12月はクリスマス商戦とタックスロス・セリングに注目【米国株投資入門】
米国株投資家にとっては長く厳しい1年が終わりに近づこうとしています。
コロナ以降、それまで世界中の中央銀行が金融緩和を続けたことで世界中にお金が溢れていた時期から一転、今年は歴史的なインフレ問題に悩まされ、経済的にも急ブレーキがかかる厳しい時期を迎えている方も多いのではないでしょうか。
この数年、好調だった米ハイテク企業の多くがリストラを実施しているように、企業の成長率の鈍化が株価にも顕著に表れています。
では米国株に魅力がなくなったのかといえばそんなことはないでしょう。
なぜなら私たちの生活を見渡せば明らかなように、米国企業の製品やサービスで溢れていることに加えて、次世代産業の多くの分野で米国企業がリードしています。
もちろん短期で見れば厳しい時期かもしれませんが、中長期で見た場合、米国株には揺るがない魅力があるといえるはずです。
そこで今回は米国株投資入門として、12月に注目したい3つのポイントについて解説していきます。
12月の注目ポイント① クリスマス商戦
例年、クリスマス時期は小売業やサービス業にとって最も売上を伸ばしやすい時期です。
特にコロナ以降の2020~21年にかけてはアマゾンなどのECサイトやネットフリックスなどのストリーミングサービスを展開する企業が売上を伸ばしていきました。通常であれば外出して買い物をしたり、旅行に出かけたりしていた需要が減少し、自宅で過ごす時間が増加したことが主な要因です。
こうしたパンデミックな時期から次第に回復しつつあるように、今後は旅行需要がどのくらい増加しているのかも注目です。投資家としては航空銘柄やホテル銘柄などの株価がどんな反応を見せるのか、景気動向を予測する目安になるはずです。
また例年通りであれば、この時期はクリスマスラリーと呼ばれる株式相場が強い時期でもあります。2023年以降の投資戦略を考える上で、12月末の株価が年初のピーク時の株価からどのくらい戻せるのかも大きな注目です。
12月の注目ポイント② タックスロス・セリング
クリスマス商戦と合わせて、12月中旬〜年末にかけて注目したいのがタックスロス・セリングです。これは節税目的のために保有銘柄の中でマイナスになっている株をこの時期に意図的に損切りする手法です。株式を売却して損を出すことで、今年得たそれまでの利益を相殺して、所得税などの税金の支払いを少なくすることを目的としています。
通常、このタックスロス・セリングの対象となりやすい銘柄には決まった特徴があります。
それは今年に入って新規に株式を上場したIPO銘柄のなかで、上場直後の株価をピークに右肩下がりで株価が下落したような銘柄が対象となりやすい特徴があります。
こうした銘柄を保有している場合には、さらなる売りが先行して株価が下落する可能性も考慮しなければなりません。その一方、これらの銘柄は年が明けてから再び投資家の買いが入ることで、一時的に株価が高騰することもあります。なぜなら、タックスロス・セリングを狙って買い向かう投資家も一定数存在しているからです。つまり上手にこの期間にトレードすることが出来れば投資家にとって妙味があるタイミングでもあるのです。
とはいえ、これらの銘柄を購入する場合は短期売買が鉄則であり、あまり欲張りすぎない方が賢明ともいえるでしょう。
12月の注目ポイント③ 米国株の季節性アノマリーとは
この時期は米国株投資における「季節性アノマリー」にも注目です。
そもそもアノマリー(Anomaly)とは、理論では説明ができないけれど、不思議と前から決まっていたかのように法則的に動くものです。これは米国株にも当てはまります。
例えば、米国経済がどんな状況であるのかを測る代表的な株価指数として「S&P500」があります。これは米国に上場する企業のなかでも主要な500社で構成されていますが、過去の平均リターンを見ていくと月毎にパフォーマンスは大きく異なります。
実際、1950年1月〜2020年5月までのS&P500の月間平均リターンを見ていくと、12月は+1.5%であり、これは11月の+1.6%に次いで2番目に高いパフォーマンスです。
過去のデータを見れば明らかなように、例年12月は米国株にとって強気相場の月といえるでしょう。とはいえ、なぜ12月の株価が上昇しやすいのか筆者も明確な理由は分かりませんが、米国人にとってのクリスマスは親族一同が集まるイベントなどもあり、年で一番楽しみにしている人も多いはずです。そのため米国の経済政策を決めるFRB(米連邦準備制度)も12月に関しては意図的に厳しい経済政策を打ち出さない傾向があります。
これもマーケットに一定の安心材料とを与えているのは間違いないでしょう。
おわりに
FRBのパウエル議長が11月30日にワシントンで講演をした際に、12月13,14日に開催される次回FOMC(連邦公開市場委員会)で、利上げ幅を現在の0.75%から縮小する可能性について言及しました。利上げの減速は米国のインフレ問題にもようやく出口戦略が見えてきたことを意味し、当然、株価にはプラス材料です。これによりマーケットにも資金が集まっています。
仮に12月の季節性アノマリーに加えて利上げ幅の縮小が重なれば、来年以降のマーケットに与える影響は絶大です。これまで継続して投資を続けていた方であれば、大きな恩恵を得られる可能性が高いといえるでしょう。
投資を長く続ければ山あり谷あり、さまざまなことを経験します。
今こそ投資という良い習慣を身につける絶好の機会ではないでしょうか。
文/鈴木林太郎