東大、フランス国立研究所、MENSA(全人口の上位2%の知能指数を持つ人が入会できる国際グループ)などで世界のさまざまな「頭のいい人」を見てきた脳科学者・中野信子氏。そんな中野氏が「物忘れを防ぐ『検索タグ記憶法』」「『誰かのために』が脳に快感と若さをもたらす」「挫折がなくなる『やらないことリスト』の作り方」など、仕事や勉強、人生がうまくいく脳を活用した31の習慣を解説した著書が『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』です。
本稿ではこの本から一部を再編集、「世界で通用する、本当に賢い人たち」が実践している少し意識を変えるだけで、誰にでも今日からできるコツをお届けします。
中野信子著/アスコム
『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』
自尊心をくすぐることで相手は自分に好意を寄せる
フランス系ユダヤ人のAさんという女性がいます。大学院で音楽理論を学び、作曲家として活躍しています。
頭の回転がとても速い人で、人を飽きさせるということがありません。絶世の美女というタイプではありませんが、小柄で愛嬌があります。いつも楽しいことを探しているようなキラキラした瞳と、かわいらしい容姿とは対照的な低めのセクシーな声が彼女の魅力です。
音楽分野で活躍していくには、自分一人がいい作品を書くだけでは不十分。演奏家、プロデューサー、音響など、様々な人の協力を仰ぐ必要があるということは、私が指摘するまでもないことです。
そこでAさんは、自分が作曲家として技術を磨くだけでなく、周りにいる人の心をつかみ、虜にするための努力をひそかに続けています。
周りにいる人の心をつかんで味方にしていくというワザは、音楽分野に限らず、どんな仕事をする上でも役に立つスキルでしょう。ただ、役に立つことはわかっていても、そのためにはどうしたらいいのか、すぐには思いつかないものかもしれません。
Aさんが実行していたのは、相手の「自尊心」をうまくくすぐることでした。つまり彼女は、とても褒め上手だったのです。