ニュースでしばしば目にする軽挙妄動という四字熟語には、どのような意味があるのでしょうか?意味や由来とされる出典、言葉の使い方を解説します。併せて軽挙妄動の類義語・反対語の意味と使い方も見ていきましょう。
「軽挙妄動」とは?
ニュースや昔の文献を読んでいると、『軽挙妄動』という言葉が使われているシーンがあります。軽挙妄動とは、どのような状態を指すのでしょうか?言葉の意味や、使い方を解説します。
軽はずみな行動を指す言葉
軽挙妄動(けいきょもうどう)は『軽挙』と『妄動』、二つの熟語から成り立っている言葉です。
軽挙は、軽々しい行動を指します。妄動は、分別のない行動や善悪・後先を考えない軽はずみな行動のことです。
両方の熟語の意味から、軽挙妄動は軽はずみで分別のない行動を意味します。単に何も考えていないのではなく、思慮のなさから一般的によくないとされる行動に出てしまったときに使われることが多いでしょう。
由来は詳しく分かっていない
軽挙妄動という言葉がどうやって生まれたのか、はっきりとした出典はありません。江戸時代には使われていた形跡があるものの、成り立ちの詳細は不明です。
軽挙は韓非子、妄動は『戦国策』の一節に表記があり、中国の古典から生まれた言葉といわれています。どちらも古くからある言葉で、日本でも昔から使われていたと考えられるでしょう。
『軽挙』『妄動』『軽挙妄動』はいずれも明治から大正に活躍した文豪の小説でよく使われており、当時の知識人にとっては身近な熟語であったことがうかがえます。終戦後の文献でも見かけることがあり、書き言葉・話し言葉としての歴史は長いようです。現代では、ニュースで目にする機会が多いでしょう。
軽挙妄動の使い方
軽挙妄動は基本的に、書き言葉としてよく使われます。現代ではくだけた日常会話で使われることは少なく、話し言葉で使われるときは真剣な話が多いでしょう。
軽挙妄動は、行動を起こした人物の考えが明らかに足りない、または本来熟慮すべき人物がとんでもない行動をするといったような、非難の意味合いが強くなります。
日常会話で使うケースはほぼないものの、相手の悪口にもなりかねないため注意が必要です。主な例文を紹介します。
【例文】
- 軽挙妄動はつつしんで、学業に励むのが学生の本分だ
- このような軽挙妄動は今すぐやめるようにと、彼に対して強く非難した
- 普段冷静な男とは思えない軽挙妄動である
「軽挙妄動」の類義語は?
軽挙妄動には、いくつか類義語と呼べる言葉があります。それぞれの意味や例文を見ていきましょう。使う場面によっては、軽挙妄動よりも適した言葉があるかもしれません。
軽慮浅謀
軽慮浅謀(けいりょせんぼう)は、中国の歴史書『史記』でも使われている言葉です。趙世家の王と、謀反を企てる兄の物語に軽慮浅謀が出てきます。
軽挙妄動と同じように、考えの足りない行動を意味する言葉です。軽挙妄動が一般の行動であるのに比べて、軽慮浅謀は作戦や計略を練っているときに使われます。
軽慮浅謀は、明らかに失敗することが見えている計画や、浅い考えが原因で失敗してしまったときに使うのが一般的です。『謀』にはたくらみという意味もあり、何らかの悪い計画を指すことも多いでしょう。
【例文】
- あなたの計画は軽慮浅謀で、到底成功するとは思えない
- 軽慮浅謀が原因で、大変なことになってしまった
- あいつの考えは軽慮浅謀だから、失敗したんだ
短慮軽率
短慮軽率は浅い考えを指す『短慮』と、軽はずみな行動を指す『軽率』が組み合わさってできた熟語です。軽率短慮が使われることもあり、どちらでも間違いではありません。
浅い考えから、軽はずみな行動に出てしまう人に対して使われるのが一般的です。短慮・軽率は単体での認知度が高く、それぞれ分けて使われることも多いでしょう。四字熟語として使うシーンは、少ないかもしれません。短慮軽率の使い方と例文を紹介します。
【例文】
- 彼のやることはあまりにも短慮軽率で、見ていられない
- 短慮軽率な行動によって、事故が発生してしまった
「軽挙妄動」の反対語もチェック
軽挙妄動とは反対の意味を持つ言葉もあります。軽はずみな行動の反対語とは、どのような言葉なのでしょうか?主な反対語を紹介します。
熟慮断行
熟慮断行(じゅくりょだんこう)はしっかりと考えを巡らせる『熟慮』と、強い意志をもってやり遂げる意味の『断行』を組み合わせた言葉です。
軽挙妄動や短慮軽率とは、反対の意味を持ちます。深い考えに裏打ちされた行動は、よい結果をもたらすことが多いでしょう。
だらだらと考えるだけでなく、ここぞというタイミングで決断する意志も感じられます。例文を見ていきましょう。
【例文】
- この計画を成功させるには、熟慮断行が求められる
- 彼はこの問題について、熟慮断行しなければならない
- 熟慮断行の末、彼は結果を出した
隠忍自重
隠忍自重(いんにんじちょう)は耐え忍ぶ意味の『隠忍』と、言動・行動をつつしむ『自重』を組み合わせた単語です。
苦しい立場に立たされながら、自分を律して行動をつつしまなければならない状況のときに使われます。じっと耐え忍び、反撃や行動のチャンスをうかがうような場面です。
よくある例文を紹介します。
【例文】
- あなたの気持ちは分かりますが、今は隠忍自重するときです
- いつまでも隠忍自重をしていても仕方がない
- 彼の立場では、隠忍自重するしかないだろう
構成/編集部