こんにちは。
弁護士の林 孝匡です。
今回の記事では、
ビビらされて払ってしまったお布施って、返金してもらえるの?
について解説します。
多くの裁判では、
ザックリと以下のケースで返還を命じています。
× ことさらに不安や恐怖心を抱かせる
× それらをことさらに助長させる
× 自由な意思決定をできないようにする
× 資産状況から見てドダイ無理な献金を求める
以下、詳しく解説します。
宗教団体には信教の自由がある
冒頭で「こんなケースは返金を求めることができる!」
と申し上げましたが、若干ハードルは高めです。
なぜなら、宗教団体には信教の自由があるからです(憲法20条)
原則として、宗教団体があなたにお布施を求めることはOKなんです。
壺や印鑑などの販売もOKです。
ある裁判では、こう述べられています。
宗教団体が、当該宗教団体の宗教的協議の実践として、あるいは、布教の一環として、献金を求めることや、宗教的な意義を有する物品の販売などを行うこと自体は、信教の自由の一態様としての宗教活動の自由として保障されなければならない
さらに、「こんなことが起きるかもしれませんよ!」
というのも、ある程度はOKなんです。
それが科学的に証明できないことであっても、です。
ある裁判では、こう述べられています。
勧誘者が、当該宗教団体における教義等に基づく、科学的に証明できないような事象、存在、因果関係等を理由とするような吉凶禍福を説き、〜、その説明がおよそ科学的に証明できないことを理由として直ちに違法と評価すべきでない
このように、信教の自由(憲法20条)って、かなり強力です。
時の権力者から弾圧されてきた歴史があるので、
宗教団体の活動は原則として自由なんです。
宗教団体の働きかけが違法になるケース
しかし!
信教の自由とはいえ、野放しにされているわけではありません。
裁判所はザックリと、
「以下のケースは違法だ!」と判断しています。
× ことさらに不安や恐怖心を抱かせる
× それらをことさらに助長させる
× 自由な意思決定をできないようにする
× 資産状況から見てドダイ無理な献金を求める
ある裁判では、こう述べられています。
(このような判断は定着しています)
勧誘が、献金などを含む宗教的教義の実践をしないことによる害悪を告知するなどして、ことさらに被勧誘者の不安や恐怖心の発生を企図し、あるいは、不安や恐怖心を助長して、被勧誘者の意思決定を不当阻害し、被勧誘者の資産状況や、生活状況等に照らして過大な出捐をさせるようなときは、当該行為が形式的には宗教的活動の名の下に行われていても、もはや社会的相当性を逸脱したものとして違法の評価を免れない
具体例
ある裁判では、以下の働きかけはNGとなりました。
難しい言葉でいえば、社会的相当性を逸脱しており違法。
× 献金して祝福を受けないと病気が良くならない
× 先祖が苦しんでいるので助けましょう
× 借金までさせている
多くの裁判例を見ていると、健康系、先祖系のビビらしが多いです
ただ、OKのお布施もあります。
(裁判官は1つ1つ細かに見ていきます)
ある裁判では、以下はOKとなりました
違法とまでは評価できないと。
○ 儀式を運営するための寄付
○ 教義を教えた後の寄付(別にビビらせたわけではない)
NGかOKのどちらに転ぶかは、
裁判官が「この勧誘、不当に恐怖心を抱かせてるよね」
と考えるかどうかにかかっています。
宗教団体の責任
その献金の求め方はNG!違法!
と判断されれば、
あなたは「お布施を払え〜」って迫ってきた人に返金を請求できます。
(損害賠償責任:民法709条)
さらに!
あなたは、宗教団体に対しても「お布施を返せ!」と請求できます。
(使用者責任:民法715条)
使用者責任とは、
部下の責任は会社がとろうね、というような理屈です。
あなたができること
「このお布施、ちょっとおかしくないか…」
「もう出せない。返金してもらいたい」
と感じ始めたら、証拠を残しましょう。
・勧誘者との会話の録音
・メモ書き
など。
あとで戦う時、強い味方になります。
まとめ
今回は、ビビらされて払ってしまったお布施を返してくれ!と言えるケースについて解説しました。
まとめると、ザックリ以下のケースであれば返還を請求できます。
× ことさらに不安や恐怖心を抱かせる
× それらをことさらに助長させる
× 自由な意思決定をできないようにする
× 資産状況から見てドダイ無理な献金を求める
戦うには証拠が命なので、「ちょっとおかしいかも…」という方は、証拠を残しておくようにしましょう。
今回は以上です。
では、また次の記事でお会いしましょう!
取材・文/林 孝匡(弁護士)
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