スーパーやコンビニなどで、「てまえどり」と書かれたPOPを目にしたことがある方も多いのではないだろうか。「てまえどり」は食品ロス削減のため、商品棚の手前から商品を選ぶよう消費者に促す言葉。多くの小売店舗の呼びかけによって「てまえどり」は認知されつつあり、2022年の「ユーキャン新語・流行語大賞」でもこの言葉がトップテン入りしている。
本記事では、「てまえどり」の呼びかけが始まった背景、また、てまえどりを行うことによる消費者側のメリットを紹介する。
「てまえどり」は食品ロス対策の一つ
「てまえどり」とは、食品ロスの削減を目的とした対策の一つ。スーパーやコンビニなど、食品を販売している小売店では、賞味期限が近いものを棚の手前に並べ、新しい商品が入荷すると奥側へ陳列していくことが多い。
しかし消費者のなかには、なるべく賞味期限や消費期限の長い商品を求め、敢えて棚の奥に陳列された商品を手に取る人もいる。賞味期限が近づいた商品は、売れ残れば廃棄処分となることから、棚の奥から商品を取る行為は食品ロスにつながるとして、以前より問題視されていた。そこで始まったのが、食品をなるべく棚の「手前」から取ることを求める「てまえどり」の呼びかけだ。
「てまえどり」キャンペーンは、農林水産省と消費者庁、環境省などが連携して取り組んでいるもので、小売店舗における食品廃棄率を減らすことが狙い。大手コンビニエンスストア4社は「てまえどり」の考え方に賛同し、呼びかけ運動に参加している。各省庁のHPでは店頭で使用できるPOPやポスターなどの啓発物を掲載し、多くの店舗が協力しやすい環境を整えている。
食品ロス削減は世界共通の課題
現在、日本国内では年間約522万トンの食品ロスが発生していると言わている。これは、「国民一人あたりお茶碗1杯分のご飯を毎日捨てている」のと同じになる計算だ。
また、国内での食品ロスの総量に対して、家庭での廃棄の割合は46%を占めるという。食品ロスを解決に導くためには、企業や団体だけではなく、個人単位でも日常の小さな行動を見直して、食品ロス削減に貢献する姿勢が求められている。
海外でも、食品ロスの削減は大きな課題の一つ。持続可能な社会実現のために設定された世界共通の目標「SDGs」では、17項目ある目標のうちの一つである12番「つくる責任つかう責任」において、2030年までに世界全体で一人当たりの食料廃棄量を、現在の年間13億トンから半減させることを目標としている。
「てまえどり」の効果は?
「てまえどり」を推進することで恩恵を受けられるのは販売店側だけではない。京都市内で120名の市民を対象に行われた「てまえどり」の効果を測定する調査では、「てまえどり」を実践することで、販売店のスーパーだけでなく、家庭での食品ロスも減少する効果があることがわかった。
これは「てまえどり」を実践する前後で、消費者の意識に変化があったことによるもの。普段はなんとなく賞味期限の長いものを手に取っていた参加者の多くが、調査への参加をきっかけに購入する食品一つひとつの賞味期限を意識するようになったそうだ。
消費者からの反応
「てまえどり」の呼びかけに対する世間の反応は、必ずしも肯定的なものばかりではない。ネット上では「消費者側に頼りすぎでは」「てまえどりを呼びかけるならば商品の値引きをして欲しい」などといった声もあがっている。また、主婦層からは「どうしてもまとめ買いをしないといけないことも多く、てまえどりへの協力は厳しい」という意見も聞かれる。
消費者側には当然、購入する商品を選択する自由がある。それぞれの事情に合わせて、すべての商品をてまえどりするのではなく、すぐに食べるものについてはなるべく手前から取るように意識するなど、まずは無理のない範囲でてまえどりに協力していこう。
家庭での食品ロス対策
最後に、家庭で簡単に実践できる食品ロス削減のポイントを見ていこう。少し意識を変えるだけでも食品ロスは防げるため、ぜひチェックしてほしい。
買い過ぎを防ぐ
家庭内での食品ロスの大きな原因の一つとして、冷蔵庫の食材を使い切れないケースが挙げられる。食材の買い出しに出掛けた際、冷蔵庫に何の食材があるのかを思い出せず、すでに自宅にある食材を余分に購入して食品を腐らせてしまったという経験は誰にでもあるだろう。食品の買い過ぎを防ぐためには、自宅にある食材を把握しておくことが大切。買い物の前には冷蔵庫内のチェックを習慣づけたい。
食材の適切な保存方法を知る
食品の足の早い野菜は、新鮮なうちに茹でる・乾燥させるなどの下処理をし、すぐに食べない分については積極的に冷凍保存を活用しよう。また、冷凍庫で食品を保存する際には、保存した食品を一目で把握し、使い忘れを防ぐためにも縦に並べるのもおすすめだ。
文/編集部