こんにちは。
弁護士の林 孝匡です。
今回はニュースのザックリ解説です。
落とし穴に落ちて、腰椎骨折!
タレントの松本伊代さんが番組の企画で骨折しました。
労災は下りるのか?ってことなんですが、
特別加入していれば労災が下りますが、加入していなければ残念です…。
特別加入?何それ?
将来的にフリーランスになるかもしれない方は、特別加入のことを知っておいてください。
以下、ニュースの内容とともに解説します。
ニュースの内容
松本伊代さんが腰椎を骨折しました。
バラエティー番組「オオカミ少年」(TBS)の企画で、落とし穴に落下した際の骨折。
全治約3ヶ月とのこと。
労災は下りるのか?ってことですが、たぶん無念です。
ヒロミさんが「フザケンナよ!」と怒りそうですが、
労災の特別加入をしてなければ、伊代さんに労災は下りないんです。
労災って、原則として労働者だけが申請できるものだからです。
ザックリいえば【労働者 = 会社に雇用されている方】ってことです。
(業務委託の方も労働者になる可能性がありますが、話が長くなるので割愛します)
芸能人の方はほぼ労働者にあたらないので、労災申請ができないんです…。
特別加入制度
しかし、芸能人を含め、フリーランスの方に向けて特別加入制度が設けられています。
近年、加入できる対象が増えてきています。
2022.7
歯科技工士
2022.4
あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師
2021.9
自転車を使用して貨物運送事業を行う者
ITフリーランス
2021.4
芸能関係作業従事者
アニメーション制作作業従事者
柔道整復師
創業支援等措置に基づき事業を行う方
昔は、加入できる対象が絞られていたんですが、フリーランスになる方が右肩上がりで増えてきたため、厚生労働省は対象を拡大してます。
詳しくは労災保険への特別加入をご覧ください。
「将来、フリーランスになろうかな」と考えている方は特別加入のことを頭の片隅に置いておきましょう。
芸能人の方、この記事みてますか?
体を張る仕事が多い方は、特別加入しておいた方が良いと思います。
だって、熊とジャレ合う仕事とか怖いですよね。ヤツの機嫌が悪かったらガオーですもんね。
雇用されている方
フリーランスの方は特別加入が必要ですが、雇用されている方であれば、労災は下ります。
(業務上の災害と通勤上の災害という条件つきですが)
明らかに業務上の災害、通勤上の災害であれば労災は下りるんですが、ビミョーなケースは労基が「ん?」と止まることがあります。
▼ビミョーなケース
例えば、同僚とのケンカ・飲み会後の負傷・通常の経路じゃない方法で帰宅していた場合の負傷、などです。
■ 飲み会後の事故
○ 労災が下りたケース
大河原労基署長事件:仙台地裁 H9 .2 .25
× 労災が下りなかったケース
中央労基署長事件:東京地裁 H21.1.16
■ 通常の経路じゃない方法で帰宅
○ 労災が下りたケース
羽曳野労基署長事件:大阪地裁 H18.4.12
× 労災が下りなかったケース
札幌中央労基署長事件:札幌高裁 H元.5.8
ケースバイケースです。
まぁ労災が下りなくてもマイナスはないので、ダメモトで申請してみましょう。
もし、上司がオフィスに落とし穴を仕掛けてあなたが落下して骨折した場合は、労災が下りるでしょう。下りてもらわなければ困ります。ムカつくので損害賠償請求もしましょう。
労災が下りた場合には、こんな給付がもらえる可能性があります。
・療養補償給付
・休業補償給付
・障害補償給付
・遺族補償給付
・葬祭料
・傷病補償年金
・介護補償給付
・二次健康診断等給付
多くの方に関係するのは、療養補償給付と休業補償給付です。
■ 療養補償給付
ザックリいうと、無料で治療を受けることができます。
■ 休業補償給付
ザックリいうと、毎月、給料の80%をもらえます。
治癒するまでずっと(or 症状固定するまでずっと)
詳細については、労災保険給付の概要をご覧ください。
まとめ
今回は、労災の特別加入について解説しました。
会社に雇用されている方は、特に問題なく労災が下ります。
ただ、ビミョーなケースもあるので、その点は知っておいて下さい。
フリーランスの方や、将来フリーランスになりそうな方は、特別加入を検討してみて下さい。詳しくは労災保険への特別加入をご覧ください。
今回は以上です。
では、また次の記事でお会いしましょう!
取材・文/林 孝匡(弁護士)
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