「上手な説明には「コツ」があります」26万人超の登録者を擁するビジネス系YouTuberのハック大学 ぺそ氏は言います。
説明が下手な人は、なぜ、同じ失敗を何度も繰り返すのか? それは、根本的な「考え方」「思考」に欠陥を抱えているからで、「ちょっとしたテクニック」を身に付けて、上手に使い分けられるようになれば、誰だって説明力はぐっと上がるそうです。外資系金融機関に勤める現役ビジネスパーソンである同氏がビジネスの最前線で出会った「説明が上手い人」がどんな話し方をしているのかを観察し、導き出した著書『「説明が上手い人」がやっていることを1冊にまとめてみた』から「説明下手な人の特徴」を一部抜粋・再構成してお届けします。
ハック大学ぺそ著/アスコム
『「説明が上手い人」がやっていることを1冊にまとめてみた』
営業先の担当者との雑談でプロ野球の話をしていて
[×]「2点差の9回裏、2アウト満塁で代打で○○が出てきて、満塁サヨナラホームランを打ってめちゃくちゃ劇的な試合でしたよ」
正確に順を追った説明で欠落もないが、「そうなんだ~ 」とそのまま話が流れてしまうリスクも。
[○]「2点差の9回裏、2アウト満塁で代打で○○が出てきて……、とにかくもうめちゃくちゃ劇的な試合でしたよ。」
相手がもっとも知りたい部分が欠けていることで、「それで? どうなったの?」と食いついてもらえる。
「わざと大事なところを話さない」から話が盛り上がる
わざとツッコませるテクニックは応用範囲が広く、説明をわかりやすくしたり、場の雰囲気をあたため、盛り上げたり、なにか不測のミスがあった場合も挽回できる武器として、あるいはいざというときの「お守り」のような存在として、オプション的に使えたりもできるものです。
さらに上級になってくると、わざと自分がミスをしたかのように見せるテクニックを使うこともできます。
重要なのは、事前に一定のシミュレーションをしておくこと。そして、自分がコントロールしているという意識を持つことです。それによって、説明の場に飲み込まれることなく、相手のペースによって見出されるリスクも最小化し、安定した説明が持続できるようになります。
常に安定した説明ができる人や会社は、相手からの信頼度が上がります。ビジネスにおいて説明が果たす役割は、それほどに大きいのです。
■話の流れにわざと穴を開けておく
実際はミスをしていないのに、あたかもミスをしたかのように見せるテクニックとは、簡略化するとこんな流れです。
説明する流れが「A→B→C→D→E」だったとしましょう。そこでたとえば、わざと、「A→B→C→E」にするのです。
AがBになってCにつながるなら、当然次はDの話になるだろう……そんな相手の予想を、軽やかに裏切って急にEの話に飛んだとしたら? 当然相手は、「いやあの……Dの話ってどうなっているの? その間に何かあるはずだけど……」と聞きたくなります。
あるいは、順調に右肩上がりになっている実績を説明するために、データをグラフ化して説明する際、途中のある特定の1年だけガクッとトレンドから外れ、まさに穴が空いたようにへこんでいるとします。しかし、説明上はそれをわざと無視し、どんどん先に進んでいきます。
すると相手からは、「ある1年だけグラフが大きく下がっているが、それについてはどうなっているのか?」と質問が飛んでくるはずです。
ここで初めて、Dについて、グラフのへこみについて、たっぷり、詳細に話をする機会を相手から与えられたことになります。
もうおわかりでしょうが、実はこの説明におけるキモは最初からDであり、グラフのへこみなのです。そこをもっとも詳しく説明したいという意図が最初からあったので、わざとツッコミが集中するようにしかけ、目立たせて、質問が出るように仕向けたということです。
■自分からした質問には愛着がわく
なぜそんなしかけをするのか。それは、説明する側の都合、タイミングで、通常の説明の流れのまま述べるよりも、質問を受けてから述べる方が、より詳細に、より長く説明できるようになるからです。
何せ、質問して説明を要求したのはあくまで相手だからで、相手の求めに応じて説明されている以上、どんなに長く詳しくなっても、それは相手起点です。
説明内容自体も受け取ってもらいやすくなります。いったん相手の「知りたい」という欲求を刺激しているので、通り一遍の説明よりも、相手の頭の中にしみこみやすくなるというわけです。
また、「これはミスではないか?」と相手が思い込んでいる時点で、実は「期待値」も下がっています。残念な話なのではないか? そのポイントについては説明の準備をしていないのではないか? と一瞬でも思えば、相手への期待値が下がります。そこで見事に切り返せば、見かけ上のギャップが大きく、よりよい説明に聞こえるようになるのです。
さらに、相手はあくまで「質問したのは自分だ」「ツッコむべきポイントに自分で気づいた」と確信しています。自分の質問には、ある意味で愛着がわきます。そこで詳しい説明が返ってくれば、説明者への評価が高くなります。「この人、さすがによくわかっているな!」と思い込みやすくなるわけです。
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自らのビジネスへの向き合い方を再検証し、気づきとともに、正しいテクニックを学べば格段に身に付きやすくなるはず。筆者がビジネスの現場で「説明が上手い人」から学び、実際に試して確実に役に立つことを証明できたスキルだけを厳選した『「説明が上手い人」がやっていることを1冊にまとめてみた』。ぜひ「考え方」と「テクニック」の両方を学んで、ビジネスの荒波を乗り越える力を身に付けてほしい。
ハック大学ぺそ
ビジネス系YouTuber、1988年生まれ。主にYouTubeチャンネル「ハック大学」を通じて、仕事術、キャリア戦略などビジネスに役立つ情報を発信。チャンネル登録者数は25万人を超える。チャンネルにアップされた動画のなかでも、説明に関する動画は人気のコンテンツ。専業YouTuberではなく、普段は外資系金融機関に勤める現役のビジネスパーソンで、年収は約2000万円。著書に『行動が結果を変える ハック大学式最強の仕事術』(ソシム)、『「説明が上手い人」がやっていることを1冊にまとめてみた』(アスコム)がある。