■連載/阿部純子のトレンド探検隊
「結局どれがいいのかわからない」マッチング疲れも顕在化
昨年12月に発表された、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの「マッチングアプリの動向整理」では、恋愛もしくは結婚意向がある独身者のネット系婚活サービスの利用は年々増加し、2021年の利用率は21.8%で、2020年の婚姻者のうち、ネット系婚活サービスを通じて結婚した人は11.1%となった。オンライン恋活や婚活マッチングサービス市場も活況化し、2021年が768億円、2026年には1657億円になると予測されている。
日本初の恋愛マッチングアプリ「Omiai」が誕生したのは2012年。2017年には主要な婚活マッチングアプリ事業者が加盟している「MSPJ(結婚・婚活応援プロジェクト)」が発足、業界の代表的なアプリが揃う“マッチングアプリ元年”となった。コロナ禍の2020年にはマッチングアプリが急成長。マッチングアプリの認知拡大でコモディティ化が進み、各社が付加価値合戦へ突入した結果、多種多様なマッチングアプリが登場。現在は100以上のマッチングアプリが乱立している。
AI恋活婚活アプリ「バチェラーデート」を運営する株式会社バチェラーデートは、移り変わりが激しいマッチングアプリ業界を「マッチングアプリ戦国時代カオスマップ2022年版」にまとめて公開。バチェラーデート代表取締役の祖山由佳氏に、マッチングアプリ業界の現状や課題、マッチングアプリを利用するユーザーの動向などについて話を聞いた。
「マッチングアプリは10年前と比べ30倍以上に増加し、カオスマップ作成に際し100近い同業のアプリを実際に使用して調べました。目的は友達探しから恋活、婚活まで幅広く、ターゲットも10代から60代以上まで、マッチング要素も、外見、学歴、再婚、高年齢、ハイスペック層や特定の職業などに特化したサービスも生まれています。多様なサービスに加えて、映画や本、ゲームやシェアハウス、メタバースでのマッチングなど、様々な特化型マッチングアプリが乱立している状況です。
特化型の新規参入が増える一方で、大手が運営するサービスのピボット(方向転換)やサービス終了も相次ぎ、移り変わりのスピードを見ても、2022年は『マッチングアプリ戦国時代』と言っても過言ではないと思います。
これだけ数が増えた背景には、新型コロナの影響で、社内恋愛や合コン、街コンなど出会いの場がなくなってしまったことが大きいと思います。家で一人で過ごす時間が多くなりパートナーが欲しいという気持ちが芽生えても、出会いの場が少なくなっているという状況から、マッチングアプリ、オンラインデートといったオンライン婚活サービスを利用する方が増加しています」(祖山氏)
特化型マッチングアプリが乱立し、移り変わりの激しい状況で、自分に合ったマッチングアプリを探すことが難しくなってきているという課題もある。どのアプリを選んでいいのかわからない、合わないサービスを利用するのが苦痛といった“マッチングアプリ疲れ”現象が顕在化し、今年3月に行われた「マッチングアプリ疲れに関する実態調査(メディア工房調べ)」では、91.5%の女性がマッチングアプリ疲れを経験と回答した。
「メッセージのやり取りがあるアプリはデートの段取りまでとても時間がかかります。見知らぬ方同士なので気遣いながらのやり取りになり、時間、場所のセッティング等、多忙な方が多いユーザーにとっては大きな負担です。
また、男性がデート費用を負担することが多いため、夕食の設定だと出費も高く、相手が今後会うつもりはない方だった場合、損をしたと感じる男性もいます。
いくつものアプリを併用して使う方もいますが、特に男性の場合、こうした労力や出費を重ねていくと、『出会いたい』という気持ちがどんどんすり減ってしまうこともあるようです」(祖山氏)
マッチングアプリの変遷を紐解くと、条件を検索して自ら相手を探し「いいね」やメッセージでアプローチを行うのが「第1世代・条件検索型」。自分で探すのは面倒ということで登場したのがプロフィールや写真を見てスワイプしながら選択する「第2世代・スワイプ型」。
見つけやすくなったものの、メッセージのやり取りなど段取りの煩雑さで、結局デートまでたどりつけない課題が生まれたことから、運営やサービスが合いそうな相手を提案しユーザーが選ぶ形で、比較的デートに行きやすい「第3世代・提案型」が登場した。
マッチングアプリ疲れが顕在化してきた中で、自分で相手を探さずにデートの段取りまでおまかせにできる「第4世代・自動マッチ型」が登場。自動マッチ型は今までの世代の課題をまとめて解決できるサービスで、当事者は動かなくても自動でマッチングされ、時間や手間をかけずに実際に会うまでを最適化したモデルとなっている。