「上手な説明には「コツ」があります」26万人超の登録者を擁するビジネス系YouTuberのハック大学 ぺそ氏は言います。
説明が下手な人は、なぜ、同じ失敗を何度も繰り返すのか? それは、根本的な「考え方」「思考」に欠陥を抱えているからで、「ちょっとしたテクニック」を身に付けて、上手に使い分けられるようになれば、誰だって説明力はぐっと上がるそうです。外資系金融機関に勤める現役ビジネスパーソンである同氏がビジネスの最前線で出会った「説明が上手い人」がどんな話し方をしているのかを観察し、導き出した著書『「説明が上手い人」がやっていることを1冊にまとめてみた』から「説明下手な人の特徴」を一部抜粋・再構成してお届けします。
ハック大学ぺそ著/アスコム
『「説明が上手い人」がやっていることを1冊にまとめてみた』
「サブスク」を知らない人に言葉の意味を尋ねられて
[×]「サブスクというのは一定期間、定額料金を払うことで継続的に商品やサービスを利用し続けられるビジネスモデルで、安定的な収益確保が見込めるものです。」
説明としては間違っていないが、これといった工夫もなく聞き手が「難しい」と感じるリスクがある。
[○]「サブスクというのは要するに、1カ月単位の焼き肉食べ放題のようなもので、飲食以外にもファッションや音楽配信などいろんなモノがある感じですよ。」
誰にでもわかるイメージを利用して、相手が要点をつかみやすいように工夫している。
「たとえ話」は半径3メートル以内で
やさしく説明することの難しさを裏返せば、いかにも小難しげに説明することの「簡単さ」、あるいは「安易さ」でもあります。
2章で、「横文字や『業界用語』を排除し、共通の言葉で説明する」と述べましたが、それも含め、相手のレベルで理解可能な説明ができるかどうかは、説明力を上げる大切なポイントになります。
こうしたシチュエーションは、一般に説明する側が「専門家」、説明を受ける側が「初心者」や「未経験者」の段階です。
この場合の絶対的な原則は、「相手の理解できるレベルで説明する」こと。
そして、言葉や用語、言い回しに限るなら、「相手にとって未知な言葉は使わない」ということになります。
なぜなら、わからない用語や言い回しを使われると、相手はそれだけでストレスを感じてしまうからです。
■小難しく説明しても「すごい」とは思われない
やさしい言葉で説明をすれば誰もがすんなりと理解しやすいのに、実際、世の中には話を小難しく振り回したり、やたらと専門用語やカタカナ語を使いたがったりする人がいると思いませんか? 彼らは、なぜそうするのでしょうか。
まず、何らかのバリアを張りたがっているケース。自分が責められたくない、自分の領域に立ち入られたくないと思っていたり、自分に不利な展開になることを嫌っていたりして、知識レベルや説明の量で相手を圧倒しようとしているわけです。いわゆる「マウント」もこの類いです。これは、裏返せば自信のなさそのものです。
また、単にいい気持ちになりたいという人もいるかもしれません。流行のビジネス用語を語る自分、業界の細かい事情や一般に知られていない知識を開陳している自分が快感で、これ見よがしに、積極的に使ってくる人もいます。
ただ、そんな人を見て「すごい」と思う人は少数派でしょう。むしろ「ちょっと痛い人」とさえ感じるかもしれません。
私なら「この人、説明が上手くないな」と率直に感じます。小難しく説明したところで内容がよく伝わるわけでも、相手の目的が満たされるわけでもないからです。
ただし、ある業界、あるいはある特定の会社だけで通じる専門用語、いわゆる「ジャーゴン」のようなものが、どこにも存在します。内側では積極的に使っても構いませんし、内側の人間だけで説明する際には、効率化の観点からも欠かせません。しかし、外部の人と接する際には、即座に頭を切り替える必要があるのです。
■うまく相手のレベルに合わせる説明とは?
相手のレベルに合わせた説明とは、より細かく言えば、「相手が理解可能な範囲の言葉を使って説明する」ということでもあります。2点、テクニックを考えてみましょう。
まずは、相手に寄せたたとえ話です。
説明する自分は〝サッカー〟のプロ選手、説明を受ける相手は〝野球〟のプロ選手だとしましょう。サッカーの専門用語を多用してサッカーのプレイを解説するのは簡単ですが、それでは伝わる説明の範囲が、相手の知っているサッカーについての知識を越えることが難しくなります。
そこで、たとえ話を使います。「野球でたとえるなら、○○みたいなものです」と説明すると、相手はその用語を知っているため、すんなり受け取れます。ただこれは、当然説明するサッカー選手の側が知っている野球の知識の範囲に限定されることになるので、やや高度なテクニックだと言えるでしょう。
もうひとつは、たとえ話の一般化です。
誰にでもわかる話に落とし込むのが一般化で、これは「抽象化」とほぼ同じです。
「知能指数(IQ)の出し方は、要するに受験の偏差値と同じです」であったり、この本の冒頭でも例として出したように「サブスクは食べ放題が1カ月単位になったようなものです」と言われれば、知らない人にも途端に理解できるはずです。
半径3メートル以内の身近なたとえ話だからこそ、相手からは自分に寄り添ってくれていると信用、信頼されますし、「説明が上手だな」と思われるのです。
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自らのビジネスへの向き合い方を再検証し、気づきとともに、正しいテクニックを学べば格段に身に付きやすくなるはず。筆者がビジネスの現場で「説明が上手い人」から学び、実際に試して確実に役に立つことを証明できたスキルだけを厳選した『「説明が上手い人」がやっていることを1冊にまとめてみた』。ぜひ「考え方」と「テクニック」の両方を学んで、ビジネスの荒波を乗り越える力を身に付けてほしい。
ハック大学ぺそ
ビジネス系YouTuber、1988年生まれ。主にYouTubeチャンネル「ハック大学」を通じて、仕事術、キャリア戦略などビジネスに役立つ情報を発信。チャンネル登録者数は25万人を超える。チャンネルにアップされた動画のなかでも、説明に関する動画は人気のコンテンツ。専業YouTuberではなく、普段は外資系金融機関に勤める現役のビジネスパーソンで、年収は約2000万円。著書に『行動が結果を変える ハック大学式最強の仕事術』(ソシム)、『「説明が上手い人」がやっていることを1冊にまとめてみた』(アスコム)がある。