小説やドラマなどで目にすることも多い「手懐ける」という言葉。しかし、日常生活ではあまり使われないことから、意味や使い方が曖昧な方も多いのではないだろうか。
そこで本記事では、馴染みがあるようで、実は正しく使えていないかもしれない「手懐ける」の意味と言葉の使い方を解説する。また、併せて紹介する「手懐ける」と似た意味を持つ言い換え表現もチェックして、表現の幅を広げてほしい。
「手懐ける」の読み方や意味
まずは、「手懐ける」の読み方や意味を確認していこう。「手懐ける」は使われる対象によって2通りの意味が存在するため、適切に使い分けられるようにしておきたい。
「手懐ける」の読み方
「手懐ける」は「てなずける」と読む。「懐」という漢字だけを見ると、まず「懐かしい(なつかしい)」という言葉を思い浮かべる方も多いかもしれないが、「懐」という漢字は「なつく」「なつける」と読むこともできる。
「手懐ける」の振り仮名については、「てなずける」と「てなづける」の表記があるが、「ず」が現代仮名遣い、「づ」が歴史的仮名遣いとされており、一般的には「てなずける」の方を使うことが多い。
「手懐ける」の意味・使い方
「手懐ける」には、以下の2つの意味がある。
1.動物などをなつくようにする
2.面倒をよくみるなどして味方に引き入れる
1.は人間以外の動物に使う場合、2.は人物を対象として使用した場合の意味となる。
具体的な使い方は、動物を対象とした場合「彼女は獰猛な犬を簡単に手懐けてしまった」のように使うことができる。人物を対象として使用する際は「彼は弟を手懐けて得をしようとしている」のように使える。
「手懐ける」の類義語は?
次に「手懐ける」の類義語を見ていこう。2通りの意味について、それぞれ似た意味を持つ表現を紹介していく。
動物を対象に使う場合
動物をなつかせるという意味で使う場合の類語については、以下の2つが当てはまる。
・「飼い慣らす(かいならす)」:動物に餌を与えたりしてなつかせる
・「御する(ぎょする)」:馬や馬車を巧みに扱う
「御する」を「なつかせる」という意味で使う場合、対象となる動物は馬に限定される。動物全般には使えない点には注意しよう。また、2つの言葉は、どちらも動物をなつかせる意味の他に、人を都合よく動かすという意味も持ち合わせている。
人を対象に使う場合
人を対象に「手懐ける」を使用する場合には、相手を思い通りに操るといったニュアンスが強まるため、悪い意味を持った言い換え表現が多く挙げられる。ここからは一つずつ意味や例文をチェックしていこう。
・「手玉に取る」:手玉をもてあそぶように、人を思い通りにあやつる
例文:彼女はその美貌と振る舞いで多くの男を手玉に取ってきた。
・「丸め込む」:相手を自分の思う通りに操る
例文:彼にすごい剣幕で怒鳴られ、すっかり丸め込まれてしまった。
・「誑し込む(たらしこむ)」:騙して自分の思い通りにする
例文:その天才詐欺師は甘い言葉を誑し込み、多くの人から金を騙し取ってきた。
・「懐柔する(かいじゅうする)」:うまく扱って自分の思う通りに従わせること
例文:彼は会議を懐柔するために、事前準備に時間を費やしてきた。
・「籠絡する(ろうらくする)」:他人を丸めこむこと
例文:社長は役員たちに籠絡されて書類に印を押してしまった。
「手懐ける」の英語表現は?
最後に「手懐ける」の英語表現も確認しておこう。動物を手懐けることを表す場合によく使われる単語としては、「tame」という動詞が挙げられる。
また、人物を対象として「手懐ける」を使用したい場合には、「win over」という表現が使われる。この時、win overの後に「to one’s side」と付け加えるとより意味を強調して伝えることが可能。「one’s」には主語にあたる人物名や代名詞を入れて使おう。
例文:She wins him over to her side.(彼女は彼を手懐ける。)
文/編集部