川氏:本来だったら5Gの基地局を作る人たちがそちらに回されちゃうので、3キャリアにしてみると、そんなに価値を生まないものにお金をかけないといけないという点がネックになっている。

房野氏:3社が今、まさに使っている周波数を渡すというのが難しいところですね。

法林氏:再割当てで免許を更新して、普通だったらそのまま次の免許に行くんだけど、そうしないで再検討して、より効率良く使える事業者に割り当てましょうという話。土地で考えるとわかりやすい。借地権を持っていて、今までは25年とかだったのが、今年からは期間を5年へ短くするからよろしくって感じ。アパートを持っている家主さん、地主さんが住んでいる人たちに対して「出て行って」と言っているのと同じ理屈。借地権が、今までは25年だったのが5年になった。「楽天不動産がここにビルを建てますので出て行ってください」という感じ。でも、5年経ったらどうするのかという話も当然出てくる。

石野氏:ソフトバンクは2024年1月、ドコモは2026年3月に3Gを停波する。再割当ての周波数は3Gで使っているんですよ。3Gと4Gで分かれているので、楽天としては「やめるんだったらウチにくれ」っていう理屈ではある。今回の報告書案は、楽天にとっては満点回答だったと思う。お金を払わなくていいし、5年でもらえるし、よくやったなという感じがします(笑)

石川氏:auは5MHz幅取られることよって、DSS(Dynamic Spectrum Sharing:4Gの周波数を5Gと分け合って使うこと)がうまく使えなくなる可能性もあるし、ドコモはドコモで2026年まで3Gを使うので、そもそも移行できないんじゃないかと。今回、かなりごり押しで決まった気がする中で、すべてがうまくいくのか……微妙じゃないのかなぁと。

石野氏:わからないですけどね。現段階では報告書案が出ただけなので、競願申請したら、「いやいや、100万ユーザーもいない事業者に15MHz幅は多すぎる」と言われる可能性もあるので。5MHz幅くらいで十分だと言われたら、「じゃあ、ドコモかソフトバンク、KDDI、どこから取ろうかな」みたいな話にもなるし。まだわからないところは残っている。

法林氏:競願になった時に、競争入札になって、本当に楽天が取れるかどうかというのは誰もまだわからない。

ユーザーへの影響は?

房野氏:入札には審査があるのでしょうか。

石野氏:もちろん審査する。いつまでに基地局を何局建てて、人口カバー率をこれだけにしますというような開設計画を出す。その書類を審査される。

房野氏:それはまだ出していないと。

石野氏:まだです。移行のやり方の報告書案が出ただけなので、まだこれからです。スケジュール的には、12月半ばくらいにパブリックコメントを受けて完成版の報告書が出て、年内は難しいと思うので年明けくらいから楽天が競願申請をかけて、総務大臣がOKというと割当てが決まる。

房野氏:再割当てというのは、法律で定められているんですか?

石野氏:電波法が改正されて再割当制度が盛り込まれ、10月1日に施行されています。改正されたけれどディテールが決まっていないので。

法林氏:最初は携帯電話サービスを始める電電公社に周波数を割り当てた。その後、DDIセルラーとIDO、各地域のデジタルホン、デジタルツーカーとかに順番に割当てていった。それが最終的に2006年くらいに3社体制に1度まとまり、その後、イー・モバイルにも割当てられたけど、結局iPhoneのために周波数が必要ということでソフトバンクが買収して手に入れた。そうやって割当てをしていったんだけど、基本的には、繰り返し同じ事業者が同じように割り当てられて使っていた。キャリアにとって、事業の計画を立てられるし、結構都合がいいことだった。だけど、楽天がこのタイミングで携帯電話事業に参入した。総務省も「この調子で同じ事業者に再割当てしていったら、いつまで経ってもプラチナバンドが専有されてまずいんじゃないか、競争が起きないんじゃないか、という風に考えて、再割当てをすることになったということなんだけど、僕は結果を見た時に、やっぱり日本の通信行政はこうなんだなとがっかりした。

房野氏:ソフトバンクがプラチナバンドを手にした時とは背景が違いますか?

法林氏:全然違うと思います。ソフトバンクはプラチナバンドを割り当ててもらうのに、結構費用を負担していたはず。元々使っていた事業者に立ち退いてもらうために色々やったし、700MHz帯も衛星放送のブースターか何かと干渉するという話があったりとか。

房野氏:立ち退き料みたいなものを払っていたんですね。

法林氏:今までの通信行政の中でいうと、電波に関しては退いてもらう時には、基本的にメリットを享受する新たな事業者が費用を負担していた。

房野氏:今回は真逆のケースですね。

法林氏:今回は更地にしてから明け渡せと。

房野氏:再割当されたら、全国規模でやるんですよね。

石野氏:そうです。

房野氏:それが1000億円の試算につながるわけですね。

石野氏:一番多いところが1000億ですけど、まぁそうですね。

房野氏:仮に楽天モバイルへ再割当されることになったら、既存3キャリアのユーザーのスマホが繋がりにくくなるとか……

石野氏:繋がりにくくなる可能性は大いにあります。エリアが変わるわけではないんですけど、パケ詰まりとか、しやすくなるかも。

法林氏:それが宮川さんの話にも関わるところで、3社は一定数、基地局をたくさん持っているでしょう。それの足りない分をプラチナバンドでカバーする方向で持っていたいと思っているけれど、楽天の場合はそもそもの話として、1.7GHz帯で……

石川氏:来年6万局になる。

法林氏:といっているので、厚みとして全然足りない。ユーザー数も500万程度なので……厳しいですよね。

石野氏:しかもユーザー数が今は減っている。

判断が正しいかの検証が必要では

房野氏:結局どうなるのでしょうか。

石野氏:いやもう、決まったので。

石川氏:ほぼ決まりなので、このまま行くでしょう……ただ、割り当てて、本当にそれで楽天にユーザーが移行するかというのは別の話。ソフトバンクがプラチナバンドをもらった頃っていうのは、iPhoneというキラーデバイスがあって、iPhoneが欲しいからソフトバンクに移行する人もいたけど、一方でソフトバンクの電波は繋がらないから移行しないよという人もたくさんいた。だけど、ソフトバンクがプラチナバンドを獲得したことで、なんとか繋がるようになったから、それだったらiPhoneが欲しいからソフトバンクで契約するっていう人が多くなった。今の楽天はそういったキラーデバイス、キラーサービスはないに等しい。繋がりやすくなりましたといっても、この先ユーザーが増えるかどうかは別の話なんじゃないかと思います。

石野氏:料金の安さでどうなるか。

法林氏:再割当てで楽天に5MHz幅ずつの話は、ちょっと筋が悪いからダメじゃないかと散々言ってきたんだけど、結局、こうなってしまった。まさに過去のMediaFLO vs NOTTVみたいな話。技術的には明らかにMediaFLOの方がちゃんと用意できていて、NOTTVは規格を作っている最中だった。でもNOTTVの方に周波数が割り当てられた。これは半分は国策。もっと遡ると、3Gの2GHz帯の割当ての1社、アイピーモバイルは免許をもらったけれど、1度も電波を発することなく会社が倒産してしまった。それを審査したのは、今の総務省の人たちですから。

石野氏:ソフトバンクもね、返上していますから。

法林氏:そう。だから果たして本当に今回の判断が正しいのかは、ちょっとわからない。ただ、ルールとしてこういうものを作りましたと。競願で果たしてどうなるか。ちゃんと判断されるのか。10倍以上のユーザーがいるところに割り当てるのが正しいのか、競争のために10分の1しかユーザーがいないキャリアに割当てるのが正しいのか。

石野氏:電波の利用効率を向上させるっていっているんですけど、400万台のユーザーしかいないところに15MHz幅を割り当てたら、明らかに利用効率が悪くなる。

石川氏:そうなのよ。楽天モバイルの矢澤さんに突っ込んでも「競願は、ユーザー数は関係ない」という話。それは違うんじゃないかなと。

楽天モバイル株式会社 代表取締役社長 矢澤 俊介氏

石野氏:タスクフォースの会合でも、有識者の先生たちに突っ込まれていた。料金の安さは関係ないとか。

法林氏:料金が安いといっても、他社には0円のプランがある。楽天モバイルは0円をやめたじゃないかって。でも、冷静になっていうと、0円プランは顧客層を広げることには役立ったかもしれないけれど、結果、利が得られていない。得られていないということは、やっぱり上手く行かなかった。この座談会でも散々指摘された「1.7GHz帯しかないのに大丈夫か」ということに対して「1.7GHz帯で勝負できる、他の周波数はいらない」って言っていたのに、今になってから欲しいという。楽天は「すみません、間違っていました」っていいなさいよって話なんですよ。それが言えないのに、タスクフォースの会合で、競願するだの、5MHz幅ずつだの、取れなかったら1社を狙うだの、ということを言うからダメ。楽天は「モバイルネットワークの民主化」と言っているけど、全然、一般ユーザーのことは考えていない。

石川氏:それは昔のソフトバンクもそうですけどね……

法林氏:でも、ソフトバンクはまともだったと僕は思う。

石川氏:ソフトバンクは最初からプラチナバンドが必要だって言っていた。

法林氏:楽天モバイルは、ほかのキャリアのユーザーに対して、「私たちに割り当ててくれれば、もっとみなさんに安くて品質のいいサービスや料金を提供できます」ということを言わないと。

石野氏:まぁ、ちょっと楽天に厳しすぎる発言が続いたので、フォローすると、楽天は政治力があるなと。

房野氏:それ、フォローになりますか?(笑)

石野氏:やっぱり政治とうまく付き合わないとダメなんだなと(笑)

石川氏:楽天の25週年レセプションで、現役総理大臣の岸田さん(岸田文雄総理大臣)が来たり、ビデオメッセージで菅さん(菅義偉前総理)とか安倍さん(安倍晋三元総理)が登場したりというのが政治力だし、あれが結果として報告書案につながっていたのかって気もする。ただ、本当にこれが正しいかどうかは、もっと議論するべきだったんじゃないかなと。地デジ向け周波数の話もそうだし、KDDIの髙橋さんに決算会見の時に質問したけど、ローミング費用がもっと安ければ、わざわざこんなことをしなくても良かったんじゃないのっていうね。もっと安く抑えられるのであれば、KDDIだって1000億円負担しなくても済んだのにって。

KDDI株式会社 代表取締役社長 髙橋 誠氏

石野氏:それって、髙橋さんが悪いの?(笑)

……続く!

次回は、Snapdragonの新型ハイエンドチップ、「8 Gen 2」について会議する予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘
文/房野麻子

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