スマホやパソコンの急激な値上がりもあり、中古家電市場にも注目が集まりつつある。とはいえ、いまだ生活に密着した家電のリユース品は、取り扱いがかなり少ない印象だ。なぜ中古の生活家電は広がらないのか? その実情や賢い購入の方法について、識者の意見をもとに検証した。
家電テクニカルライター 藤山哲人さん
1967年生まれ。あらゆる家電を使い込んで比較する〝体当たり家電ライター〟として、数々の媒体に執筆。TBS系『マツコの知らない世界』には番組最多となる6回出演。
質の良い中古家電が認知されれば市場は盛り上がる
スマホやPCと比較すると圧倒的に数が少ないのが生活家電の中古品。「メルカリ」や「ジモティー」など、個人による中古家電の売買はあるが、保証付きの中古家電を取り扱っている店舗はごく一部に限られているのが現状。家電テクニカルライターの藤山哲人さんはこう解説する。
「デジタル家電のリユースは進んでいますが、生活家電はメーカーがようやく中古品の回収を行なっている段階です。しかも、そのほとんどが製品をバラして素材化するリサイクル。展示品や旧モデル品を含めた一般に言うアウトレット品以外に、中古品をきちんと整備して、再度商品化するリユース家電はまだまだ少ないというのが現状です」
そもそも大型家電は耐久年数が長いため、中古家電が出回りにくいという背景もあるようだ。
だが、家電量販店ではヤマダデンキが2015年よりアウトレット・リユース店を展開。2022年には群馬県藤岡市に最新式ハイテク工場を増設し、リユース家電の増産体制を強化する動きを見せている。
「生活家電も円安の影響により、値上げの動きが相次いでいます。しかし、近年は安くて質の高い中国製家電がどんどん出てきているので、わざわざ中古家電を選ばずとも、新品で安価の中国製、という選択肢もある。一方で、『中古でも、国産家電』という人は一定数存在しますし、特に冷蔵庫や洗濯機はまだまだ日本の技術が世界トップです。ヤマダデンキのような体制をもとに、質の良い中古の国産生活家電がもっと流通されるようになれば、今後さらに中古市場は盛り上がりを見せると思います」
また、近年はSDGsへの意識の高まりもある。新品を買い替えるよりも、リユース品を選びたいと考える人が増えるかもしれない。
「ただデジタル家電と違い、生活家電の保証付きリユース品の選択肢があることを、知らない人も多い。市場の活性化にはまずはそれを知ってもらうことが必要。中古品の場合、部品寿命が長い家電を選ぶのもコツ。例えば液晶画面の寿命は約8年。2〜3年後には徐々に暗くなり始めるので、新品か新古品がおすすめです」
リユース品には抵抗があるが、少しでもお得に購入したいという人には、外箱が破損しただけの外装不良品や、旧モデル=型落ちなどの〝新古品〟という選択肢も。家電量販店のアウトレット店では、そうした商品が、在庫限りで多く並ぶ。
「旧モデルより最新モデルのほうが必ずしもいいというわけではありません。新古品はリユース品に比べれば値引き率は低いですが、新品もしくは新品同様ですし、メーカー保証の付帯品も多いんです」
生活家電でも広がりつつある、中古品や新古品を選ぶ新たな選択肢。新品を含め、上手に選びたいものだ。
そもそも家電の「アウトレット」と「リユース」の違いは?
家電のアウトレットは、基本的に未開封品や展示品など、一度も流通していない商品を販売している形態。リユース品は主に消費者の手に渡った商品を家電量販店やリサイクルショップが買い取り、洗浄や点検の後、再販している商品を意味する。
箱のまま並べられた外装不良品や展示機(ソフマップ)、リユース商品(ヤマダデンキ)など、様々な新古・中古品を扱うアウトレット店が増加中。
教えて!藤山さん!リユース&アウトレット家電の買い方指南
あらゆる家電を活用することがライフワークの藤山さんが、リユース&アウトレット家電の賢い選び方、使い方を解説。その基本を覚えておこう。
Q. リユースと新古品のおすすめジャンルは?
「外国産シェアが低い冷蔵庫や洗濯機。洗濯機はドラム式の乾燥機能が一部を除き、約4年で要修理といわれているので、リユースなら縦型、掃除機はスティック型のバッテリー交換時期を考慮すると、キャニスター型がおすすめです。家電は可動部品が大きいほど寿命が短くなりますが、ドアやフタの開け閉め程度と、可動部が少ないオーブンレンジや炊飯器などの調理家電は長く使えますので、リユース向き。目的がニッチな小型調理家電のお試しや、稼働時期が短い季節家電もアリですね」
リユースでお得に!
・縦型洗濯機
・冷蔵庫
・オーブンレンジ
・トースター
・炊飯器
・小型調理家電
・季節家電
・期間限定使用家電
ホームベーカリーなどの小型調理家電は「買ったけど使っていない」という人も多く、状態のいい中古が見つかりやすい。試しに使ってみたい人におすすめ。
新古品がおすすめ!
・スティック型掃除機
・ロボット掃除機
・ドラム式洗濯乾燥機(一部メーカー除く)
・液晶テレビ
・エアコン
ドラム式洗濯機の乾燥機能は特殊技術により8年持つメーカーも。専門業者への取り付け依頼が必要なエアコン、フィルター交換などの部品寿命があるタイプの掃除機は、本体以外のプラス料金についても考慮して選びたい。
Q. 安かろう、悪かろうにならない選び方のポイントは?
「中古家電が一番劣化しやすいのは電源回路のコンデンサーという部分ですが、素人が劣化具合を判断するのは無理。査定が大変なので、中古家電は家電量販店やリサイクルショップなどの、きちんと目利きができる人に査定してもらったものを購入するほうがいいと思います。これらのお店では商品の傷や劣化具合をきちんと明記していますし、店独自の保証も付いている。また中古家電の細かい部分の洗浄もしっかり対応しています。特にヤマダデンキでは専門のリユースセンターで細かい部分までしっかり洗浄しているので、その点安心感がありますね」
専門のリユースセンターを擁するヤマダデンキでは、細部まで点検を行ない、機能が正常に働くかチェック。
ヤマダデンキでは、アウトレットで最大6年、リユースでも最大24か月の長期保証を付帯。新古品では、メーカー保証が使えることも。
付属品の状況や商品の具体的な傷や変色などを記したシートを用意する店舗も。スタッフに聞くと状態を詳しく教えてくれる。
Q. リアル店舗かネット通販かどこで買う?
「中古家電を購入する際の選択肢として家電量販店のアウトレットやリサイクルショップ以外に、ネットを介した個人売買による取引もあります。希少性の高い商品との出会いや価格的な魅力が人気ですが、中には不正な方法で入手した商品が出品されていることも。保証がないことも多いため、すぐ動作不良を起こしても交換や返金ができず、自己責任になる。そうしたリスクを避けるには、クリーニングや整備、検査を施し、保証をつけた店舗で選ぶのが安心。こうした店舗は、専門のバイヤーが商品チェックや値付けを行なっているので信頼できます」
家電量販店のアウトレット
展示品や新古品からリユースまで、知識豊富な家電量販店スタッフのお墨付き商品が揃う。安定した品質と保証による安心感も魅力。
大手リサイクルショップ
様々なジャンルのリユース品を扱い、宝探し感覚の家電選びが可能。店舗独自の保証も付くが、家電量販店より期間が短いことも。
ネット通販
新古品からリアル店舗にはない年式の古いものまで、幅広い品揃え。家に居ながら掘り出し物を見つけられるのも◎。
取材・文/高山 恵