RFIDの導入事例
RFIDは、管理できる在庫量や商品数が多く、大規模な事業展開をしている大企業が率先して導入を進めている傾向にあります。RFIDの導入により、スケールメリットの最大化に成功している企業の事例を3件紹介します。
ユニクロ
アパレルブランド『ユニクロ』や『GU』を展開するファーストリテイリンググループでは、全商品にRFIDタグを取り付けてセルフレジを導入しています。
買い物カゴを置くだけで、カゴの中の商品に付いたRFIDタグを自動で読み込むセルフレジの登場は、各業界がRFID導入による効果を注目するきっかけとなりました。
RFID導入により、レジ待ち時間の削減はもちろん、商品の品出しや接客など、レジ業務以外への最適なスタッフ配置が可能となっています。
また、倉庫での検品作業の効率化にも、RFIDタグの導入は効果を発揮しており、数十点の商品の検品を一瞬で完了することが可能です。
もちろん倉庫、店舗の双方における棚卸作業でも、『複数の商品の一括読み込みが可能』『ダンボールに入ったままで読み込みが可能』というRFIDのメリットが功を奏し、格段に業務効率が向上しています。
ローソン
経済産業省主導のもと、ローソンでは、セブン-イレブンなどのコンビニ各社と共同で『コンビニ電子タグ1,000億枚宣言』を策定し、2017年より電子タグ(RFID)を活用した実証実験を行っています。
過剰在庫や食品ロスといったコンビニ業界が抱える課題に対して、サプライチェーン全体の効率化・健全化を図る目的で、RFIDタグを活用している点が特徴です。
消費期限の近い商品対象のクーポン配布や、セルフレジの導入、メーカーや物流センターとの在庫状況の共有といった観点から実験を進め、2025年までには全商品に電子タグを利用することで合意しています。
豊田通商
豊田通商では、物流業界が抱える人材不足や働き手の高齢化という課題を解決するため、サプライチェーンマネジメントにRFIDを活用しています。
自動車部品の国内物流センターで実施したRFIDの試験導入を皮切りに、インドネシアの物流拠点でもRFIDの導入を進め、サプライチェーン上にある在庫数を可視化し、受発注や在庫管理業務の高度化を目指しています。
失敗しないRFIDリーダー選びのポイント
RFID導入に欠かせないRFIDリーダーライターですが、業種や業務内容に応じてさまざまなタイプのものが販売されているため、誤ったタイプを選ぶと導入が失敗に終わってしまいます。
RFIDリーダー選びにおいて重要な、二つのポイントについて確認しましょう。
種類ごとの特性を理解する
RFIDリーダーライターは、RFIDタグのデータを読み取り、そのデータを処理システムに反映させるための仲介役です。
多くのリーダーライターは作業効率の向上を目的として設計されているため、種類ごとに適した業務やメリット・デメリット、コストが異なります。
代表的な5種類のRFIDリーダーライターの違いを確認しながら、比較・検討を進めることが大切です。
【セパレート型】
- 適した使い方:小売店舗での棚卸、倉庫内でのピッキング、紛失物の探索
- メリット:コンパクトで持ち運びしやすい、操作性がシンプル、導入コストを抑えられる
- デメリット:ペアリングデバイスとセットで持ち歩かなければならない
【ライドオン型】
- 適した使い方:店舗バックヤードでの検品作業、倉庫内での入出荷検品
- メリット:ペアリングデバイスをリーダーライターに取り付けられるため片手が空く
- デメリット:見た目も重量も大きい
【モバイル搭載型】
- 適した使い方:倉庫や工場での入出荷時の検品作業、設備点検、建設現場での資材管理
- メリット : 1台でデータの読み取り・書き換えからデータ処理までが可能、ペアリングデバイスが不要、さまざまな機能が搭載されている
- デメリット:リーダーライター機能とハンディ機能のいずれかが故障すると、本体ごと修理しなければならない、導入コストが比較的高め
【デスクトップ型】
- 適した使い方:セルフレジ、生産ライン
- メリット:手作業による読み取りが不要、設置が比較的簡単、バッデリー切れの心配がない
- デメリット:長距離では読み取れない、設置スペースの確保が必要
【固定型】
- 適した使い方 : トンネルゲートでの商品の入出管理や従業員の入退管理
- メリット: 高精度な読み取りが可能、複数のアンテナを設置できる
- デメリット : アンテナ費用が別途発生する、導入コストが高くなる、使用場所が限定される
周波数によって申請を忘れない
RFIDリーダーライターは、電波出力が高いものほど読み取り精度が高まります。また、電波出力が大きいほど、タグとRFIDリーダーライターが離れていても、長距離間でのデータ通信が可能です。
電波出力の仕様によっては電波の利用申請が必要となるため、リーダーライターの仕様確認の際には、必ず出力の確認を忘れないようにしましょう。
申請の要不要を決定する条件は以下の通りです。
- 申請が必要 : 電波出力が250mW以上1W以下(『高出力』に分類)
- 申請が不要 : 電波出力が250mW以下(『特定小電力』に該当)
また、申請時の局種は『陸上移動局』を選択しておいた方が無難です。電波の利用場所を陸上移動局にしておけば、日本全土のすべての陸上において、長距離対応のリーダーライターの使用が可能となります。
構成/DIME編集部