[〝趣味活〟万歳!読売巨人軍・高梨雄平さんの料理道①]
プロ野球・読売巨人軍の中継ぎ左腕・高梨雄平さん。2022年シーズンは59試合に登板し、防御率2.14という高い安定感を誇り、キャリアハイとなる25ホールド&27ホールドポイントを記録。読売巨人軍にトレードで入団して3年間、継続して活躍してきたことが評価され、今オフの契約更改により、1億円プレイヤーの仲間入りを果たした。
そんな高梨さんは料理好きとして知られており、YouTubeチャンネル「たかなしキッチン」を運営していることでも有名だ。そこで、料理にハマったきっかけをはじめ、YouTubeチャンネルの新展開、東京ドームで販売されているコラボメニュー製作の舞台裏などについて独占取材! 全3回の記事にわたって、たっぷりと紹介しよう。
ひとり暮らしを始めたのはスーパーが近い〝自炊前提〟の住まい
――高梨さんが料理を始められたきっかけは?
楽天(東北楽天ゴールデンイーグルス)に入団して、ひとり暮らしをするようになってからです。それまでは全くやったことがありません。大学生、社会人の時代は寮生活を送っていて、そこで出されるごはんを食べていましたからね。
もちろん、寮から外に食べに行くこともありました。お酒も好きなので。社会人の時には、お給料の範囲内で行きつけのお店に行ったり行かなかったり……といった感じで。
――全く料理をしてこなかったのに、どんな心境の変化があったのですか?
自炊した方が、なんかエコだな、と思って。うーん、エコというよりは経済的というか。毎日外食するよりも、例えば、週の半分を自炊して、その分、浮いた予算を外食に回せば、ちょっとおいしいものが食べられますし。まぁ、テレビ番組とかだと「モテたいんで(料理を)始めました」という言い方もしていますけどね(笑)。
――自炊ということは、スーパーで買い物をするって感じですか?
そうですね。楽天に入団して仙台でひとり暮らしする時に「とにかくスーパーが近いことが条件!」という感じで、マンションを選びました。
――最初から自炊する気が満々だったんですね! ちなみに料理を始めた当初は、どんな食事を作っていたんですか?
卵焼きとか、うどんとか。最初は本当にそういうレベルです。
――寮で出されていた食事は、栄養バランスを考えて作られていたと思います。自炊をするに当たって、そのあたりのことをどのように気を付けるようにしたんですか?
具体的に何を何グラムとか、栄養士さんみたいに細かく計算はしないんですけど。「糖質」「脂質」「タンパク質」「ビタミン」といった栄養素が、だいたいどのくらい摂取できそうだから「コレ食べておけば大丈夫」みたいな物差しが、ザックリと自分の中にあって。そこから大きく外れなければ何を食べてもいいという感じですね。
正直、栄養素だけのことでいえば、タンパク質も野菜も摂れることを考えると、とりあえず鍋を作ればいいんですけど、それじゃあ、おもしろくないし。まぁ鍋は鍋で、いろいろな食材を入れて作るおもしろさもあるんですが「鍋だけじゃなくていろんな料理を作ってみたい」という欲ですね。せっかく自炊するなら……という。
料理はコミュニケーションツールであり、効率の良さを考える頭のトレーニングでもある
――どんなものを参考にして料理を作っているんですか?
何でもチェックしますよ。ネットもSNSも本も。特に最初のうちは、基本的に自分で何もかも考えるというよりかは、おいしそうなレシピを作ってみて「これ、もらい!」みたいな。あとは、そこにちょっと(食材を)足したり引いたりと、アレンジをしていった感じです。人の技術をマネして習得していくところは、野球と同じような気がします。
基本的には料理のプロが公開しているものを参考にしています。プロが完成させた料理を作れば、間違いないですし。それで、自分で料理してみると「おいしい」と納得するだけじゃなくて「この人のレシピ、メッチャ作りやすい!」って感じることもありますね。
その「作りやすい」というのは、とても大事。手間のかかりすぎるレシピに時間を割いていられないことも多いですし。でも、逆に手間が掛からなすぎる料理もおもしろくない。そのあたりのバランスがいいレシピは好きです。
――料理を始めた当初に「これはうまい!」と自画自賛した料理はありますか?
自画自賛!? なんだろうなぁ~。そういえば、僕がよく行っていた仙台のお店で「白身魚の香草焼き」みたいなものを出して頂いたんですが、自分で料理する際には、それ(魚)を鶏肉で作ってみたんですよ。食パンを削って作った生パン粉といっしょにハーブを鶏肉にまぶして、それを揚げ焼きみたいにして食べるという。「メッチャうまいな、コレ!」みたいな。
――聞いているだけで食欲をそそられます!
家で作ってすぐに食べる料理って、当然ながら出来立てじゃないですか。特に、生パン粉なんて削り立てで、一番おいしいタイミングで食べられますし。まぁ、手間がかかるので、最近はほとんど作りませんけどね(苦笑)。
――そういった成功体験があると、モチベーションは上がりますよね?
自分で作って食べるのもいいんですけど、モチベーションということでいえば、自分の作ったものをほかの人に食べてもらったり、いっしょに料理をしたりするほうが楽しいですよ。僕の中の位置付け的に、料理はコミュニケーションツールの一環みたいなところもあるので。
――ほかの人に食べてもらうということなら、YouTubeチャンネルの「たかなしきっちん」では『もしも岸選手が家に遊びに来たら?』みたいな動画も公開していますよね。
あれは、ネタですよ(笑)。実際に食べてもらったわけじゃないんで。でも、楽天時代には、仲のいい友達とか選手とかを呼ぶことはしていましたね。さすがに、料理を始めたその当時に比べれば、今の方がおいしいものを提供できると思いますけどね。
――ちなみに、コミュニケーションツールとして役立つだけでなく、料理を始めたことが、野球にどんな影響を与えていますか?
何事においても「効率良く」というのが好きで「どうやってやったらムダなく、3~4品を作れるだろうか」みたいなことを考えながら料理をします。そういう思考をする練習には、なっているんじゃないですかね。大義名分みたいなことで言えば(笑)。
あとはまぁ、普通にストレス発散の意味合いもあります。それも含めて、いろんないい影響があるんじゃないですかね。それで野球がうまくなるというのはないんですけど。
野球選手って、趣味を作りにくいんですよ。まとまった時間がなかなか取れないことも多くて。例えば「趣味がアウトドアで、思い立ったらすぐにキャンプ場へ行く」ってことも、野球選手だと難しいですから。あまりにも疲れる趣味も、なかなかできないし。その点、料理は(野球選手にとって)趣味にしやすいと思います。
――でも、高梨さんのように料理をしている様子をYouTubeチャンネルに公開するような野球選手って、なかなかいないですよね。
ほぼみんな、料理しないですよ! もちろん、料理が好きな選手は、ほかの球団も含めて、チームに何人かいたりとかはすると思いますけど。僕の場合は、今在籍している球団のマーケティングが、特にスゴかったというか。僕の思った以上に、レバレッジが効いている感じなので、本日もこうして取材をお受けしているわけで。これはこれで「おいしいなぁ」と思っているんですけどね。
次回は、YouTubeチャンネル「たかなしキッチン」の舞台裏とともに、構想している今後の展開についてお聞きします。おたのしみに。
読売巨人軍
高梨雄平投手
1992年7月13日生まれ。左投げ左打ち。川越東高、早稲田大、JX-ENEOSを経て、2016年のドラフト9位で東北楽天ゴールデンイーグルスに入団。2017年に初勝利を挙げ、2018年は自己最多の70試合に登板。2020年7月14日に交換トレードで読売巨人軍へ。ユニークで理にかなった発想で考案された斬新なトレーニング方法も、たびたび話題に。プライベートでは、2022年11月にテレビ番組で結婚を発表したばかり。
Twitter
@yuhei_takanashi
YouTube「たかなしきっちん」
https://www.youtube.com/@user-es4pq5db2t/featured
取材・文/田尻 健二郎
撮影/湯浅立志(Y2)
取材協力/読売巨人軍