日本のオーディオブランドとして、様々な価格帯にイヤホン、ヘッドホンを展開する「final」。自社で音響心理学といった研究を行いながら、原音に忠実な音作りを特徴とする、多くのオーディオファンに愛されているブランドです。
そんなfinalは、2022年12月16日に、完全ワイヤレスイヤホン「ZE8000」を発売。店頭での販売価格は3万6800円を予定しています。
完全ワイヤレスイヤホンの中では、少し値が張る印象を受けるかもしれませんが、そもそもfinalの「8000」というナンバリングは、有線イヤホンやヘッドホンシリーズでもフラッグシップモデルにつけられる数字となっており、有線イヤホンの「A8000」は19万8000円、ヘッドホンの「D8000」は39万5190円であることを踏まえると、かなり手を出しやすい製品。株式会社final 代表取締役社長の細尾満氏も、「本当の意味での代表作」と太鼓判を押す、注目の製品となっています。
そこで、メディア向けに開催されたZE8000の説明会の様子や、実際に数日間ZE8000を使用して感じたおすすめポイントをご紹介します。
どの帯域に耳をすませても高精細が楽しめる! こだわり抜かれた「8K SOUND」の魅力
ZE8000の最たる特徴は、なんといっても音質。final自身が基礎研究によって発見した新しい物理特性を用いることで、情報量の多く、精細なサウンドが再現できるようになっています。ちなみに、この新しい物理特性は、別途論文を提出予定とのことです。
finalは、この高精細な音を、高解像度な8K映像に由来し、「8K SOUND」と命名。細部まで細かく描画される8K映像のように、8K SOUNDでは、低音域から高音域まで、どの帯域においても、圧倒的な情報量を持って再現できるとしています。
そもそもイヤホンやヘッドホンといった製品は、内蔵するパーツやチューニングから、「低音特化」「高音特化」といったように、特定の帯域に強みを持つのが通例。しかし、8K SOUNDに対応したZE8000であれば、どの帯域に耳をすませても、精細な音が楽しめるのが特徴となっています。
実際に試してみると、finalが太鼓判を押す意味が良くわかる、高精細な音が体感できます。全体的な音質としては、整理整頓された音が小気味よく耳に入ってくるようなバランスの良さが特徴的ですが、深く耳を傾けると、「この音も聞こえる、あの楽器の音も聞こえる」といったように、細かな音まで楽しめるようになっています。
細部まで歪みの少ない音の再生ができるため、長時間音楽を聴いていても、耳にストレスがたまらないのも魅力的。精細な音の表現ができるため、動画視聴といったコンテンツの再生も、十分な臨場感を持って行えますが、個人的にはやはり様々な楽器や声の音が聞こえる音楽を再生するのがおすすめです。
独特な形状の本体は耳にピタッとはまる! 大き目の充電ケースにも理由が!?
イヤホン本体は、耳に装着する部分が2段階に飛び出したような、特徴的なデザインを採用。これは、どんな人の耳にも合うように、イヤーピースを装着する部分は小さくするため、ドライバーユニットを分離して格納したためとのこと。内蔵されているドライバーユニットは、ZE8000のために開発された「f-CORE for 8K SOUND」というもので、精度の高さや歪みの少なさが特徴となっています。
イヤホン本体を耳に装着する際には、スティック部分を軽くひねることで、耳の穴にピタッとフィットするのが特徴。圧迫感があるので、装着済みのものを含めて計5サイズのイヤーピースから、最適なサイズのものを装着するのがおすすめです。
スティック部分にはタッチセンサーが内蔵されており、音楽の再生、一時停止や音量の調節が行えます。タッチでのコントロール自体は便利ですが、イヤホンを着け外しする際に誤操作を起こしてしまうのが、少々気になっています。
イヤホン本体や充電ケースには、シボ塗装がなされており、サラッとした手触りが特徴。カラーバリエーションは、ホワイトとブラックの2色展開となります。
充電ケースは、近年の完全ワイヤレスイヤホンとしては大きめながら、ワイヤレス充電にも非対応。サイズが大きくなった理由として、今後展開予定の「カスタムイヤーピース」を装着した際にも、イヤホン本体をケースに格納できるように配慮したためとのことです。サイズは気になるところですが、スライドタイプの蓋は簡単に開け閉めできるので、利便性に問題はないでしょう。
finalの完全ワイヤレスイヤホン初のANC(アクティブノイズキャンセリング)対応! 専用アプリの新登場
ZE8000は、finalの完全ワイヤレスイヤホンとして初めて、ANC機能を搭載しているのも特徴。ZE8000の強みである音質に影響を与えないよう、圧迫感や音のぼやけた感覚が低減されるように設計されています。
実際に使用していても、音質への影響はあまりなく、しっかりとノイズを低減できていることが実感できます。ノイズの除去レベルが極端に高いわけではありませんが、電車内など騒音の大きい場所でも、周囲を気にせずに音楽に集中できるのは好印象です。
また、周囲の音を聞きたい人向けに、2種類の外音取り込みモードが搭載されているのもポイント。「ながら聞き」モードでは、音楽を聴きながら周囲の音を取り込み、「ボイススルー」モードでは、音楽の音量を下げて、周囲の音をしっかりと聞くことができます。
ZE8000のリリースと同時に、専用アプリ「final CONNECT」がリリースされているのも、目を離せないポイント。アプリでは、ノイズキャンセリングモードの切り替えやイコライザーの設定に加えて、「ボリュームステップ最適化」という機能が利用できます。
これは、普段よく音楽を再生する音量の周辺で、細かく再生音量の調整ができるように最適化する機能。finalとしても、「これまでなぜやらなかったのかといわれるほど素敵な機能」とのことで、試していても、再生デバイス(スマートフォンなど)の調節を超えた微調整が行えるため、より心地よい音量で音の再生が楽しめています。
執筆時点では試せていませんが、発売後のアップデートにより、アプリから「8K SOUND+」のオンオフが切り替えられるようになります。8K SOUND+は、演算能力を高めることで、より高音質になる再生モード。バッテリー駆動時間が短くなりますが、とにかく精細な音を聞きたいという人におすすめの機能となっています。
オーディオプライドのプライドを感じる超高精細フラッグシップ完全ワイヤレスイヤホン「ZE8000」
オーディオブランドらしく、高精細な音の再現や装着感にこだわって開発されたZE8000。8K SOUNDと銘打つ通り、全帯域の音が細やかに再生される音楽は、これまでの完全ワイヤレスイヤホンと一線を画すと感じるほど、魅力的な製品に仕上がっています。
近年は、アップルやサムスンといったスマートフォンメーカーからも完全ワイヤレスイヤホンが販売されていることもあり、スマートフォンと簡単に接続でき、アプリから様々なコントロールが行える、利便性が高い製品が増える傾向があります。
ZE8000は、ANC機能やタッチコントロール、専用アプリにも対応するなど、完全ワイヤレスイヤホンに求められる機能をしっかりとカバーしながら、音作りには、オーディオブランドとしてのプライドを感じるような、文句なしのフラッグシップモデル。冒頭でも触れた通り、finalの8000シリーズ内としては、かなり手を出しやすい価格に収まっているので、多くの人に一度8K SOUNDを体験してもらえればと感じています。
取材・文/佐藤文彦