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友人からゲームや本を「借りパク」することは犯罪に当たるのか?

2022.11.26

友人から借りたゲームや本などを、そのまま自分のものにしてしまった経験はありませんか? こうした行為は「借りパク」と呼ばれていますが、場合によっては犯罪等の責任を問われる可能性があるのでご注意ください。

今回は「借りパク」について、行為者が負う法的責任の内容などをまとめました。

1. ゲームや本の「借りパク」は犯罪に当たるのか?

ゲームや本などの「借りパク」をすると、「横領罪」に該当する可能性があります。

1-1. 借りパクは「横領罪」に当たる可能性がある

横領罪とは、他人から委託を受けて占有している物につき、所有者でなければできない処分をした場合に成立する犯罪です(刑法252条1項)。横領罪の法定刑は「5年以下の懲役」とされています。

横領罪の成立要件は、以下のとおりです。

(1)他人から委託を受けて物を占有していること

物の占有について委託を受けていることが必要です。委託関係がない場合は、遺失物等横領罪(刑法254条)が成立するにとどまります。

(2)他人の物であること

占有している物が、他人の所有物であることが必要です。自己の所有物については、原則として横領罪は成立しません(公務所から保管を命ぜられた物を除く。刑法252条2項)。

(3)その物を横領したこと

「横領」とは、「不法領得の意思を実現する一切の行為」と解されています。簡単に言えば、所有者でなければできない処分をすることです。詳しくは後述します。

「借りパク」は、他人から借りた物(=委託を受けて占有を開始した、他人の所有物)を自分のものにする(=横領する)行為なので、横領罪による処罰の対象になり得ます。

1-2. 横領罪の成立には「不法領得の意思の実現」が必要

横領罪が成立するためには、「横領」(=不法領得の意思の実現)が既遂となる必要があります。

これに対して未遂の段階、つまり「横領しようと思っているけれどもまだ完了していない段階」では、横領罪はまだ成立しません。

横領が既遂となるのは、「不法領得の意思」が具体的な行為となって外部に現れた段階です。「不法領得の意思」とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、所有者でなければできないような処分をする意思をいいます(最高裁昭和24年3月8日判決)。

借りパクの場合、借りた物を自分のものにしようと思っているだけでは、横領罪は成立しません。しかし、以下に挙げるような行為をした場合には、その段階で横領が既遂となった(=不法領得の意思が実現した)とみなされ、横領罪が成立します。

(例)
・貸出期間の経過後、貸主から返却を求められたにもかかわらず拒否した場合
・借りた物を勝手に売却した場合

なお、借りた物を勝手に捨てた場合については、横領罪が成立するという見解と、器物損壊罪(刑法261条)が成立するにとどまるという見解が対立しています。

2. 借りパク行為の責任は、いつ時効消滅するのか?

借りパク行為をした場合、上記のとおり刑事責任を負う可能性があるほか、所有者(貸主)に対しても民事責任を負います。

刑事責任・民事責任は、一定期間が経過することで、時効消滅する場合があります。しかし、いずれも時効期間はかなり長いので、責任を問われる前に借りた物は返した方が賢明でしょう。

2-1. 刑事責任の公訴時効は5年

横領罪の公訴時効期間は5年です(刑事訴訟法250条2項5号)。この期間を経過すると、借りパクについて横領罪で起訴されることはなくなります。

公訴時効期間の起算点は、横領罪が既遂となった時期です。たとえば、貸主からの返却請求を拒否したり、勝手に売却したりしたタイミングが、借りパクについての公訴時効期間の起算点となります。

2-2. 物の返還請求権に時効はない

借りパクをした人に対して、所有者(貸主)は所有権に基づき、その物の返還を請求できます。

所有権に基づく返還請求権は、時効によって消滅することはありません。したがって、借りパクした物をまだ手放していない場合には、いつでも所有者(貸主)から返還請求を受ける可能性があります。

2-3. 物をすでに手放している場合、消滅時効が適用される

借りパクした物を勝手に売却したり、捨てたりした場合、借主は所有者(貸主)に対して、「不当利得」または「不法行為」に基づき、物の価値に相当する金銭を返還(賠償)する義務を負います(民法703条、704条、709条)。

不当利得返還請求権および不法行為に基づく損害賠償請求権は、以下の期間が経過すると時効消滅します。

<不当利得返還請求権の消滅時効期間>
2020年3月31日以前に売却・廃棄などが行われた場合 売却・廃棄などの時から10年
2020年4月1日以降に売却・廃棄などが行われた場合 以下のいずれか早く経過する期間
(1)売却・廃棄などを所有者(貸主)が知った時から5年
(2)売却・廃棄などの時から10年

<不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効期間>
以下のいずれか早く経過する期間
(1)売却・廃棄などの事実と行為者を、所有者(貸主)が知った時から3年
(2)売却・廃棄などの時から20年

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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