2022年の「ユーキャン新語・流行語大賞」にノミネートされている言葉の一つである「ルッキズム」。2021年に8年ぶりの全面改訂を行った『三省堂国語辞典』にもルッキズムが新語として追加されている。
そこで本記事では、近年使われるようになったルッキズムの意味、さらにルッキズムが人々に与える影響や世間の反応について紹介する。
ルッキズムとは?
「ルッキズム」という単語に聞き覚えはあっても、何を指す言葉なのかまではわからないという方もきっと多いはず。まずは「ルッキズム」の意味について詳しくみていこう。
ルッキズムの定義
ルッキズム(lookism)はアメリカ発祥の言葉で「looks (見た目)」と「ism(主義)」を合わせたもの。日本語では「外見至上主義」、つまり「人を見た目で判断する」ことを表す。例えば、日常会話で耳にする「あの子は可愛いから仕方ない」「背が高くてかっこいい」などの発言も見た目で人を評価するルッキズムに基づくものと考えられる。
ルッキズムが及ぼす影響
行き過ぎた「ルッキズム」が与える影響が社会問題に発展するケースも見られる。ここからは詳しい事例を見ていこう。
摂食障害をおこす若者
身体的な変化が顕著となり、他者からどう見られているのかを気にするようになる思春期の子ども。多感な時期にSNSやメディアにより形作られた「美」へのイメージが刷り込まれることで、世間で理想的とされている「美」と自身の姿とのギャップに苦しんでしまう若者もいる。
また、理想の容姿に近づきたいあまりに過剰なダイエットをし、結果的に摂食障害などの深刻な状況に陥ってしまうケースも決して少なくない。このような状況から、欧米各国では、極度の痩せ信仰や摂食障害の発症を助長するとして、痩せすぎたモデルの起用を規制する動きも広がっている。
機会均等の妨げ
就職活動や入試などの場面で、実力ではなく見た目で評価がされてしまう状況も、ルッキズムが及ぼす悪影響の一つとして問題視されている。
例えば、企業が応募者の見た目を決め手に採用をする「顔採用」はまさにルッキズムと直結する問題だ。採用を行う企業側に見た目で判断しているつもりがなくても、無意識のうちに外見の印象に影響されてしまい、適切な判断が行えなくなるケースも起こり得る。このような採用活動における不平等感を解消するため、履歴書の写真欄を削除するなど、評価システム自体を公平なものに変えていくべきとの意見もある。
SNSの発達により深刻化したルッキズム
SNSの発達により、ルッキズムが深刻化したとする意見もある。他者からの「いいね」を多く得るために極端に美化された映像や画像を日常的に目にする生活を続けていれば、ルッキズムに偏ってしまうのも無理はないだろう。
あるイギリスの大学では、13歳〜18歳の若者を対象に、SNSが与える影響に関する研究調査が実施された。その結果によると、46%の若者が、SNSで目にする自撮り写真をきっかけに食事制限やエクササイズなど、自身の見た目を変えるための行動を取ったことがわかっている。
また、行動を起こした若者には「SNS上で評価されている同年代と同じような見た目でいなければならない」というプレッシャーがかかった状態だったと分析されている。このような状況がエスカレートしてしまえば、過剰なダイエットや整形依存症を招くことにもつながる。教育現場や若者のいる家庭では、SNSとの付き合い方を子どもと一緒に考える機会を設ける必要がありそうだ。
ルッキズムに対する世間の動き
ルッキズムが蔓延する世間に対し、変化を起こそうとする人々もいる。ここでは、ルッキズムに対抗する「反ルッキズム」の事例を見ていこう。
ミスコンの廃止
大学の文化祭の目玉企画として開催されることの多い、女子学生の見た目の美しさを競う「ミスコン」にも近年変化が見られる。出場者が顔出しをしないコンテストや、スピーチや自己PRにより審査を進めるコンテストなど、審査基準に外見を含めない方針でイベントを開催する大学が徐々に増えてきた。人を見た目だけで判断することに対して世間が抱いている違和感をどのようにイベントに反映させるのか、模索を続ける大学も多い。
ボディポジティブ
「ボディポジティブ」とは自身のありのままの体を受け入れようという呼びかけ運動のこと。現在、欧米を中心にSNS上での呼びかけが積極的に行われ、ボディポジティブの輪が広がっている。
この「ボディポジティブ」の概念はアパレルブランドの販売戦略にも影響を与えている。アパレル広告には、これまで細身な女性モデルの写真が使われることがほとんどだったが、現在ではさまざまな体型のモデルを起用する動きが出てきている。
さまざまな局面で多様性を意味する「ダイバーシティー」という言葉が使われる今、見た目への多様性を認めるような社会への転換が求められている。
文/編集部