2022年5月27日に公開がスタートして以来〝胸熱〟という高評価コメントがSNSなどで拡散し、大ヒットを記録した映画『トップガン マーヴェリック』。日本国内における累計興行収入は130億円を突破し、2022年に日本で上映された実写映画におけるNo.1のヒットに。「2022 小学館 DIMEトレンド大賞」の読者投票でも多くの支持を獲得し、エンタメ・カルチャー部門の金賞に決定した。そのことについて、当編集部では、本作で翻訳を担当した戸田奈津子さんにご報告。翻訳へのこだわりとともに、長年付き合いのある主演トム・クルーズさんの魅力などについて話を聞いた。
最初に公開するのは絶対に映画館!大ヒットに結実したトム・クルーズの信念
――小学館 DIMEトレンド大賞のエンタメ・カルチャー部門における金賞を受賞されまして、おめでとうございます!
いや、私は別に、お祝いを受ける筋合いはないんですけど(苦笑)。トムも喜ぶと思いますので、すぐに伝えておきます。
爆発的に当たったのは、みなさんご承知のことだと思いますけど『トップガン マーヴェリック』はリピーターがすごいでしょ? すいぶん長いこと映画の仕事をしていますけど、これだけリピーターが多くて、しかもこの作品に限っては「見たけどつまらなかった」っていう人に、ひとりも出会っていませんね。たいてい、どんな映画でもケチをつける人がいるのに。『トップガン マーヴェリック』はとても楽しい映画だし、仕事で何回も見ますけど、全然飽きないというか。見るたびに興奮していました。
――今作を何回も見ることは〝追いトップガン〟と呼ばれていますけど、戸田さんもそうなんですね。
いや、私は仕事ですから! そういうのとはちょっと違って。最初に見た映像というのは音楽もなければ、色も付いていません。いわゆるセリフと合わせながら各シーンをチェックしていく感じなので(観客の方のように)ワ~ッと見るのとは違います。
そこからだんだん映画が出来上がっていって、最後には字幕の入った映像がちゃんとスクリーンに出るわけですけど。それまでの過程はずいぶん長かったです。
――当初、2020年7月10日に公開予定だったものの、コロナ禍によって延期となり、実際に公開されたのは2022年5月27日。上映までに2年くらいかかりました。
そう。すごく長くて。出来上がった時にコロナが始まっちゃって、映画館が閉まっちゃったでしょ? それで上映できなくなりましたよね。そういう時点でフィルムが私のところに来て、初期作業は進めていたんです。でも、それから先の作業ができなくなっちゃったんで。字幕が付いたまま、2年くらい棚でホコリを被っていたんです。
その間にトムはね、今のような時代ですから「(作品を)配信に出せ」というすごくプレッシャーがあって。でも、彼は絶対に首を縦に振らなかったんです。「これは大画面で見せないと真価がわからない」と本当に頑なに固辞して。それで公開したら、この大ヒットでしょ? 日本のみならず、世界中で大ヒットですから。本当にトムの信念が報われたので、私も本当に喜んでいます。
それと、この映画の公開に後押しされて、映画館にお客さんが戻ってきたわけですよ。多くのみなさまが『トップガン マーヴェリック』を見て大画面の良さを改めてわかってくれたのは、映画界全体に対して、ものすごい功績だったと思います。これはすごいことですよね。
――1986年に公開された前作の『トップガン』もヒットしましたし。
あの頃とは、映画の置かれている立ち位置が違います。当時、映画はかなりポピュラーで、みんなが娯楽として楽しんでいたでしょ?
――今の時代は映画以外にも様々な娯楽がありますからね。
特に今はコロナの影響もあって、お客さんが映画館から遠のいてしまったでしょ?状況が全然違いますから。今回の方がインパクトはかなり大きかったと思いますよ。