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作家やライターが締め切りを破ることは「債務不履行」に該当する?

2022.12.02

出版社やメディアに指定された締め切りを破った作家やライターは、契約違反の責任を負う可能性があります。

今回は、締め切りを破った場合に発生する法的責任の内容についてまとめました。

1. 締め切りを破ることは「債務不履行」に当たる

出版物やweb上の掲載物に関する締め切りは、発注者(出版社・webメディアなど)と受注者(作家・ライターなど)の間の契約によって設定されます。

契約を締結した当事者は、契約の内容に拘束されます。したがって、契約で指定された締め切りまでに原稿を納品しない行為は、契約違反に当たります。

締め切り破りの契約違反を犯した作家やライターは、発注者の出版社やwebメディアなどに対して債務不履行責任を負います。後述するように、作家やライターは債務不履行に基づき、損害賠償責任や契約解除による不利益を負うことになりかねません。

そのため、どうしてもやむを得ない事情がある場合を除き、原稿提出を締め切りに間に合わせることは非常に重要です。

2. 締め切りの約束は口頭でも成立する|ただし立証は難しい

作家やライターによる原稿提出の締め切り設定は、口頭の約束によっても成立します。

ただし、締め切りに関する約束(契約)は、発注者・受注者それぞれにおける権限者の間で締結されなければなりません。

受注者である作家・ライターが個人の場合は、本人が権限者となります。これに対して、発注者である出版社やwebメディアの側は、代表取締役またはその授権を受けた人が権限者です。

実際に作家・ライターとやり取りしている出版社やwebメディアなどの担当者には、契約締結の権限が与えられていないケースがあります。この場合、口頭で行われた締め切りの合意は無効であり、出版社・webメディア側は作家・ライターの債務不履行責任を追及できない可能性があるのでご注意ください。

口頭での締め切り設定は、そもそも口頭による合意が存在したかどうか、および権限ある者によって行われたかどうかについて、立証が困難であることが難点です。

出版社やwebメディアなどの側としては、こうした難点を回避するためにも、発注書の交付やメール送信など、証拠が残る形で締め切りを設定することをお勧めいたします。

3. 締め切りを破った作家・ライターが負う責任

原稿提出の締め切りを破った作家・ライターは、出版社・webメディアなどに対して、以下の債務不履行責任を負います。

3-1. 損害賠償責任

締め切り遅延によって、出版社・webメディアなどが損害を被った場合、作家・ライターはその損害を賠償する責任を負います(民法415条1項)。

損害賠償の対象となるのは、出版社・webメディアなどに生じた損害のうち、「通常生ずべき損害」に限られるのが原則です(民法416条1項)。

ただし例外的に、作家・ライターの側が予見できたものについては、特別の事情によって生じた損害でも損害賠償の対象となります(同条2項)。

たとえば、孫請けに当たる作家・ライターの納品遅れにより、下請けのマーケティング業者が元請けのwebメディアに原稿を納品できず、取引を打ち切られてしまったとします。

この場合、マーケティング業者には逸失利益が発生しますが、それを作家・ライターが賠償しなければならないかどうかは、個別の事情によって異なります。

作家・ライターの側が背景事情を知らない場合、逸失利益は「通常生ずべき損害」に含まれず、損害賠償の対象にはならない可能性が高いでしょう。

仮に知っていたとしても、取引の打ち切りが単発の納品遅れのみによって引き起こされたとは考えにくいです。そのため、作家・ライターに逸失利益全額の損害賠償が課される可能性は低いと考えられます。

3-2. 契約の解除

締め切り破りの債務不履行に基づき、出版社・webメディアなどは、作家・ライターとの契約を解除できる場合があります。

出版社・webメディア側による契約の解除が認められるのは、以下のいずれかに該当する場合です。

(1)契約上の解除事由に該当する場合

締め切りを破る行為が、原稿作成等に関する業務委託契約における解除事由に該当する場合は、契約の解除が可能です。

(2)民法上の解除事由に該当する場合

民法541条・542条の規定に従い、以下の場合には契約の解除が認められます。ただし、業務委託契約によって民法の適用が明示的に排除されている場合には、例外的に解除が認められません。
(a)相当の期間を定めて納品を催告し、その期間内に納品がなく、かつ債務不履行が契約・取引上の社会通念に照らして軽微でない場合
(b)以下のいずれかに該当する場合
・納品の全部が不能であるとき
・作家やライターの側が、納品を拒絶する意思を明確に表示したとき
・納品の一部が不能であり、作家やライターの側が納品の一部を拒絶した場合において、残った部分のみでは契約の目的を達成できないとき
・特定の日時または一定の期間内に納品をしなければ、契約の目的を達成できない場合において、納品がないまま当該時期を経過したとき
・その他、作家やライターが納品をせず、催告をしても納品がなされる見込みがないことが明らかなとき

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
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