人の性格や行動を批判するための言葉は多いが、時には「卑怯」や「不道徳」といった短い言葉では言い表せない不快な言動に直面する場合がある。
「風上にも置けない」は、そんな時に使える言葉の一つだ。しかし、相手への悪口ということは見当がついても、どのような意味なのか、なぜ風上なのかはよく知らないという人も多いだろう。
そこで本記事では「風上にも置けない」の意味と由来、言葉の使い方や類語・対義語・誤用例について解説する。
「風上にも置けない」とはどんな意味?由来は?
時代劇や時代小説などに登場し、少し昔の言葉という印象がある「風上にも置けない」。まずは言葉の意味と由来をチェックしよう。
「風上にも置けない」の読み方と意味
「風上にも置けない」の読み方は、「かざかみにもおけない」。卑怯で道徳心に欠ける人間を罵る言葉で、相手の言動や倫理観を批判すると同時に、「自分たちと同じ仲間としては認められない」というコミュニティからの疎外を宣言する意味も込められている点が特徴だ。
「風上にも置けない」の言葉の由来。なぜ風上には置けないのか?
風上(かざかみ)とは、風の吹いてくる方向を指す。臭いものを風上に置くと広い範囲に臭気が漂ってくることから、周囲に不快な影響を及ぼす人間、特に言動が倫理・道徳的に問題のある人間を罵る意味として使われることが多い。
「風上にも置けない」の正しい使い方は?
道徳心のない相手を非難する「風上にも置けない」という言葉。具体的にどのような場面で使われるのか、詳しい使い方や類語・対義語・気をつけたい誤用例などを見ていこう。
「風上にも置けない」を使った例文
日常的な会話や文章で「風上にも置けない」を使う場合は、前の部分に「〇〇の」と、相手が属している集団や組織・コミュニティ等を加え、そこからの疎外を宣言するケースが多い。
また、文の前に「~とは」の修飾詞をつけ、どのような理由で非難されているかの根拠を示す場合もある。
・「困っている人を見捨てるとは、人間の風上にも置けない」
・「あの先生は医療事故が多く、何度も訴訟を起こされている。医者の風上にも置けないね」
・「赤ん坊を虐待するとは、親の風上にも置けない夫婦だ」
・「金に目がくらんで主君を裏切るとは、武士の風上にも置けぬやつ」
「風上にも置けない」の類語・対義語は?
ここまで見てきたように、「風上にも置けない」は、相手の不道徳を責める意味と、コミュニティからの疎外を示す意味の両方を持っており、これを兼ね備えている類語や対義語の種類は多くない。
ただし、相手の倫理観や道徳心のなさを非難する場合は、類語として「卑怯な」「卑劣な」「道理にそむく」「モラルがない」「悪辣な」「非道徳的な」などが挙げられる。
また、対義語としては、「道徳心がある」「清く正しい」「気高い」「高潔な」「人道的な」「道義心の強い」「正義感のある」などが該当するだろう。
「風下にも置けない」は誤り
風下(かざしも)とは、風が流れていく方向であり、臭いものを風下に置いても実害はない。相手を非難する言葉として意味を成さなくなるので、「風下にも置けない」は誤りだ。
言葉の由来を理解していれば、まず間違えることはないが、意味を知らないと「風上」か「風下」かがあやふやになる場合もあるので注意しよう。
「隅に置けない」「気の置けない」との混同にも注意
「風上にも置けない」に似た言葉との混同にも注意が必要だ。
「隅(すみ)に置けない」とは、相手がこちらの予想よりも知識・才能・技量があって侮れない様子を指す慣用句。「馬鹿にできない」という良い意味と、「油断できない」「抜け目がない」という悪い意味の両方で使われる。
「気の置けない」とは、相手に対して気づまりや遠慮を感じない状態を指す慣用句。「気の置けない間柄」などのように親しみを込めた表現として使われる。
どちらも「風上にも置けない」とは「置けない」の部分が同じだが、意味はまったく異なるため混じらないようにしよう。
文/編集部