[〝趣味活〟万歳!読売巨人軍・高梨雄平さんの料理道②]
料理上手のプロ野球選手として知られる読売巨人軍の投手・高梨雄平さん。料理を始めたきっかけなどについて話を聞いた前回に続き、今回はYouTubeチャンネル「たかなしきっちん」の舞台裏について、じっくりと話を伺った。高梨さん本人が運営する「たかなしきっちん」は、2022年12月時点で、チャンネル登録者数が4万人以上。2020年4月以降、手間をかけずにおいしく作れる料理をはじめ、様々な動画を公開している。どれも食欲を刺激されるものばかりだ。
そんな「たかなしきっちん」の動画内でも使われている愛用の料理道具に対する考え方や、頭の中で思い描いている今後のチャンネル運営についても、じっくりと語ってもらった。
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料理の趣味をはじめてからは〝おいしいを因数分解する〟のが好き
――YouTubeチャンネルを開設された2020年は、コロナの影響でプロ野球の開幕が延期されたシーズンでした。同じ年の7月には現在所属している読売巨人軍(以下、巨人)にもトレードで移籍されましたが、やはり料理のことを考えて、スーパーの近いところに引っ越されたのですか?
実はトレードで移籍してきた1年目は、巨人の寮にいたんですよ。シーズン途中での移籍ということもあり、野球をしながら家を探すとかムリだと思ったので。20歳くらいの若手選手たちに交じって、寮のごはんを食べてました。寮のメニューでは肉野菜炒めがムッチャうまくて、そればかり食べていましたね。退寮する時に、作り方を聞いてくるのを忘れちゃったんですけど。
――料理の趣味を始めたのに寮の生活に逆戻りとは……。料理を作りたくなりませんでした?
常に料理のことは頭にありました。例えば、外出してごはんを食べに行っても「どういう風に作るのかな」「どうやって〝火入れ〟をしているんだろう」「何が入っているのかな」と。今でもそうですけど「なんでおいしいのかな」というのを考えるのが好きなので「おいしいを因数分解する」ようなことをしていました。
だから、フレンチのコース料理を食べに行くと、すごく疲れるんですよ。(料理から伝わってくる)情報量が多いじゃないですか。「出てくる料理の順番がすごくいい感じだなぁ」とか考えちゃって。だから、フレンチはあまり食べに行きません(笑)。
――お寿司に関しても、食べる順番みたいなものもありますよね。
そうそう。でも結局「わかりやすいのが好き」な一面もあって、ひと口目からおいしい方が、やっぱり惹かれます。だから、お寿司も最初からトップギアで来てほしくて。アジやサバといった光り物に続いて白身が出て……おなかがいっぱいになったところでウニが登場!みたいなことじゃなく、最初からトップギアで来てほしいと。おなかが空いたところで真っ先にウニやマグロを食べたいし、いきなり「とろたく」が来てもいいし。そんな感じですね。お寿司屋さんに怒られちゃうかな(苦笑)。
料理はギアを良くしていくよりも作る回数を増やしたほうがいい
――「たかなしきっちん」の話に戻りますが、動画ではいくつかの調理道具も登場しています。使っているものに対するこだわりはありますか?
料理に興味を持ち始めた頃に「いろんな道具があるんだなぁ~」ということを知りました。包丁の柄についてもわかるようになったりすると、いろいろ欲しくなっちゃって。それなりにいい包丁や鍋を買ったのは、その頃ですね。購入した道具の中でも鉄鍋が好きで、
コンロの火に当てるとガンガン熱くなるし、水分を入れた時に「バチッ!」とすぐに蒸発してくれますし。野菜炒めを作るとおいしいですよ。
――YouTubeで使われているヴェルダンの包丁も良さそうです。
包丁の切れ味は大事です。でも、例えば、なでるだけで紙が切れるような切れ味を、求めているわけじゃなくて。トマトがつぶれないで切れる程度であればいいかなと。料理人ではないので、そこそこ使えるもので全然問題ないんですよ。
それに、料理がある程度できるようになると、結局はギアを良くするよりも、作った回数の方がやっぱり大事だなと。だから、欲しい道具はだんだん減っていきましたね。それに、せっかく奮発して買っても、なかなか使わなかったりしますし。
――ちなみに、どんな道具を奮発して買ったんですか。
オーダーで作った包丁なんですけどね。まだ、一度も使ったことがないという(笑)。そういうことってありません? いい靴を買ったんだけど、なかなか履けないみたいな。
――いま欲しい道具をあえて挙げるとしたら?
真空パックにできる道具が欲しいですね。作った料理を鮮度よく保存しておきたいし、余った材料も(そのまま置いておくと)だんだん傷むじゃないですか。特にオフシーズンって、1日に1食は作るくらい、料理する機会が多いので。
――食材を買いすぎてしまった時にも便利ですよね。
そうそう。使いきれなくて、どんどん鮮度が落ちてしまうのが心苦しくて。ちゃんと保存して最後まで使い切りたいなと。
高梨さんが食材を大事にしていることは「たかなしきっちん」からも垣間見える。
YouTubeやSNSの反響には野球だけでは得られない学びも多い
――「たかなしキッチン」の動画はご自身で撮影しているんですか?
そうなんです。でも、料理しているシーンを撮影するって、かなり大変で……。いい画角を探ったり、カメラをその都度動かしたりしないといけないし。2022年のシーズン中は「ちょっとムリだな~」と思って、なかなか更新できませんでした。
なので、僕にいま一番必要なのはYouTubeのカメラマンなんですよ。撮りたい時、すぐに家まで来てくれるような。でも、そんな都合のいいカメラマンって、なかなか見つからなくて。だから今後は、カメラマンがいなくても大丈夫な動画の形態にしようと。
具体的には、これまでのようにカメラのアングルを変えながら料理の一部始終を追うのではなく、例えば、カメラのアングルを固定したままテーブルの上にはコンロを置いて、煮込み料理を作りながら僕がコンコンとしゃべるという。どちらかと言えば、料理メインというよりも、しゃべりメインという方向にシフトしていきたい感じです。
――これまでにない形式ですね。いつ頃から始める予定ですか?
すでに構想は固まったので、今オフからでも始めようかと。そもそもYouTubeを始めたのは、料理を題材にして野球とは違う畑の人に(自分のことを)認知してもらえそうだし、料理を媒介していろんな人とコミュニケーションが取れたらいいなぁ~ということがありましたから。「この料理を作りました!」という動画を、いつまでもアップしていても、あまりおもしろくないかなと。そういうことを今年1年間考えながら、野球をやっていた感じですね。
――プロ野球のシーズン中に考えていたんですか!
僕は全然フツーに、野球をやりながらでも、そういうことをメッチャ考えるので。「たかなしきっちん」をなかなか更新できていなかったというのもあって、しゃべりメインのスタイルなら定期的に動画をアップしていけそうだし。実現可能な方法でやるという感じです。だから「たかなしきっちん」に新しい動画がアップされて、煮込み料理を作りながら僕がコンコンとしゃべりだしたら「この間のインタビューで答えていた動画だ!」と思ってください。
――チャンネルを開設して始めての動画を公開してから2年半以上たった「たかなしきっちん」は、高梨さんにとってどんな存在ですか。
YouTubeを撮る時に、いい道具を使いすぎると〝嫉妬の目〟というのが気になるところでして。先ほど話した包丁も鍋も、高級すぎないものを使っていて、奮発するのは調味料くらい。まぁ、1000円とか1500円とかの話ですけどね。
YouTubeはもちろん、SNSに料理や食材のことをアップした時に「あ、こういう反応が来るんだな」という、自分の中で学びみたいなものがメッチャあるんですよ。野球以外のことも発信できるというのは、2倍も3倍も学ぶことがあって、いいなと。世間はこういう受け取り方するんだって、すごく勉強になります。
次回は、2021年シーズンから東京ドーム内で販売されている「たかなしきっちん」プロデュースグルメの開発秘話についてお聞きします。お楽しみに!
読売巨人軍
高梨雄平投手
1992年7月13日生まれ。左投げ左打ち。川越東高、早稲田大、JX-ENEOSを経て、2016年のドラフト9位で東北楽天ゴールデンイーグルスに入団。2017年に初勝利を挙げ、2018年は自己最多の70試合に登板。2020年7月14日に交換トレードで読売巨人軍へ。ユニークで理にかなった発想で考案された斬新なトレーニング方法も、たびたび話題に。プライベートでは、2022年11月にテレビ番組で結婚を発表したばかり。
Twitter
@yuhei_takanashi
YouTube「たかなしきっちん」
https://www.youtube.com/@user-es4pq5db2t/featured
取材・文/田尻 健二郎
撮影/湯浅立志(Y2)
取材協力/読売巨人軍