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【深層心理の謎】今の感情を客観視すると良いアイデアが生まれるのはなぜ?

2022.12.06

 何も“世紀の大発見”をしようというわけではない。それまでの認識と生活習慣が少しでも変わるようなアイデアを思いつければ、ちょっとした人生の“転換点”となるだろう。そしてそれは愉快なことだ——。

鼻をかみたい時にティッシュがなかったら……

 改札前の屋根のある駅構内に立っていた女性がティッシュで鼻をかんでいた。鼻をかんでいる人を見るのもすごく久しぶりのような気がする。

 このコロナ禍でのマスク生活もあって、人目につくところで鼻をかむのは何だか憚られるような空気もありそうだし、そういえば自分だってコロナ禍以降、外出中には一度も鼻をかんだことがないように思う。

※筆者撮影

 西武新宿線・新井薬師前駅界隈に来ていた。夜8時を過ぎたばかりだ。先ほど用件を終えて、今日に関しては晴れて自由の身になった。どこかで「ちょっと一杯」にしてみてもいいのだろう。

 駅舎の周囲は数年前から工事中だが、この様子だとまだまだ終わりそうもない感じだ。ひとまず駅前通りに向けて歩く。

 さっき通り過ぎた駅南口の改札前で、明らかに人待ちをしていた女性が鼻をかんでいたのだが、考えてみれば外出時にポケットティッシュを持ち歩いているのは日本人ならではという気もする。今の自分もバッグにはポケットティッシュが入っている。

 外国の映画やドラマなどでたまにハンカチで鼻をかむ人物が出て来たりするが、鼻をかんだ後のハンカチをポケットにしまったりもしていて日本人から見るとかなり気色悪い印象を受けるものだ。きっと家に持ち帰って洗ってまた使うということなのだろう。

 しかしポケットティッシュを持たないで外出することがないとは限らない。近所に出かけるのであればむしろ持っていないほうが自然だ。そこで不覚にも鼻をかみたくなった場合、近くにコンビニやドラッグストアなどがなければ、代替案として不承不承ながらもハンカチで鼻をかむことにもなりかねない。

 テッシュがないから仕方なくハンカチで鼻をかむというのはなんとも月並みで凡庸なアイデアという気もしてくる。バッグの中に鼻がかめそうな紙の類がないか一度調べてみてもいいし、近くに水場があれば「手鼻」をかんでから手を洗ってみてもいいかもしれない。人目に触れればかなりみっともないことではあるが……。

 かつて雪が積もった1月のニューヨークを訪れたことがあるのだが、街中で若い女性が立ち止まって前屈姿勢をしているので何かと思って目を向けてみると、なんと鼻水をたらしてしていたことがあった。鼻の穴から伸びて滴る鼻水を雪の上に全部出し切ったところで何事もなかったかのようにその女性はまた歩きはじめたのだった。

 ニューヨーカーとはなんて大胆なのだと少しばかりショックも受けたが、鼻水を処理する解決策ということでは自分から見れば斬新なアイデアと思えなくもなかった。

今の感情を客観視すると良いアイデアが生まれる?

 駅前の通りを左に折れる。こぢんまりとした商店街が延びている。住宅街と一体化した雰囲気はまさに私鉄沿線の駅前という感じだ。

※筆者撮影

 ポケットテッシュがないからハンカチを使うというのは誰もが思いつく平凡なアイデアだが、そこで諦めずに考えを広げていけば思いもよらないユニークなアイデアが思いつくかもしれない。

 鼻がかみたくなってティッシュがないことがわかった時には困った気分になるとは思うが、困ってばかりいては何の解決にもならないことは明らかだ。困惑している感情を一度客観的に突き放してみることで、いろんな発想が浮かんでくるのかもしれない。

 最新の研究では、業務において定型的な思考が習い性になっている者であっても、今の気分を客観的に眺めてみることでクリエイティビティを向上できることが実験を通じて示されていて興味深い。


 感情調節戦略と創造性との関連を支える認知プロセスを調べます。感情調節と創造的認知の理論に基づいて、感情を誘発する出来事の認知的再評価は創造性と正の関連があると理論付けています。

 また従来型の考え方をしがちな人にとって、再評価体験は創造性を高めると予測しています。

 3つの研究は創造性に対する感情の影響とは無関係に、再評価が認知の柔軟性を改善し、経験への開放性が低い個人の創造性を高めることを実証することにより、私たちの理論をサポートします。

 したがって再評価は、従来の思想家の間で創造性を育む効果的なツールです。より大まかに言えば、結果は感情調節プロセスが感情への影響を超え、流れに沿って行動への影響を与えることを示しています。

※「ScienceDirect」より引用


 ワシントン州立大学とカリフォルニア大学アーバイン校の合同研究チームが2022年11月に「Organizational Behavior and Human Decision Processes」で発表した研究では、一連の実験で「感情的再評価(emotional reappraisal)」を実践した後にはより創造的なアイデアを思いつきやすくなることが報告されている。そして創造性はトレーニングで“鍛える”ことができるものであることが示唆された。

 クラウドソーシングプラットフォームを通じて募集された335人が参加した実験では、参加者は最初に開放性のレベルが測定され、次に怒りを引き出すように設計された映画の1シーンが見せられた。

 見ている間、グループ分けされた参加者はそれぞれ異なる指示を与えられた。指示はそれぞれ、怒りの感情を抑えること、何か別のことを考えて気をそらすこと、今自分はどれほどの怒りを抱いているのか再評価することで、コントロールグループには何の指示も与えられなかった。

 映画の1シーンを見た後、参加者は廃業したカフェテリアの空き店舗を今後どのように活用するのかアイデアを出すように求められた。そして出されたそれぞれのアイデアはクリエイティビティの観点から評価された。例えば空き店舗で別の飲食店や食料品店を開くアイデアはクリエイティビティは低いと評価され、保育施設や昼寝用のカプセルホテルを開業するなどというアイデアはクリエイティビティが高いと評価されたのだ。

 収集したデータを分析した結果、感情的再評価を試みたグループは、ほかのグループよりも創造的なアイデアを思いつく可能性が高まっていることが浮き彫りになったのである。

 怒りや哀しみ、困惑といったネガティブな感情のままに対応策を考えてもあまり良いアイデアは思いつきそうもなく、今の感情からいったん離れてみることでよりよい着想に恵まれやすくなるといえそうだ。

やきとん居酒屋でタン焼きの歯応えを存分に堪能

※筆者撮影

 左に折れる細い路地があり、お店がいくつかありそうだ。進んでみることにしよう。

 路地の左側にはローカルチェーンのやきとん居酒屋があった。店先からはもつを焼く芳ばしい煙が漏れ出している。迷わず入ることにしたい。

 店内は6割くらいのお客の入りだ。ごきげんな感じで仲間と談笑しながら飲んでいる人が多い。ほとんどが徒歩圏内の地元の人なのだろう。

 見たところ1人客はいないのでなんとなく浮きそうではあるがまぁあまり気にすることもない。ここは酒場なのだ。お店の人にカウンターに案内されてハイボールと梅割り焼酎をお願いする。

 今日が土曜日ということもあるのかもしれないが、店内にスーツ姿の男性は1人もいないようだ。コロナ禍の酒場でとにかく減っているのはスーツ姿の男性客であるように思う。

 会社帰りに複数人で飲むのを禁じている会社もまだけっこうありそうだし、依然としてリモートワークの割合がそれなりにあればそもそも飲む機会もあまりないだろう。そして地元の街で飲むのであればスーツを着るはずもない。

 ハイボールに続いて焼酎梅割りもやってきた。このタイミングでタン、カシラ、ハツモト各2本に、箸休め的な味噌マヨネーズキャベツと大根酢醤油をお願いする。

 先にやってきたキャベツと大根を少しずつつまみながらハイボールと焼酎をちびちびと飲む。特に焼酎のほうは少しずつ飲まないことには一気に酔いが回ってしまう。

※筆者撮影

 そうこうしているうちにタンとカシラがやってきた。キャベツと大根とお酒で口はスッキリしていて、肉を迎え入れる準備は整い過ぎているくらいだ。さっそくいただこう。

 タンの噛み応えが嬉しい。咀嚼する楽しさをじゅうぶん味わってから飲み込み、その後にハイボールをひと口飲む。

 飲食の描写でよく、料理(特に肉料理)をひと口食べてからビール(あるいはアルコール飲料全般)で“流し込む”という表現があるが、個人的には聞いていてあまり気持ちのいいものではない。

 口の中のものを胃に流し込むのがアルコール飲料の役割でないし、料理は最後まで味わって単独で飲み込んだほうが美味しいと思う。もちろん何をどう食べようが当人の自由ではあるのだが……。

 まぁあまり細かいことは考えずに、暫しやきとんとお酒を楽しむことにしよう。ティッシュがない時に鼻をかみたくなったらどうするか考えるのは、帰りの電車の中の宿題ということにしておこうか。

文/仲田しんじ

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