COVID-19感染で肝臓にダメージ?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染後の人に、肝臓がダメージを受けている兆候が認められるとする、比較的小規模な研究の結果が、北米放射線学会(RSNA 2022、2022年11月27~12月1日、米シカゴ/バーチャル開催)で発表された。
米マサチューセッツ総合病院のTheodore Pierce氏らが、超音波エラストグラフィという画像検査により肝臓の硬さ(肝硬度)を測定し、COVID-19非感染者と比較した結果、明らかになった。
Pierce氏によると、COVID-19の感染によって、脳や腸、肝臓などのさまざまな臓器に炎症とダメージが生ずることが報告されているという。
同氏らは、これらのうち特に肝臓への影響に焦点を当て、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)検査陽性の記録のある人と、その記録のない人の肝硬度を比較するという後方視的研究を行なった。
SARS-CoV-2陽性群(症例群)は、エラストグラフィ検査を受ける12週間以上前に陽性判定を受けていた31人。
対照群は2群設定され、1群はCOVID-19パンデミック発生後にエラストグラフィ検査を受けていたSARS-CoV-2陰性者50人(パンデミック対照群)で、別の1群はパンデミック発生以前に同検査を受けていた50人(パンデミック前対照群)。
平均年齢は、上記の順に、53.1歳、55.2歳、58.2歳であり、全体で67人が女性だった。なお、症例群はPCR陽性判定から平均44週後にエラストグラフィ検査が施行されていた。
年齢、性別などを調整後、症例群の肝硬度は中央値7.68kPaであり、パンデミック対照群は同5.99kPaであって、症例群の方が有意に高いことが示された。
ただ、意外なことに、パンデミック前対照群も同7.01kPaと高値だった。この理由について研究者らは「不明」とした上で、パンデミックの影響で、プライマリケア医から専門医療機関に紹介される患者層が変化した可能性があるとしている。
例えば、前述のように、パンデミック前対照群はパンデミック対照群より高齢だった。
肝硬度は、肝臓の線維化の進行を反映して上昇する指標であり、肝臓のダメージを表している。
一般に肝臓の線維化は徐々に進行して肝機能を低下させ、肝不全や肝がんのリスクを高める。
ただし、今回明らかになった結果についてPierce氏は、「COVID-19パンデミックが発生してからまだ数年しかたっていないため、肝硬度の変化を長期間追跡した研究は存在しない。そのため、COVID-19感染によって引き起こされた肝臓のダメージが、永続的なものなのか否かを判断するには時期尚早である」と述べ、今後の研究課題としている。
同氏はまた別の研究課題として、何らかの肝疾患がある場合に、COVID-19罹患によってその進行が加速されるのか確認することを挙げている。
「例えば、米国では約1億人の成人が脂肪肝の状態にあり、肝不全に至る原因として最も一般的なものになりつつある」と述べ、COVID-19感染がそのような人の肝線維化に対して相加的に働く可能性の検証が必要と指摘している。
研究グループでは、今後もCOVID-19感染後の人の肝臓の状態を追跡調査することを計画している。
COVID-19罹患時の重症度が、その後の肝硬度の進行を左右するのかといった疑問の答えを探ることも、研究テーマの一つだという。
Pierce氏は今回の研究の結果を、「COVID-19感染と肝硬度の関連が偶然とは考えられないが、われわれのデータは暫定的なものであり、人々が過剰に反応する必要はない」と総括している。
米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン医療センターのMarc Siegel氏も、Pierce氏の考え方に同意。「報告された研究は、肝臓への影響が慢性的なものか否かを含め、詳細な結論を引き出すのに十分な規模ではない。ただ、少なくともこの研究の対象とされた年齢層では、COVID-19感染が肝臓に影響を与える可能性があるという懸念を示すものであり、既に報告されている研究結果と一致している」とSiegel氏は述べている。
なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2022年12月1日)
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(参考情報)
Press Release
https://press.rsna.org/timssnet/media/pressreleases/14_pr_target.cfm?id=2389
構成/DIME編集部