「上手な説明には「コツ」があります」26万人超の登録者を擁するビジネス系YouTuberのハック大学 ぺそ氏は言います。
説明が下手な人は、なぜ、同じ失敗を何度も繰り返すのか? それは、根本的な「考え方」「思考」に欠陥を抱えているからで、「ちょっとしたテクニック」を身に付けて、上手に使い分けられるようになれば、誰だって説明力はぐっと上がるそうです。外資系金融機関に勤める現役ビジネスパーソンである同氏がビジネスの最前線で出会った「説明が上手い人」がどんな話し方をしているのかを観察し、導き出した著書『「説明が上手い人」がやっていることを1冊にまとめてみた』から「説明下手な人の特徴」を一部抜粋・再構成してお届けします。
ハック大学ぺそ著/アスコム
『「説明が上手い人」がやっていることを1冊にまとめてみた』
パソコンを初めて購入するお客様へのセールストークで
[×]「パソコンのご購入は初めてなのですね。では、おすすめのパソコンのスペックを詳しくご説明しましょう。こちらがお買い得の商品になっていて、CPU、メモリ数ともに申し分ないので処理速度も速く、安定した作業ができます。」
単なるスペックの説明に終始しており、相手の知識量や何を知りたがっているかを全く考えていない。
[○]「パソコンのご購入は初めてなのですね。どんなことに使うご予定ですか?もし動画編集をされるのでしたら、パソコンに負担がかかる作業なので、作業領域の大きさを表すメモリ数が大きなものを選ぶのをおすすめします。」
説明をする前に相手の期待を探り、目的に合致した情報を伝えているので感謝されやすくなる。
相手の「レベル」と「期待値」を知ればグッとわかりやすく話せる
説明には必ず相手がいます。そして、その相手は常に決まっているわけではありません。よく知っていてある程度「データ」がそろっている相手もいれば、初見で「データ」を全く持っていない場合も当然あり得ます。
相手が誰であろうと、相手が何を知りたいのか理解した上で説明するのは鉄則です。したがって、よく知らない相手であればできる限り探りながら、そしてよく知っている相手ならさらに日々情報を集めて、相手が求める内容を精度高く説明できるようにすると、説明力はぐっと上昇していきます。
中でも、相手を知るうえで欠かせない要素は、相手の立場や肩書き、権限など外形的、表面的な情報だけではありません。相手の「レベル」、そして説明に対する「期待値」を探ることも重要です。
なぜなら、それらによって説明の内容ややり方が異なってくるからです。
■「レベル」に合わせて新しい情報を2割入れる
「レベル」というと、知的な能力を推し量るようで、なんだか少し偉そうな話に聞こえますが、これは言い換えると、これから説明する内容に対する相手の「理解度」のことです。
極端な例で比較しましょう。自社の扱っている専門的な商品やサービスについて、
・単なる利用者である顧客の担当者に説明する場合
・自分の上司や先輩に説明する場合
この2つでは、相手の理解度が違うのは当然です。
より細かく考えると、長年付き合いのある担当者と、部署を異動してきたばかり、あるいは社会人になったばかりの新しい担当者でも違いますし、上司や先輩の担当してきた分野によっても違うでしょう。まずは、それを把握することが大切です。確度の高い情報があればベストですが、「仮説」でも構いません。
「レベル」を決めたら、その「レベル」で理解できる範囲に限って説明を行います。低めの相手ならば、後でも述べる通り専門用語を極力省いてかみ砕いた説明を行い、さらに説明をうまく受け取ってもらえなかった場合のやさしい解説も用意します。高めの相手なら、そういった情報は不要なのでバッサリ省きます。
ただいずれの場合も、相手にとっての「新しい情報」は2割程度にしておくといいと思います。これは、あくまで私が説明したり、説明を受けたりした経験をもとにした「体感値」ですが、全ての説明のうち、知らない内容が2割を越えると、聞く側にとってとたんに厳しく、耐えられないものになってしまうのです。
■相手の「期待値」を知る
「期待値」とは、相手が説明を受けることで何を知りたがっているか、何が理解できればメリットになるのか、と言い換えることができます。こちらも、簡単な例で説明しましょう。
相手が「コンビニに行きたい」と言った場合、何を説明すればいいでしょうか? これ、実は「期待値」に応じて、大きく2通りの考え方が存在します。
ひとつは、「コンビニ」の位置を知りたいケース。相手に地図をわかりやすく示し、一番近いコンビニへの道順を説明すれば期待値を満たせます。
しかし、もうひとつ「コンビニで必要なモノを買いたい、用件を済ませたい」である可能性もあります。電池が足りないなら、わざわざコンビニに行くまでもなく自分が予備を持っていて、渡せば済むかもしれません。コピーしたいのなら、コンビニよりも早く安価に済ませられる機械が別の店にあるかもしれません。必要なモノが実はAコンビニでしか扱っておらず、一番近いBコンビニに行っても入手できないかもしれません。
「期待値」をあらかじめ知っておいた方が、そしてお互いに共有しておいた方が、説明の質も、相手の満足感も上がります。
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自らのビジネスへの向き合い方を再検証し、気づきとともに、正しいテクニックを学べば格段に身に付きやすくなるはず。筆者がビジネスの現場で「説明が上手い人」から学び、実際に試して確実に役に立つことを証明できたスキルだけを厳選した『「説明が上手い人」がやっていることを1冊にまとめてみた』。ぜひ「考え方」と「テクニック」の両方を学んで、ビジネスの荒波を乗り越える力を身に付けてほしい。
ハック大学ぺそ
ビジネス系YouTuber、1988年生まれ。主にYouTubeチャンネル「ハック大学」を通じて、仕事術、キャリア戦略などビジネスに役立つ情報を発信。チャンネル登録者数は25万人を超える。チャンネルにアップされた動画のなかでも、説明に関する動画は人気のコンテンツ。専業YouTuberではなく、普段は外資系金融機関に勤める現役のビジネスパーソンで、年収は約2000万円。著書に『行動が結果を変える ハック大学式最強の仕事術』(ソシム)、『「説明が上手い人」がやっていることを1冊にまとめてみた』(アスコム)がある。