YouTube ショートは、モバイル端末での動画の視聴や作成に最適化されていたが、この度、現在最も急速に成長している視聴形態であるテレビ画面へ対応した。
モバイル端末向けの縦型の動画フォーマットをテレビに適応させる取り組みの舞台裏を紹介しよう。
大画面を使ったYouTubeショートの視聴に最適なデザインを模索
視聴者がテレビでショート動画を視聴する際に、期待する体験を理解するため、YouTube は、テレビで視聴したショート動画に関する気持ちを「ラブレター」か「別れの手紙」のいずれかの形式で表現するように依頼した。
「ラブレター」からは、お気に入りのコンテンツを友人や家族と気軽に視聴できるという体験を視聴者が高く評価していることが判明。
一方、「別れの手紙」からは、動作がぎこちない、読み込みが遅い、共有などの主要な機能が不足している、と視聴者が感じていることが読み取れた。
調査の結果、大画面でのショート動画の視聴には、誰かと一緒に視聴するのに便利で、大画面による快適な視聴体験が得られるという、他にはないメリットがあることがわかった。
しかし、縦型動画のプラットフォームという YouTube ショートの本質をテレビの大画面でどうやって維持するかという、デザイン的課題が残っていた。そこで、3つの全く異なるデザイン コンセプトを作成して検証。
(上からオプション A: 一貫性を保つ、オプション B: カスタマイズ、オプション C: 「ジュークボックス」スタイル)
従来との一貫性を保った動画プレーヤー(オプション A)では YouTube ショートで本来得られるはずのワクワク感が失われ、ジュークボックス スタイル(オプション C)は一度に1つの動画だけを流すというYouTube ショートの本質からかけ離れたものになってしまっているという感想が寄せられた。
カスタマイズしたYouTube ショート用の動画プレーヤー(オプション B)は、すっきりとしたデザインと大画面の広い表示領域の活用を同時に実現し、最も高い評価を得た。
調査の結果、視聴者は視聴体験を自らコントロールしたいという要求を持っており、次の動画を自動再生するより、リモコンを使って手動で次のショート動画を再生することを好むということも判明。
これは珍しいことで、通常は、リモコンを使ってそのような双方向的操作を行うのは面倒なものだ。
しかし、調査結果は、モバイル デバイスでショート動画を視聴するときと同様に、視聴体験の主導権を持つことを視聴者が望んでいることを示唆していた。主導権を持てるのが当然とさえ考えられているようだ。
プロトタイプを使ってテレビ対応の YouTube ショートを構築
設計の最終段階では、カスタマイズされた YouTube ショート動画プレーヤーのプロトタイプを2種類試作した。どちらも高画質の動画プレーヤーで、最新の調査で得られたフィードバックを反映したものだ。
これらのプロトタイプにより、純粋な視聴体験と、YouTube ショートやYouTube で期待される機能(コメント、高評価やチャンネル登録などのユーザーからの反応、関連動画の表示など)の適切なバランスを見つけようと試みた。
「シンプル」なバージョンのプロトタイプには、サイドバーや YouTube ショートの使用に必要な基本的機能など、最低限の要素のみを組み込んだ。
「最大」バージョンのプロトタイプには、関連タグやコメントなど、さらに多くの機能が表示され、カラー サンプリングとぼかし処理を施した背景を実装。
これらのプロトタイプをコミュニティ内でテストしたところ、「最大」バージョンのプロトタイプの評価が高いことが判明。このバージョンはテレビ画面の広い表示領域を有効活用でき、カラー サンプリングされた背景によって洗練された印象を視聴者に与えた。
提供を開始した動画プレーヤーのデザインは、「最大」バージョンのプロトタイプを改善したものであり、右側のサイドバーを簡略化。今後のリリースで、さらに機能を追加することを計画しているという。
関連情報:https://youtube-jp.googleblog.com/
構成/Ara