ある特定のジャンルの製品が安くなる、ということは必ずしもいいことではない。
スマートウォッチがまさにそうだが、Apple Watchのような上級機種に人気が集まれば、そのおこぼれを狙う意図を隠し切れていない下級機種が登場する。
そんな製品は、言わずもがな粗悪品だ。
が、市場というものはある意味で残酷である。
火のつっかえ棒にもならないような代物は容赦なく淘汰してしまう。
その後に残るのは「安くていい製品」だ。今回の記事では、Amazonにて1万円以下で購入できる『スマートウォッチA50』について解説しつつ、「低価格スマートウォッチの進化」に関しても書いていきたい。
音楽保存用のストレージを内蔵
スマートウォッチは、当然ながらBluetoothを使ってスマホと接続するガジェットだ。
しかし最近では「スマホに極力頼らないスマートウォッチ」なるものも登場している。
たとえば音楽を聴く場合、ただ単にスマホを操作するためのリモコンではなく、スマートウォッチ自体に音楽が収録されていればそれに越したことはないはずだ。
というわけで『スマートウォッチA50』には、128MBの内部ストレージが搭載されている。少なく見積もっておおよそ30曲分、といったところだ。
今、さらっと「128MBの内部ストレージが搭載されている」と書いたが、これは低価格帯スマートウォッチでは例外的な機能である。
ミドルレンジモデルのスマートウォッチでも、内部ストレージが用意されていないもののほうが多いはずだ。
ともかく、128MBもあれば好きなアーティストのアルバム2、3枚はこれに保存することができる。
意外な性能の内蔵スピーカー
この『スマートウォッチA50』を手に取って筆者が感じたのは、「意外な高級感」である。
筐体はステンレスを使用していて、見た目にも頑丈な印象が見受けられる。
画面も粗が少なく、上級機種ほどの画質ではないにせよチープな感じもしない。
このあたりは一言で言えば「及第点」だ。しかし後述する販売価格を考慮すると、このパフォーマンスは「及第点」ではなくむしろ「優秀点」なのではとも思える。
スピーカーとマイクも内蔵されているため、スマホと連携した音声通話ももちろんできるのだが、筆者はその中でもスピーカーに注目したい。
たまたま『スマートウォッチA50』とスマホを接続した状態でAmazonプライムを視聴したが、その際に流れた音声に筆者は驚いてしまった。
スマホで聴くよりも明瞭で、ボリュームも大きいのだ。
たかだか腕時計の筐体に内蔵できるスピーカーなど決して大きいものではないはずだが、それでもスマホにデフォルト搭載されているスピーカーよりは遥かに性能が良い。
ハンズフリー通話には最適だ。
Bluetoothは最新規格
『スマートウォッチA50』と接続できるアプリは『V Band』というもので、心拍数やスポーツ測定機能、睡眠トラッキング等の基本的機能は一通り備えている。
その上で『スマートウォッチA50』は、合計19種類の運動モードを搭載している。IP68防水防塵機能もあるため、これを着用した状態でプールの中に入ることも可能だ。
ついでに書くと、『スマートウォッチA50』のBluetoothのバージョンは5.3である。5.3!? 最新規格じゃないか!
ところどころで上級機種に追随できるような機能を与えられている『スマートウォッチA50』、この製品はAmazonで5,980円という価格で設定されている。
驚くべきことに、6,000円もしないのだ。ほ、本当にこの価格で採算が取れるのか!? と一瞬だけ心配になってしまった。
しかし、これが「製品の進化」でもある。
スマートウォッチはこれで十分じゃないか!?
スマートウォッチという製品自体が、ある意味で「成熟化」している。
すると、多くの人にとっての「必要な機能」と「不必要な機能」が明確になってくる。
「必要な機能」だけを残してあとは省いてしまえば、価格を抑えたスマートウォッチを開発できるようになるのではないか?
『スマートウォッチA50』は、キャッシュレス決済が可能になるNFCは搭載されていない。GPS(ロシアのGLONASSや欧州のガリレオ等)以外の測位システムに対応する機能もない。
が、それを必要としている人がどれだけ存在するのか……という話にもなるだろう。
実は筆者自身、せっかく手に入れたNFC内蔵スマートウォッチを持て余している状態だ。スマホもタッチ決済対応クレジットカードもあるのだから、今更「キャッシュレス決済のできるスマートウォッチ」など持つ必要性はあまりない。
ガジェットライターを名乗っている男がこのような具合なのだから、ごく普通の生活を送る人は尚更のはず。
及第点で低価格、そして高品質のスマートウォッチ。このような製品こそ、本当の意味で時代に求められているのかもしれない。
【参考】
スマートウォッチA50-Amazon
取材・文/澤田真一