年末調整では、4枚の申告書に各控除を受けるための必要事項を記載し、支払い金額を裏付ける証明書を添付して提出します。年末調整の対象となる14種類の控除に関して、控除の内容・控除額・添付書類などについて確認しましょう。
目次
「扶養控除等(異動)申告書」に記載する控除
「扶養控除等(異動)申告書」には、「配偶者控除」「扶養控除」「障害者控除」「勤労学生控除」「ひとり親控除」「寡婦控除」の控除について記載します。主な控除の内容を把握しましょう。
扶養控除
「扶養控除」は、納税者と生計を一にしている、配偶者以外の16歳以上の親族を扶養する場合に受けられる控除です。子どもがいても16歳未満であれば、扶養控除の対象にはなりません。また、控除の対象となるのは、合計所得が48万円以下の人のみです。
対象者は「一般の控除対象扶養親族」「特定扶養親族」「老人扶養親族」「同居老親等」に分類されます。特定扶養親族とは、年齢19歳以上23歳未満の控除対象扶養親族を指します。老人扶養親族の対象となるのは、年齢が70歳以上の人です。
障害者控除・勤労学生控除
「障害者控除」は、年末調整を行う本人・配偶者・扶養親族などが障害者の場合に受けられる控除です。障害の程度や内容によって、三つに区分されます。区分名とそれぞれの控除額は以下の通りです。
- 障害者:27万円
- 特別障害者:40万円
- 同居特別障害者:75万円
所定の条件を満たす働く学生を対象にした控除が、「勤労学生控除」です。大学・高等専門学校・専修学校などに通い、年間の合計所得金額が75万円以下の人が対象となります。
ひとり親控除・寡婦控除
所定の条件を満たすシングルファーザー・シングルマザーが対象となるのが、2020年の税制改正で新たに設立された「ひとり親控除」です。総所得金額48万円以下の子どもと生計を一にしている独身者(男女問わず)が対象となり、35万円の所得控除を受けられます。また「ひとり親控除」となるのは、合計所得金額が500万円以下の人のみです。
結婚歴があり離婚・死別後再婚しておらず、所定の条件を満たす女性が対象となるのが「寡婦控除」です。「ひとり親控除」と「寡婦控除」は同時に利用できず、「ひとり親控除」の要件に該当する女性には「ひとり親控除」が適用されます。
「基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」に記載する控除
「基礎控除」「所得金額調整控除」「配偶者控除」「配偶者特別控除」の4種類の控除に関係する情報は、1枚の書類に記載します。それぞれの控除について、内容や控除額などを確認しましょう。
基礎控除
「基礎控除」は、人々が最低限の生活を送るために必要な金額には税金を課さないという考えに基づき、設定されています。合計所得金額が2,500万円以下の場合に受けられる控除です
所得金額に応じて、基礎控除額は以下のように三つに区分されます。
- 所得金額2,400万円以下の場合:48万円
- 所得金額2,400万円超2,450万円以下の場合:32万円
- 所得金額2,450万円超2,500万円以下の場合:16万円
所得金額調整控除
「所得金額調整控除」は、給与収入が850万円を超える人が特定の条件を満たした場合に受けられます。所得金額調整控除額は最大15万円です。
給与収入額以外の条件としては、年末調整を行う本人が特別障害者に該当する場合、生計を一にする特別障害者の配偶者を扶養する場合、特別障害者である親族を扶養する場合などがあります。対象となる給与収入額が高いことに加え、扶養する人が特別障害者であるなど、実際には該当する人が限られる控除です。
配偶者控除・配偶者特別控除
年末調整を行う人の合計所得金額が1,000万円以下で、生計を一にする配偶者がいる場合には、「配偶者控除」または「配偶者特別控除」のどちらか一方を受けられる可能性があります。両者を分けるのは、控除対象となる配偶者の収入です。
配偶者の合計所得金額が48万円以下であれば「配偶者控除」が受けられます。年末調整を行う本人の合計所得金額に応じて、控除額は38万円・26万円・13万円の三つに区分されます。
配偶者の合計所得金額が48万~133万円の場合には、「配偶者特別控除」の対象です。年末調整を行う本人・配偶者の合計所得金額に応じて、控除額は1万~38万円に分かれます。
「保険料控除申告書」に記載する控除
「保険料控除申告書」には、「社会保険料控除」「小規模企業共済等掛金控除」「生命保険料控除」「地震保険料控除」の内容を記載します。各控除の概略と申告時の添付書類について押さえましょう。
社会保険料控除
「社会保険料控除」の対象は、「国民年金」「厚生年金保険」「国民健康保険」などの社会保険料の支払い金額です。ただし、月々の給与から控除されている社会保険料については、年末調整時に改めて申告する必要はありません。
支払った人が加入者である必要はなく、年末調整を行う本人が支払ったのであれば、扶養している家族が加入する社会保険料も控除の対象となります。例えば、子どもの国民年金を年末調整する人が代わりに支払った場合も、「社会保険料控除」の対象です。
小規模企業共済等掛金控除
「小規模企業共済等掛金控除」の中でサラリーマンが主に関係するのは、「個人型確定拠出年金(iDeCo)」の掛金です。自分で決めた金額を月々積み立てた1年分の金額が、「小規模企業共済等掛金控除」の対象とされます。
iDeCoに加入すると、毎年10月下旬ごろに「小規模企業共済等掛金払込証明書」が郵送されてきます。ここに記載された金額が控除の対象です。年末調整時には申告書に所定の内容を記載し、「小規模企業共済等掛金払込証明書」を添付して提出します。
生命保険料控除
支払った生命保険料に応じて、一定の金額が控除されるのが「生命保険料控除」です。
生命保険料控除制度には新制度と旧制度の2種類があります。新制度は2012年1月1日以降に結んだ契約が対象で、それ以前に結んだ契約は旧制度の対象です。それぞれの制度で申告書への記載内容が異なるので、自分の契約がどちらに該当するか注意しましょう。
年末調整時には、申告書と一緒に毎年10月下旬ごろに保険会社などから送付される「生命保険料控除証明書」を添付して、会社に提出します。
地震保険料控除
支払った地震保険料に応じて、一定の金額が控除されるのが「地震保険料控除」です。1年間に支払った地震保険料の合計金額が5万円以下の場合は、支払った全額がそのまま控除額となります。支払った地震保険料の合計が5万円を超える場合には、一律5万円が控除額です。
年末調整時には、地震保険に加入している保険会社から送付される「地震保険料控除証明書」を、申告書と一緒に提出します。
「住宅借入金等特別控除申告書」に記載する控除
「住宅借入金等特別控除申告書」に記載する「住宅借入金等特別控除」を受けるためには、1年目と2年目以降で手続きが異なります。それぞれの手続き方法について確認しましょう。
住宅借入金等特別控除
所定の条件を満たした上で、住宅ローンを利用して住宅を購入した際に受けられるのが「住宅借入金等特別控除(通称:住宅ローン控除)」です。新築住宅だけでなく中古住宅の購入やリフォームも、控除の対象となります。
「住宅借入金等特別控除」を受けるために、1年目は土地建物の登記簿謄本・住宅ローンの借入残高証明書などの書類を準備した上で、確定申告が必要です。2年目以降は、住宅ローンの年末残高等証明書を添付して、年末調整で手続きできます。
構成/編集部