「ソバーキュリアス」という言葉を耳にする機会が増え、日本でも愛飲する人が多くなってきたノンアルコール飲料。そこで今回はビールを中心とした国内外のノンアルコール飲をリストアップし、お酒のプロ・佐藤翔平さんとともにすべて試飲! その進化とおいしさを徹底調査した。
お酒のソムリエ 佐藤翔平さん
学生時代より5000種以上のビールをテイスティングし、すべて記録に残す。今年3月には初著書『うまいビールが飲みたい!』(リトル・モア)を刊行。
健康志向の高まりなどを背景に、ノンアルコールへの関心が高まっている。だが世界ではヨーロッパを中心に、かなり前からノンアルコールを楽しむ文化が浸透。そのため、現状では国内メーカーが製造するノンアルコール飲料と比較すると、海外メーカーに一日の長があるのは否定できない。
「海外では一度お酒として製造した後にアルコール成分だけを抜く製法が主流ですが、日本の場合は酒税法や設備投資の費用など様々な壁があります。そのため、香料などでビールの風味に近づける方法が大多数ですが、やはり脱・アルコール製法のほうがビールとしてはおいしいですね」
こう語るのはビアジャーナリストとして活躍する佐藤翔平さんだ。
だが国内メーカーでも年々ノンアルコール飲料を製造するうえでノウハウが蓄積されるようになり、国内メーカーでも脱・アルコール製法を採用する動きが見え始めた。
「かつて糖質ゼロビールでは、国内メーカーが切磋琢磨したことで全体のレベルがどんどん上がりました。それと同じように業界全体が一丸となって開発していく流れとなれば、日本のノンアルコール飲料も洗練されていくはずです」
多種多様な飲みごたえ!ビールテイスト
ノンアルコール需要の高まりを受け、国内メーカーのノンアルコールビールの種類も年々増えている。まだまだ発展途上な部分もあるが、佐藤さんいわく「数年前より格段においしくなっている」とのこと。今後どんどん味が良くなるのは間違いない。
〝最もビールに近い味〟を徹底追求
アサヒ『ドライゼロ』オープン価格(実勢価格約162円)、350ml
〝ドライな喉ごしとクリアな後味〟が特徴で、食事に合うすっきりした味わいが楽しめる。アルコール分だけではなくカロリーや糖質もゼロを実現し健康にも配慮した。
〈SATO’S Tasting〉
『アサヒスーパードライ』が好きな人は多いと思いますが、その良さが十分感じられる味わいと苦味を感じました。ビールらしさはどうしても抜けてしまいますが、味わいのバランスが取れています。
人工甘味料ゼロですっきりした味わい
アサヒ『ドライゼロフリー』オープン価格(実勢価格約162円)、350ml
『ドライ ゼロ』よりさらにすっきりクリアな味わいが特徴。カロリーや糖質に加え、プリン体や人工甘味料もゼロを実現し、より健康に気を使いたい人には最適なノンアルコール飲料に。
〈SATO’S Tasting〉
味わいはさっぱりしており、苦味がだいぶ抑えられています。ビールの苦味が好きな人は物足りなさを感じるかもしれませんが、普段あまりビールを飲まない人はスルスルと楽しめると思います。
麦芽100%で麦の旨味を引き出す
サッポロ『プレミアム アルコールフリー』オープン価格(実勢価格約146円)、350ml
水に溶かした麦芽を煮沸しながら徐々に麦芽糖をつくる〝デコクション法〟を採用。麦芽100%麦汁を使用し、苦味とコクを感じられる、ビールに近いしっかりとした飲みごたえを実現している。
〈SATO’S Tasting〉
甘味のある麦の香りが心地よく、酸味がかなり強いです。キレがとにかく際立っているので、苦味やコク、甘味の要素はかなり低めに採点しています。かなり好き嫌いが分かれるかもしれません。
キリン独自の〝一番搾り製法〟を初採用
キリン『キリン 零ICHI(ゼロイチ)』オープン価格(実勢価格約165円)、350ml
一番搾り麦汁だけを使ってつくる、キリン独自のビール製法〝一番搾り製法〟をノンアルコールで初採用。麦の旨味を丁寧に引き出すことで、よりビールに近い味わいを目指している。
〈SATO’S Tasting〉
ホップ由来だと思いますが、草を感じさせる香りが特徴的ですね。全体的におとなしめな印象を受けました。もう少し味に個性を出してもいいように感じますが、非常に飲みやすい仕上がりです。
麦芽やホップなどビールと同じ原材料にこだわり
サントリー『オールフリー』オープン価格(実勢価格約150円)、350ml
粒選り麦芽100%仕込、アロマホップ100%使用、天然水100%仕込と、ビールと同じ原料を使用。〝飲みごたえ〟と〝すっきりした後味〟を追求し、爽快な飲み口を実現している。
〈SATO’S Tasting〉
今回試飲した国産メーカーのノンアルコールビールの中では、特にホップの香りがきれいに表現されていました。希少ホップを使用するなど、ホップにかなりこだわりを見せているようですね。
世界的にも珍しいノンアルクラフトビール!
ブラバス『ブラバスノンアルコール IPA』オープン価格(実勢価格約507円)、355ml
アメリカ初のノンアルコールクラフトビール専門のブルワリーが醸造。クラフトビールのおいしさをそのままに、アルコール分だけを0.5%にする製法を採用。専門家からも高い評価を受ける。
〈SATO’S Tasting〉
IPA(ホップを大量に使用してつくられるビール)をノンアルコールで作っているのは世界的にも稀。ホップの華やかな香りが表現されており、甘味と苦味、味の強さやコクがすべてつながっています。
世界トップの小麦ビールメーカーが製造
エルディンガー『エルディンガー アルコールフリー』オープン価格(実勢価格約225円)、330ml
ドイツビールファンにはおなじみ、トップクラスの小麦ビールブランド「エルディンガー社」が製造。ビールと同じ原料・製造工程を経ているため、洗練された味わいと風味が感じられる。
〈SATO’S Tasting〉
エルディンガーらしい、小麦の芳醇な香りが特徴。人によっては穀物の香りが強いと感じる人もいるかもしれませんが、変化球を楽しむ分にはおいしいノンアルコールビールだと思います。
画期的製法でビール本来の味わいを表現
ネオブュル『ビア・デザミー0.0』オープン価格(実勢価格約675円)、330ml
ビールからアルコール分のみを除去した減圧蒸留の製法を採用。真空状態のまま40°C以下でアルコールを取り除くことにより、ビール本来の香りや味わいを損なうことなく仕上がっている。
〈SATO’S Tasting〉
柑橘系やエール系のような爽やかな香りが特徴で、コクのある味わいを強く感じました。ベルギー産ビール本来の旨味もしっかり感じられ、バランスの良さが光るノンアルコールビールです。
バドワイザー『バドワイザー ゼロ』オープン価格(実勢価格約142円)、350ml
バドワイザーからアルコール分を除去し、熟成時にビーチウッド(ぶなの木)を入れる伝統の製法を採用。こだわりの製法によって甘味と洗練された心地よい喉ごしを実現している。
〈SATO’S Tasting〉
しっかり炭酸感があり、ビールらしさが表現されています。喉ごしを楽しむにはすごくおすすめですね。香りが落ち着いていますが、ノンアルコール特有のクセもないのでスルスルと飲めます。
オレンジとコリアンダーの神配合
ヒューガルデン『ヒューガルデン ゼロ』オープン価格(実勢価格約308円)、350ml
オレンジピールとコリアンダーシードの絶妙な組み合わせにより、自然な苦味と清涼感を実現。フルーティーな味わいは、どんな食事とも相性がいい。普段ビールを飲まない人にもおすすめ。
〈SATO’S Tasting〉
泡がクリーミーで、ビールらしさが高評価。ヒューガルデン特有の柑橘とスパイスの香りがとても心地よく感じました。飲んだ後に甘味を強く感じるので、その点は好みが分かれそうです。
ベトナムの国民的ノンアルブランド
サゴタ『サゴタ ノンアルコール』オープン価格(実勢価格約95円)、330ml
ベトナムNo.1ブランドのノンアルコールで、カルディコーヒーファームなどで取り扱っている。苦味はまろやかでほんのり甘く、口当たり爽やかで飲みやすい。
〈SATO’S Tasting〉
ベトナムビールらしい草っぽさや大豆っぽい味わいを感じました。キレがあるというよりかは、全体的に味がやさしい印象。味のバランスが日本のノンアルコールビールによく似ています。
シンプルな原材料で雑味のない味わいに
プライムセレクト『ヴェリタスブロイ』オープン価格(実勢価格約116円)、330ml
老舗ブルワリーがつくるクラフトビール「プレミアムピルスナー」から、最先端技術でアルコールだけを除去。原料はプレミアムモルト、ファインホップ、ビール酵母と天然水のみを使用。
〈SATO’S Tasting〉
こちらもカルディコーヒーファームで取り扱いがあるようですが、ドイツ産ながらもアサヒ『ドライゼロ』と味わいが似ています。水のようにスルッと飲めるので、スポーツの後などにいいかも。
取材・文/高山 惠
※本記事内に記載されている商品やサービスの価格は2022年10月31日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。