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団塊ジュニア世代に重くのしかかる不動産の相続問題と相続税対策

2022.11.30

2025年には団塊の世代が75歳以上になることで、相続が増える「大相続時代」が到来する。その子世代である団塊ジュニアは相続を受ける側として期待が高まる一方で、不動産の相続については相続税がかかるうえに、その後も固定資産税やマンション管理費・修繕積立金なども重くのしかかる。

できるだけ負担を相続税対策に詳しい弁護士に、相続を受ける側が行っておきたい対策を聞いた。

「大相続時代」には東京の資産が約38兆円増加する?

高齢化社会にともなう死亡数は2040年頃にピークを迎える見込みがある。高齢者の死亡は同時に「相続」の問題が生じるということだ。やがてくる「大相続時代」には、果たしてどんなことが起きるのか。

三井住友信託銀行が先日発表したレポートによれば、いくつかの統計を組み合わせて算出した試算によると、今後日本で30年程度の間に相続される金融資産総額は650兆円弱で、うち2割である125兆円が地域をまたいで移動する見込みだという。

親と子が別の地域に住むケースが多いことから、世代間のみならず、地域間の資産移動も多発しているという。その資産の移動先として突出して多いのは東京圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)。全国から58兆円が流入し、他地域への流出額を差し引いても、相続の発生に伴い38兆円の資産増加となる。この結果、家計金融資産の4割超が東京圏に集中することになる。相続は、東京への家計資産集中が進む大きな要因になるという。

同調査を行った調査部の青木美香氏は記者発表会で「近年の相続で増えているのは、離れて暮らしている親子間の相続です。特に『地方の親×大都市圏の子』の組み合わせは、相続適齢年代で推定1,200万組程度と試算。それに伴い『地方から都市圏』へと金融資産が流れることが見込まれます。

相続の発生によって地域をまたいだ資産移動が起こった結果、東京圏の金融資産保有額が大きく増える一方、地方では『金融資産の流出』という問題と直面する可能性が高く、地方衰退につながりかねません。うまく地域に還元していく、お金をまわしていくことも大事なのではないでしょうか」と述べた。

そして「特に不動産の相続がしっかりされなければ、空き家問題が生じます。資産を残すにせよ、残さないにせよ『資産をどうしたいか』を考え、親子で話し合っておくことの意義は大きいのでは」と述べた。

弁護士に聞く!不動産相続で発生する費用とは?

今後、不動産の相続を受ける子世代は増えていくだろう。もし自分がそうなる予定がある場合には、相続税をはじめとした相続後に必要な費用はどのくらいかかるのか、気になるところだろう。

そこでAuthense法律事務所の弁護士で、相続案件を多数取り扱ってきた堅田勇気氏に話を聞いた。

【取材協力】

堅田 勇気(かたた ゆうき)氏
神奈川県弁護士会所属。一橋大学法学部法律学科卒業。相続および不動産法務を中心に数多くの案件を取り扱う。不動産に関する知見を活かし、相続人が30人以上の案件など、複雑な相続案件の豊富な解決実績を有する。依頼者に寄り添いながらも第三者的な視点に立った助言を行うことをモットーとしており、迅速な対応による早期解決で依頼者の利益を最大化することを心がけている。
Authense法律事務所プロフィール
https://www.authense.jp/lawyers/lawyer_katata/

■相続税

「相続税の基礎控除額を超える案件では、不動産を取得した場合でも相続税がかかりますので、相続税対策も必要になります。不動産を取得した場合、現金を取得したわけではないので、相続税の原資の捻出が必要になります」

【相続税の基礎控除の計算式】
3,000万円+法定相続人の数×600万円

■代償金

「もし相続人が複数いる中で、自分一人が不動産を相続する場合には代償金がかかる可能性があります。不動産を取得した人が自分の財産から、他の相続人に対して代償金を支払わなければならなくなるケースがあるのです。

例えば、不動産の『時価』が5,000万円で、遺産たる預貯金が1,000万円しかないようなケースでは、法定相続人が子2人のみの場合、法定相続分は均等となりますので、不動産を取得した相続人は、不動産を取得しない相続人に対し、自分の財産から2,000万円を支払わなければなりません。これで相続人双方が3,000万円分を相続を受けたことになります。

遺産分割調停・審判の実務では、不動産を評価する際、固定資産税評価額や路線価(相続税評価額)ではなく、『時価』を用いて不動産を評価するため、代償金の金額が思いのほか高額になることが多いです。なぜなら、時価は、固定資産税評価額や路線価より高くなることが多いためです。

遺産である不動産に自分も居住している場合など、その不動産を取得する必要がある場合には、代償金の支払いがなくて済むように、もしくは少なくて済むように対策をとる必要があります」

■不動産取得後の費用

「不動産を取得した場合、固定資産税や都市計画税、マンションの管理費や修繕積立金、その後の修繕費、リフォーム費用等の維持費、さらには、売却する場合の譲渡所得税、住民税等の負担があります」

不動産相続の際に損しないための対策

これらの不動産相続でかかる費用について、できるだけ損しないようにするためにはどんな対策をとれば良いか。堅田氏は次の4つを挙げる。

1.遺言

「不動産を取得した場合には、代償金の支払いが必要になる可能性があるとお伝えしましたが、支払わなくて済むように、遺言で不動産の取得者を指定しておくのがよいと思います。遺言で取得者が指定されていれば、その遺言が無効にならない限り、代償金を支払うことなく、その不動産を引き継ぐことができます。ただし、遺留分(※)の問題は残りますので、遺言作成時に、別途、保険への加入や養子縁組等、遺留分対策をとることも重要です」

※遺留分:一定の相続人(配偶者、直系卑属、直系尊属)に対して、遺言によっても奪うことのできない遺産の、最低限保証された相続分のこと。

2.生前贈与

「不動産を生前贈与しておき、あらかじめ遺産から外しておく方法です。これにより遺産分割時の分割対象から外れますので、その不動産を取得しても、他の相続人に対し、代償金を支払う必要はなくなります。ただし、贈与時に贈与税・不動産取得税・登記費用がかかる点と、遺産分割時に不動産の生前贈与が特別受益とみなされて、遺産分割時に他の財産を受け取れない、あるいは少ししか受け取れない可能性があります。贈与者に、明示的に、特別受益の持ち戻し免除の意思表示をしてもらったり、相続時精算課税制度等の税制上仕組みの利用を検討したりする必要があります」

3.家族信託

「生前に家族信託契約を締結し、親を委託者、子を受託者とし、信託契約終了時の財産帰属者を子としておけば、遺産から外れますので、遺言と同じ効果があります。そのため、代償金を支払うことなく、当該不動産を取得可能です」

4.小規模宅地特例等の相続税の特例や養子縁組を活用し、相続税を安く抑える

「一定の要件を満たす不動産については、小規模宅地の特例を適用し、相続税の評価額を最大8割減らすことができます。相続税申告に慣れている税理士に依頼をし、生前から、特例の適用の可否、現段階で特例を適用できない場合、どのような対策が考えられるかを確認しておくのが良いでしょう。また、養子縁組を用いることで相続税の基礎控除額を増やすことができますので、相続税を安く抑えることも可能です」

兄弟姉妹で不動産を遺産分割する場合の注意点

いざ、親の不動産相続のタイミングがきたら、兄弟姉妹がいる場合は遺産争いにならないか懸念される。知っておくべき注意点は?

「不動産を取得したいと思う側は、『亡くなった父母と同居し面倒をみてきた』『先祖代々の土地を守ってきた』という思いが強い一方、その他の相続人は、『実家に住んでいた兄弟ばかり家賃の支出を免れ、生活費も親から多めに援助してもらっていい思いをしてきた』という思いが強く、父母が亡くなったことを契機に、兄弟姉妹間の感情的な対立が激しくなるケースも多いです。生前から、兄弟姉妹の間でも、父母が亡くなった後の不動産の相続について、よく話し合っておくことが重要です。

また、遺産分割時に代償金を支払えないからといって、不動産を共有取得とすることは避けたほうが良いでしょう。その後の世代に問題を持ち越すことになるだけです。子、孫、ひ孫と、関係者が多くなっていき、将来その不動産を売却しようと思っても、行方不明の方がいたり、連絡がとれない方がいたり、認知症の方がいたりすると苦労することになります」

大相続時代に相続人として損しないために

これからの時代は、相続が増加するといわれている。相続人として、損しないために押さえておくべきことについて、堅田氏にアドバイスしてもらった。

■親の生前から財産管理をしっかりしておく

「遺産分割の紛争も多いですが、父母の最期まで面倒をみていた側が父母の預金を使い込んだとして、使途不明金の返金請求がされるケースも増えています。同居している子どもと同居していない子どもの確執から、父母の死を契機に、それまでに我慢していた感情が爆発し、収拾がつかなくなることも多々あるのです。

そうならないよう、同居している子は、親の財産の管理と自分の財産の管理はしっかりと区別して行うこと、親の財産を使った場合には必ず家計簿をつけ領収書を保存することが重要ですし、同居していない子は、一方的に使途不明金と決めつけるのではなく、まずは、親の面倒をみてくれた子に感謝の意を伝え、同居していた子からの説明を聞くことが重要です。この心がけを持つだけでも、感情的な対立をやわらげ、紛争を一つ減らすことができます」

■遺言の遺留分の紛争を避けるための対策を

「遺言を作成しても、遺言無効や遺留分の紛争に発展するケースがあります。特に遺留分の紛争は増えているという印象です。遺言作成時に、遺言者の健康状態や遺言作成時の様子を動画などでしっかり記録すること、遺留分対策を兼ねた遺言書作成をすることが大切です。また、なぜそのような遺言を作成したのか、遺言者の気持ちや、それぞれの子への感謝の想いを、遺言の付言事項に書いておくだけでも、感情的な対立がやわらぎ、紛争を一つ減らすことができます」

「相続は、法的な対立と感情的な対立が入り混じる複雑な紛争です。簡単ではありませんが、法的な対策のみではなく、生前から、感情面の整理をしておくことや、他の相続人への感謝の気持ちや敬意を持つことで、感情的な紛争をなくすことも重要です。感情的な紛争がなくなれば、自然と法的な問題も合理的に解決できます」

この先数年もしくは数十年の間に親の相続を受ける立場になる人も多いだろう。あらかじめどんな金銭的な負担があるか、また、トラブルが起きる可能性があるのか先読みしておくことが重要といえそうだ。そして感情面の対策は何よりも先にくるもの。ぜひ円満な相続を目指したい。

【レポート出典】
三井住友信託銀行「相続に伴う家計金融資産の地域間移動-年間死亡数140万人超の『大相続時代』~125兆円の金融資産が地域間を移動、東京圏に4割が集中」

取材・文/石原亜香利

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