東大、フランス国立研究所、MENSA(全人口の上位2%の知能指数を持つ人が入会できる国際グループ)などで世界のさまざまな「頭のいい人」を見てきた脳科学者・中野信子氏。そんな中野氏が「物忘れを防ぐ『検索タグ記憶法』」「『誰かのために』が脳に快感と若さをもたらす」「挫折がなくなる『やらないことリスト』の作り方」など、仕事や勉強、人生がうまくいく脳を活用した31の習慣を解説した著書が『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』です。
本稿ではこの本から一部を再編集、「世界で通用する、本当に賢い人たち」が実践している少し意識を変えるだけで、誰にでも今日からできるコツをお届けします。
中野信子著/アスコム
『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』
勉強や仕事の前にする儀式を決めておく
勉強するときに、いきなり始めても、なかなか調子が出ない……、ということも少なくないでしょう。
そんなときは、自分なりの簡単な「儀式」を行ってから、勉強を始めてみてください。この「儀式」を行うことによって、脳が勉強のための準備を始めるので、自然に効率が上がります。この儀式というのは、「やりたくないな……」という気持ちを心から追い払うための工夫なのです。
私の場合は、勉強や仕事(原稿を書くなど)の前に、サイフォンで美味しいコーヒーをいれることにしています。気分によっては、濃い目の紅茶にすることもあります。カフェインは目を覚ましてくれるし、適度にやる気を刺激してくれる効果があるからです。
また、ちょっと手間をかけてこうした準備をすることも、実は大事なことです。
ズルズルとニュースサイトを見続けてしまったり、あまり緊急でないメールのやりとりに時間を取られてしまうことをシャットアウトできますから。気持ちもリフレッシュできて、「さあ、やろう!」という心を整えられます。
5分だけ集中することでその後に何時間もできることも
芸能人初のMENSA(IQで上位2%に入る人だけのクラブ)メンバーとなったお笑い芸人・ロザンの宇治原史規さんに、テレビ収録の際にお会いしたことがあります(彼がMENSAのメンバーとなった試験に私も立ち会いました)。彼もやはり、京大受験生であった時代に、勉強を始める前の工夫をされていたようでした。
宇治原さんがやっていたのは、勉強机の整理整頓。つまり、勉強に関係ないモノを机の上から取り除くということ。ノート、参考書、問題集、時計、筆箱などを、決まったポジションにまず置くのです。
決まった儀式を行うと、「これから勉強が始まるぞ」ということが脳に伝わります。勉強を始めるためのスイッチをONにするんですね。
しかし、「儀式」を行っても、どうしてもやる気が出ないときもあるかもしれません。そんなときは、どういう工夫をしたらいいのでしょうか。
まず、ちょっとだけガマンして、5分間だけ集中してやってみることです。たった5分間だけ、ガマンして勉強や仕事を続けてみましょう。そうすると、脳は勝手に勉強モードや仕事モードに入ってくれて、そのまま30分でも1時間でも勉強や仕事を続けていくことができるのです。
人間というのは、勉強や作業など、面倒なことに対して、最初はやる気が起きないもの。それでも一度始めてしまうと、意外にすんなりと進めることができる性質を持っています。つまり、勉強を始める瞬間の、「やる気が起きない」気持ちを取り払うことが、一番大事なのです。
とはいっても、それでも勉強や仕事のモードに入れないこともあります。そのときは、自分でも気づかないような疲労が溜まっている場合がありますから、あきらめて少し横になったりしましょう。休むことが必要なときもありますから。
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脳のパフォーマンスは使い方や習慣次第で大きく変わります。「世界で通用する、本当に賢い人たち」が実践している『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』を参考に脳の上手な使い方を学んでビジネスに活用してみてはいかがでしょうか。
中野信子(なかの・のぶこ)
1975 年、東京都生まれ。脳科学者、医学博士、認知科学者。東京大学工学部応用化学科卒業。同大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。フランス国立研究所ニューロスピンに博士研究員として勤務後、帰国。脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行う。科学の視点から人間社会で起こりうる現象及び人物を読み解く語り口に定評がある。現在、東日本国際大学特任教授、京都芸術大学客員教授。著書に『脳はなんで気持ちいいことをやめられないの?』『人は、なぜ他人を許せないのか?』(アスコム)、『サイコパス』(文藝春秋)、『空気を読む脳』『ペルソナ脳に潜む闇』(講談社)、『キレる!』『「嫌いっ!」の運用』(小学館)など多数。また、テレビコメンテーターとしても活躍中。