コロナ禍に起こった家電の品薄をカバーしたのが中古品だ。中古には動作不安や不衛生といった負のイメージがつきまとうが、最近の整備中古品は外観も内部も新品同然に再生。商品選びの新たな選択肢となっている。
徹底した点検体制で中古品は新時代へ
SDGsが叫ばれる時代の今を象徴するように、リユース市場が右肩上がりだ。使い捨てからモノを長く使う時代に変わり始めたといえよう。だが、「安いという理由だけで中古品を選ぶのは避けたほうがいい」と、家電テクニカルライターの藤山哲人さんは力説する。
「個人売買のフリマで手に入れる人も多いのですが、デジタル製品なら個人情報、生活家電なら衛生面などが気になるところ。安心して使いたいのであれば、しっかり整備を済ませた〝保証〟も付けている中古専門ショップで選ぶべきでしょう。生活家電については64ページで解説しますが、最近ではスマホなら3キャリア、パソコンならAppleやNECといったメーカー自らがリユースを行なう〝認定整備済製品〟を販売していますよ」
中古専門店でもしっかりとした整備体制をとっているところもある。ビックカメラ系列のソフマップは、中古整備を行なう「商品化センター」を設立し、厳格な品質チェックをした後に販売。またヤマダホールディングスも、大規模な生活家電のリユース工場を今年5月に新設した。
が、まだまだメーカー、量販店とも一部の企業が取り組んでいるだけで、リユースの土壌が整っているとは言えない。その理由を藤山さんはこう分析する。
「特にデジタルデバイスは製品サイクルが早く、数年経ったら使い物にならなくなる──というのが、主な理由です。メーカーの立場であればリユースするなら、むしろ内部の基盤から金やパラジウムなどといったレアメタルを取り出してリサイクルしたほうがいいのです」
そうしたジレンマはあるが、リユース市場に参加するメーカーは増えると予想される。実際、ヤマダデンキのリユース工場に大手メーカーが視察した──という話も。
「近い未来、整備を経た中古品と新品が同じ土俵で勝負する時代になるのではないでしょうか」
2020年のリサイクル・リユース業界の市場規模は11年連続で成長を続け、前年比2.5%増の2兆4169億円に到達。今年度は初の3兆円突破が見込まれている。