フェアユースは著作権に関する言葉ですが、意味を理解していないと間違った使い方をする可能性があります。日本では一般的な考え方ではないので、よく知らない人も多いかもしれません。どのような意味があるのか、詳しく見ていきましょう。
フェアユースとは
フェアユースは音楽・映像・小説など、さまざまな著作物との関連が深い言葉です。どのような意味があるのか、見ていきましょう。
アメリカで適用される著作権に関する言葉
フェアユースはアメリカの著作権法に登場する言葉で、日本語に訳すと『公正使用』『公正利用』という意味です。
日本では著作者に無断で著作物を使用すれば、罪に問われます。しかしアメリカでは、ある一定の条件や要素を満たしていれば、無断で使用しても著作権の侵害に当たりません。
アメリカで著作権の侵害で訴えられた際に、訴えられた側が適切に使用していることを主張するシーンなどで使われています。
フェアユースの条件・要素
フェアユースの条件や要素には、さまざまなものがあります。著作権を侵害しないためには、その利用方法が適切かどうかを把握した上で使用しなければなりません。どのような条件を満たせばよいのか、チェックしましょう。
利用目的
どのような目的で著作物を使用するかは、その利用方法がフェアユースに該当するかどうかを検討するときに重要な要素の一つです。
著作物が『変容的に利用されているかどうか』は、重点的にチェックされます。オリジナルコンテンツのただのコピーになっている場合は、フェアユースにはなりません。
批評・学術研究・パロディーなどに著作物を利用する際は、フェアユースが認められる場合が多いでしょう。営利目的・非営利目的の両方でフェアユースが認められますが、非営利目的の方が有利になりやすいといえます。
例えば、個人的に映画紹介やレビューなどを書くために、その作品の一部分を使用した場合、フェアユースが認められる可能性は高いでしょう。
著作権のある著作物の性質
著作物が持つ性質も重要な要素であり、フィクションとノンフィクションのどちらに近いのかによっても、フェアユースかどうかを判断する材料になります。
より『創造的な著作物』である方が、フェアユースが認められづらいのです。例えば、写真は著作物として認められますが、自然や街などのありのままの風景を写した写真は創造性が低いといえます。
独自の効果が加えられていたり、著作者以外には実行が難しい創造的な工夫が感じられたりする写真であれば、フェアユースが認められづらいでしょう。
使用された部分の量と実質性
著作物をどの程度の割合で使用しているかは、フェアユースかどうかを判断する要素の一つです。使用している分量が多ければ、オリジナルコンテンツをコピーしているだけだと判断される可能性が高くなります。
著作物を使用している範囲が少ない方が、フェアユースであると認められやすいでしょう。ただし、使用している部分が著作物の『根本にかかわる部分』であり、別の作品になっていると認められない場合は該当しません。
オリジナル作品が受ける影響
オリジナルの作品がどのような影響を受けるかも、チェックされる要素です。著作物を使用したことで、オリジナルの作品が市場での価値を失ったり不利益を被ったりすると判断できる場合は、フェアユースだと認められません。
著作物のコピーではなく変容的であると認められる場合には、オリジナルの作品と競合しないので作品の価値を下げるとは考えにくいといえます。
フェアユースだと認識してもらうには、変容性を高めオリジナルの作品になり代わらないような使い方をしなければなりません。
日本でも適用されるの?
日本にも著作権法があり、著作権を持つ人以外が勝手に作品を利用することはできません。利用したい場合には著作権者に許可を求め、使用料を払って利用するのが普通です。日本では、フェアユースはどのような扱いになっているのでしょう。
現在は適用されていない
フェアユースはアメリカにおけるルールであり、日本では認められていない考え方です。かつて日本でも導入が検討されていた時期がありますが、権利者たちの賛同を得られず実現には至りませんでした。
しかし、ベンチャー企業などでフェアユースの整備を進めた方がよいとする声が、ないわけではありません。アメリカにはグーグルのように、フェアユースの恩恵を受け、上手にビジネスを進めている企業もあります。
検索エンジンに情報を掲載するには、WEBページをいったんコピーする必要がありますが、日本の著作権法では、著作権者に許可を取る必要があったためなかなか整備が進まず、後れを取ってしまったとされます。
急速なIT化・デジタル化が進む社会で日本企業が取り残されないためにも、『日本版フェアユースの是非』が問われているのです。いずれアメリカのように、日本でもフェアユースが取り入れられる日が来るかもしれません。
著作権を侵害しないためにできること
日本で著作物を利用したいときは、著作権法を守って使用することが大事です。私的利用や引用以外で使用する際は、許可を取らなければなりません。
私的利用とは、家庭などで個人的に使用する場合を指します。しかし、利用したい画像や動画などを『違法サイト』から収集した場合は、著作権侵害に当たるので注意しましょう。
よりよい著作物を生み出すために、図書館や学校などにある資料の複製や引用を行う場合も、著作権の侵害には当たりません。
ただし、適切に引用を行うためのルールをすべて満たすことが必要です。例えば、『引用の必要性が認められる』『出典を明記する』『改変しない』『本文と引用部分を明確に分ける』といった、複数の条件があります。
構成/編集部